RETURNS-1 『RETURNS』(以下『リターンズ〜リユニオン・ライヴ』)を聴いて,チック・コリアにこう問い尋ねたくなった。
 チック・コリアよ,リターン・トゥ・フォーエヴァーで,何かやり残したことがあったのかと?

 『リターンズ〜リユニオン・ライヴ』は「第2期」リターン・トゥ・フォーエヴァーの『リユニオン・ライヴ』。
 ピアノキーボードチック・コリアベーススタンリー・クラークドラムレニー・ホワイトギターアル・ディメオラという,それぞれの楽器の“マエストロ”となった4人が“ギンギンに”懐かしの人気曲を演奏している。
 これは真に素晴らしい演奏である。メンバー全員がバンドの一員に戻って“ザ・リターン・トゥ・フォーエヴァー”を演じきっているのが最高に凄いと思う。

 ただし,リターン・トゥ・フォーエヴァーの再結成に,管理人は4年前のエレクトリック・バンドの再結成作『TO THE STARS』の,正確には『TO THE STARS TOUR EDITION』の“衝撃”を期待していた。

 『リターンズ〜リユニオン・ライヴ』に『TO THE STARS』のような新曲がないことは分かっていた。そうではない。管理人が言いたいのは,同じ条件での再演となる,全曲過去のカヴァースタジオライブTO THE STARS TOUR EDITION』のような興奮が全くなかった。この「落差」にショックを受けた。
 だ・か・ら・問いたい。チック・コリアよ,リターン・トゥ・フォーエヴァーで,何かやり残したことがあったのかと?

 『リターンズ〜リユニオン・ライヴ』は,楽しい同窓会ライブ,で良かったのかもしれない。時系列よろしく,エレクトリック・バンドリユニオンの前にリターン・トゥ・フォーエヴァーリユニオンがあったのなら何の問題もなかったことと思う。
 でもでも,リターン・トゥ・フォーエヴァーで「やりたいことは全てやった」と公言したチック・コリアが,リターン・トゥ・フォーエヴァー“再結成の封印を解いてみせた”のだから,単なる同窓会ライブで終わらせるはずはなかろうと,否が応でも期待してしまうのが「ファン心理」のサガである。

 ズバリ『リターンズ〜リユニオン・ライヴ』の聴き所は「バンド・サウンドとソロの融合」である。
 『リターンズ〜リユニオン・ライヴ』から流れ出す,凄まじいハイ・テクニック,分厚いアンサンブル,歌心溢れるアドリブ,めくるめくインタープレイの最中に,それぞれの楽器の“マエストロ”となった4人がソロとなって「1人リターン・トゥ・フォーエヴァー」を披露している。

 「第3期」リターン・トゥ・フォーエヴァーの解散後に「第2期」の4人が揃うのは,アルバム『TOUCHSTONE』における【COMPADRES】と,1983年の「リユニオン・ライヴ」以来となるのだが,この25年の間に,チック・コリアスタンリー・クラークレニー・ホワイトアル・ディメオラの4人のメンバーが一同に会さなくとも,自分1人だけで“ザ・リターン・トゥ・フォーエヴァー”を表現できるまでの“マエストロ”へと成熟している。スーパースター!

RETURNS-2 しか〜し,言わば「1人リターン・トゥ・フォーエヴァー」がこの世に4人もいるのだから,新しい音楽の創造のために再結成したのでないとすれば『リターンズ〜リユニオン・ライヴ』など,やる必要もなかったのだとここに断言する。
 “栄光の”リターン・トゥ・フォーエヴァーは「第3期」のまま終了するべきだったとここに断罪する。同志の皆さん,ごめんなさい。

 …こうは書いてみたものの,リターン・トゥ・フォーエヴァーの再結成ライブ,やっぱり見に行っちゃったんですよね〜。
 2008年の「リユニオン・ライヴ」には「JAPAN TOUR」は含まれていなかったが,ギターアル・ディメオラフランク・ギャンバレへとメンバー・チェンジし,ヴァイオリンジャン・リュック・ポンティがフロントを務めた「第4期」リターン・トゥ・フォーエヴァーの「JAPAN TOUR 2011」には参戦済み。

 珠玉の名曲,一体感のある演奏,たっぷりとフィーチャーされた5人のソロに大満足! 「第4期」リターン・トゥ・フォーエヴァーでの『リターンズ〜リユニオン・ライヴ』はやる価値大だったと思っています! えこひいき〜!

  DISC ONE
  01. Opening Prayer
  02. Hymn of the Seventh Galaxy
  03. Vulcan Worlds
  04. Sorceress
  05. Song to the Pharoah Kings
  06. Al's Solo, including:
     Children's Song #3 - Duet with Chick Corea
     Passion, Grace & Fire
     Mediterranean Sundance
     Cafe 1930
     Spain - Duet with Chick Corea
  07. No Mystery

  DISC TWO
  01. Friendship - Chick's Solo, including:
     Solar
  02. Romantic Warrior
  03. El Bayo de Negro - Stanley's Solo
  04. Lineage - Lenny's Solo
  05. Romantic Warrior (continued)
  06. Duel of the Jester and the Tyrant
  07. 500 Miles High
  08. Romantic Warrior

(ビデオアーツ/VIDEOARTS 2008年発売/VACM-1368/69)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ラス・デイビス)

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