EXPRESSIONS-1 『EXPRESSION』(以下『星影のステラ』)は「チック・コリア・エレクトリック・バンド」と「チック・コリア・アコースティック・バンド」をインテグレートした「チック・コリア・エレクトリック・バンド」を解散して“裸一貫”で取り組んだ,チック・コリアソロ・ピアノである。

 事実,チック・コリアが「エレクトリック・バンド」以降,再びキーボードを手にするのは『TO THE STARS』での「エレクトリック・バンド」の再結成において。
 その間の10年間は(アルバム制作においては)生ピアノ一台での勝負に徹したわけで,その意味でも『星影のステラ』は,チック・コリアほどのビッグネームといえども,今後の運命を左右する重要作と成り得る。相当な覚悟でソロ・ピアノに取り組んだことが容易に理解し得よう。

 さて,管理人が「自作自演で自己完結」するソロ・ピアノに求めるのは,ジャズメンの個性,ただそれだけである。
 その意味で“運命の大勝負”盤『星影のステラ』に期待したのは,チック・コリアジャズメンとしての資質だけである。
 チック・コリアだけが弾くことのできる,HAPPYで楽しげで軽やか,明るくキュートでスパニッシュで,それでいて斬新で真面目で端正で,変幻自在で予想不可能なソロ・ピアノ…。

 しか〜し『星影のステラ』から聴こえてきたのは,どこかで以前に聞いたかのような,あの喫茶店のBGMで流れているかのような“普通の”ジャズ・ピアノ…。
 管理人の知っている「超・個性派」チック・コリアジャズ・ピアノではなかったのだ。

 『星影のステラ』に「THIS IS CHICK COREA」を感じたかった。今か今と期待して最後まで聴き続けたが“お目当てのチック・コリア”はついに現われじまい。
 「えっ,チック・コリアソロ・ピアノってこんな感じ?」。(管理人はECM盤『PIANO IMPROVISATIONS VOL.1』『PIANO IMPROVISATIONS VOL.2』は未聴なものでして)。

 もしや,ずらりと並んだジャズスタンダードを前にしてヒネリを加えるべきと考えたのか? “手垢にまみれた”ムーディーでロマンティックな演奏を意識的に控えた結果,曲本来の“旨味”さえ消してしまったかのような“ドライでクラシカル”な演奏に終始している。

 『星影のステラ』で目指したのは,感情の起伏のない「クールジャズ」? 決定的にダメなのが【STELLA BY STARLIGHT】での大サビを避けた演奏。ガックシ。残念。無念。肩透かし。

EXPRESSIONS-2 管理人の結論。『星影のステラ批評

 『星影のステラ』は“ジャズっぽいクラシック”にカテゴライズされるべきソロ・ピアノジャズの有名スタンダードを,ジャズの文脈ではなくクラシックの文脈から真面目にアレンジした「書き譜」演奏集である。

 ソロ・ピアノの“土俵”でキース・ジャレットに差をつけられるは,キーボードを捨てての“運命の大勝負”に負けてしまうわ…。
 駄盤の少ないチック・コリアにしては珍しい「即お蔵」な1枚…。

  01. Lush Life
  02. This Nearly Was Mine
  03. It Could Happen to You
  04. My Ship
  05. I Didn't Know What Time It Was
  06. Monk's Mood
  07. Oblivion
  08. Pannonica
  09. Someone to Watch Over Me
  10. Armando's Rhumba
  11. Blues For Art
  12. Stella by Starlight
  13. Anna
  14. I Want to Be Happy
  15. Smile

(GRP/GRP 1994年発売/MVCR-181)
(ライナーノーツ/チック・コリア,油井正一)

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