FIVE TRIOS-1 チック・コリアによる,4人のベーシストと5人のドラマーによる異なる5組のピアノ・トリオ+1枚から成る「6枚組BOXセット」が『FIVE TRIOS』(以下『ファイヴ・トリオBOX』)。

 とは言え,その真実の中身とは,既発の4枚『DR.JOE』(以下『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』)+『FROM MILES』(以下『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』)+『CHILLIN’ IN CHELAN』(以下『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』)+『THE BOSTON THREE PARTY』(以下『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』)+「6枚組BOXセット」でしか聴くことのできない未発表の2枚となっている。

 つまり,事実上,チック・コリアのフォロワーにとって『ファイヴ・トリオBOX』を購入する意義とは,5枚目の『BROOKLYN,PARIS TO CLEARWATER』(以下『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』)と6枚目の『FIVE TRIOS ADDITIONAL TRACKS』(以下『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』)の2枚目当て!

 管理人の結論。『ファイヴ・トリオBOX批評

 未発表の2枚のためだけでも『ファイヴ・トリオBOX』は買う価値がある。仮に既発の4枚のうち,まだコレクションできていないCDが1枚でもあるのなら,なおのことである。
 『ファイヴ・トリオBOX』の6枚は,その1枚ずつが五つ星の大名盤。そんな6枚が「BOXセット」になったのだから星10個を進呈したい。“天才”チック・コリアの「大量名盤群」の頂点を成すのが「6枚組BOXセット」なのである。

 そう。『ファイヴ・トリオBOX』こそ,チック・コリアのフォロワーたちにとって「音楽生活40周年を過ぎて」ついに登場した“究極のマスト・アイテム”である。定価¥12000なんて安い&安い〜。仮に¥20000でも安い&安い〜。

FIVE TRIOS-2 管理人が『ファイヴ・トリオBOX』を聴いて,まず思ったのは,このリズム・セクションの組み合わせはこれしかないだろう!という内容だということ。

 異なる5人のベーシストと5人のドラマーの組み合わせは何パターンもあるのだが『ファイヴ・トリオBOX』を聴いて,例えば1枚目の『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』のジョン・パティトゥッチベースに合うのは,ジャック・デジョネットでもジェフ・バラードでもアイアート・モレイラでもリッチー・バーシェイでもなくてアントニオ・サンチェスドラムしかない! この5組の最高の組み合わせを選んだチック・コリアが凄すぎる〜!

 この記事は『ファイヴ・トリオBOX批評であって,単発4枚の個別レヴューではないので,1枚1枚への言及は来たる「トラック批評」に任せることとする。

 以下に『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』の各々についてのプチ・レヴューを記すこととする。

DR. JOE-1 『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』のピアノ・トリオは,ピアノキーボードチック・コリアエレクトリックベースアコースティックベースジョン・パティトゥッチドラムアントニオ・サンチェス

 チック・コリアピアノの魅力は,朗々と歌って聴かせるというより,詩のようにリズムで聴かせる“メロディック・リリシズム”。基調となるメロディー・ラインを瞬時に解釈し,共演者とのインプロビゼーションを展開する中で,新たな曲想を加えていく。
 チック・コリアジャズ・ピアノの深さと豊穣さが『ファイヴ・トリオBOX』の中に色濃く表現されている。

 ジョン・パティトゥッチベースアントニオ・サンチェスドラムによる“タイトでファンタジックな”リズムにチック・コリアが乗りまくっている。

DR. JOE-2 『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』の聴き所はアントニオ・サンチェスドラムであろう。
 アントニオ・サンチェスドラムは“御存じ”パット・メセニー絡みで耳馴染みのドラムなのだが,いや〜,どうしてどうして,パット・メセニーとの共演のイメージからはかなり離れたドラミングであって,ジャズ寄りというか,正確にはチック・コリア寄りのスーパー・ドラミング

 『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』は,モード奏法と変則的な間が特徴のジョー・ヘンダーソンへのトリビュート。ゆえにビートというよりはクリエイトされたリズムが伴わなければ,あのジョー・ヘンダーソンの雰囲気を醸し出すのは難しいのだが,アントニオ・サンチェスドラミングは,決して単調にならずそれでいて奇をてらわない,リム・ショットを含めジャズらしいスポンティニアスに抑揚の効いた“正統派の”スーパー・ドラミング

FROM MILES-1 『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』のピアノ・トリオは,ピアノチック・コリアアコースティックベースエディ・ゴメスドラムジャック・デジョネット

 チック・コリアピアノの魅力は,朗々と歌って聴かせるというより,詩のようにリズムで聴かせる“メロディック・リリシズム”。基調となるメロディー・ラインを瞬時に解釈し,共演者とのインプロビゼーションを展開する中で,新たな曲想を加えていく。
 チック・コリアジャズ・ピアノの深さと豊穣さが『ファイヴ・トリオBOX』の中に色濃く表現されている。

 エディ・ゴメスベースジャック・デジョネットドラムによる“縦横無尽に暴れまくる猛獣の野太い”リズムにチック・コリアが乗りまくっている。

FROM MILES-2 『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』の聴き所はジャック・デジョネットドラムであろう。
 ジャック・デジョネットドラムは“御存じ”キース・ジャレット絡みで耳馴染みのドラムなのだが,いや〜,どうしてどうして,キース・ジャレットとの共演のイメージからはかなり離れたドラミングであって,自由奔放に弾きまくるチック・コリアピアノを支え,活かすようなスーパー・ドラミング

 『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』は,世界中のジャズメンから演奏され尽くしてきたマイルス・デイヴィスへのトリビュート
 5曲全てを「原曲をここまで崩しまくるか!」というくらいに,攻撃的に崩しまくっているのだが,よく聴くと原曲のモチーフをしっかりと押さえた“粋で鯔背な”フリージャズ。最高である。

CHILLIN' IN CHELAN-1 『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』のピアノ・トリオは,ピアノチック・コリアアコースティックベースクリスチャン・マクブライドドラムジェフ・バラード

 チック・コリアピアノの魅力は,朗々と歌って聴かせるというより,詩のようにリズムで聴かせる“メロディック・リリシズム”。基調となるメロディー・ラインを瞬時に解釈し,共演者とのインプロビゼーションを展開する中で,新たな曲想を加えていく。
 チック・コリアジャズ・ピアノの深さと豊穣さが『ファイヴ・トリオBOX』の中に色濃く表現されている。

 クリスチャン・マクブライドベースジェフ・バラードドラムによる“カチッとハマッタJAZZYな”リズムにチック・コリアが乗りまくっている。

CHILLIN' IN CHELAN-2 『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』の聴き所はクリスチャン・マクブライドベースであろう。
 ピアノチック・コリアドラムジェフ・バラードが組んだ「チック・コリア・ニュー・トリオ」のベーシストからアヴィシャイ・コーエンの代わりに組んだクリスチャン・マクブライドベースの存在感!

 チック・コリア絡みのクリスチャン・マクブライド名演と来れば『SUPER TRIO』での“スーパー・ベース”にKOされたのだったが『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』のベースはそれ以上!

 クリスチャン・マクブライドが,スタンリー・クラークジョン・パティトゥッチアヴィシャイ・コーエンと肩を並べたのが『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』であった。

THE BOSTON THREE PARTY-1 『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』のピアノ・トリオは,ピアノキーボードチック・コリアアコースティックベースエディ・ゴメスドラムアイアート・モレイラ

 チック・コリアピアノの魅力は,朗々と歌って聴かせるというより,詩のようにリズムで聴かせる“メロディック・リリシズム”。基調となるメロディー・ラインを瞬時に解釈し,共演者とのインプロビゼーションを展開する中で,新たな曲想を加えていく。
 チック・コリアジャズ・ピアノの深さと豊穣さが『ファイヴ・トリオBOX』の中に色濃く表現されている。

 エディ・ゴメスベースアイアート・モレイラドラムによる“ゴリゴリのジャズ・サンバの”リズムにチック・コリアが乗りまくっている。

THE BOSTON THREE PARTY-2 『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』の聴き所はアイアート・モレイラドラムであろう。
 アイアート・モレイラの“浮遊する”ドラムが鳴れば,ブラジリアンの不思議な空気が場を支配する。初期リターン・トゥ・フォーエヴァーのレパートリーやアントニオ・カルロス・ジョビンのレパートリーにはズバリであるが,なぜだか最高なのが【WALTZ FOR DEBBY】である。

 とにもかくにも,アイアート・モレイラの変幻自在なドラミングが「チック・コリアの中のビル・エヴァンス」を,表と裏に廻ってバランス良く引き出している。実に素晴らしい。何だか,この手の演奏を聴いていると胸の中が熱くなって決まって郷愁に誘われる。こんなライブが好きなんだよなぁ。

BROOKLYN, PARIS TO CLEARWATER-1 『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』のピアノ・トリオは,ピアノチック・コリアエレクトリックベースアドリアン・フェロードラムリッチー・バーシェイ

 チック・コリアピアノの魅力は,朗々と歌って聴かせるというより,詩のようにリズムで聴かせる“メロディック・リリシズム”。基調となるメロディー・ラインを瞬時に解釈し,共演者とのインプロビゼーションを展開する中で,新たな曲想を加えていく。
 チック・コリアジャズ・ピアノの深さと豊穣さが『ファイヴ・トリオBOX』の中に色濃く表現されている。

 アドリアン・フェローベースリッチー・バーシェイドラムによる“一瞬先は闇の如く,一体何が出て来るか分からない新感覚の”リズムにチック・コリアが乗りまくっている。

BROOKLYN, PARIS TO CLEARWATER-2 『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』の聴き所は“無名のニュースター”の2人である。
 アドリアン・フェローベースリッチー・バーシェイドラムには,それぞれジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックルデビュー時を想起させるものがある。

 アドリアン・フェローリッチー・バーシェイと組んだチック・コリアのサウンドが激変している。これはいつかは「チック・コリア・エレクトリック・バンド掘廚侶訐に動くのか?
 チック・コリアの“音の実験熱”が再び湧き上がってきたかのような,エレクトリック・サイドからの様々なアプローチがチック・コリア・マニアとしては非常に興味深い演奏が続いている。

 個人的には,既に名前の売れたメンバーと録音した4枚以上に“無名のニュースター”2人との『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』を単体で優先リリースしてほしかった!

FIVE TRIOS ADDITIONAL TRACKS-1 『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』のピアノ・トリオは『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐセッションからの2トラック+『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』からの1トラック+『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』からの3トラック。

 決して「お蔵の残り物」などでも「本テイクに選ばれなかった別テイク集」などでもなく,単純に収録時間の関係で漏れただけの「名演集」である。
 ユニバーサルさんへお尋ねします。まだまだ「お蔵の残り物」が隠されている? まだまだ「本テイクに選ばれなかった別テイク集」が隠されている?

 ユニバーサルさんへお願いです。『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』の隠された『特典盤』の商品化を〜! 『ファイヴ・トリオBOX』の「6枚組BOXセット」だけでは,まだまだチック・コリアが足りませ〜ん!

FIVE TRIOS ADDITIONAL TRACKS-2 『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』の聴き所は,最後の最後に登場する【SPAIN】の2トラックであろう。

 『ファイヴ・トリオBOX』の5枚合計48トラックの中で【SPAIN】が収録されているのは『ファイヴ・トリオBOX 特典盤』ONLY。

 中には「正直【SPAIN】はもうたくさん」と思っているチック・コリア・マニアがいるかもしれないが,その認識は甘いのでは?
 そう。【SPAIN】が流れ始めた瞬間に,無意識の内に「ガッツポーズをしてしまっている」自分に気付き【SPAIN】をまだまだ欲している自分に気付くものなのです!

  CD 1 <Dr. JOE
  01. Illusion
  02. Doctor Joe
  03. Mystic River
  04. Zig Zag
  05. Blues For Dail
  06. Crepuscule With Nellie
  07. 1% Manteca
  08. Promise
  09. M.M.
  10. Fourteen

  CD 2 <From Miles
  01. Solar
  02. So Near So Far
  03. Milestones
  04. But Beautiful
  05. Walkin'

  CD 3 <Chillin' in Chelan
  01. Summer Night
  02. Think of One
  03. Sophisticated Lady
  04. Windows
  05. Monk's Mood
  06. Fingerprints
  07. Dusk in Sandi
  08. Walkin'
  09. Drums

  CD 4 <The Boston Three Party
  01. With a Song in My Heart
  02. 500 Miles High
  03. Waltz for Debby
  04. Desafinado (Intro)
  05. Desafinado
  06. Sweet and Lovely
  07. Sometime Ago−La Fiesta (Intro)
  08. Sometime Ago−La Fiesta (Part 1)
  09. Sometime Ago−La Fiesta (Part 2)

  CD 5 <Brooklyn, Paris to Clearwater
  01. Final Frontier
  02. Aftertouch
  03. Island Tune
  04. Dr. Jackle
  05. Creedmore's Unexpected Visitor
  06. Dedication
  07. Marimba Drum Song
  08. Con Aqua
  09. 3:30am Raga

  CD 6 <Additional Tracks
  01. Gloria's Step
  02. You're Everything
  03. 50% Manteca
  04. Bud Powell
  05. Spain in the Main
  06. Spain Drumdendum

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2007年発売/UCCJ-9089/94)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)
(CD6枚組)

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