PAINT THE WORLD-1 自分の頭の中で鳴る音楽を,自分の手となり足とり,想像以上の形に変えてくれる。チック・コリア“自慢の”「チック・コリア・エレクトリック・バンド」。

 『BENEATH THE MASK』の“完成されたバンド・サウンド”にチック・コリア自身も満足していたことと思う。
 幾ら大金を積まれたとしても,ベースジョン・パティトゥッチドラムデイブ・ウェックルサックスエリック・マリエンサルギターフランク・ギャンバレのうち,たった1人でさえ手放すことなど考えもしなかったことであろう。

 しかし,そんな「エレクトリック・バンド」が“最高傑作”『BENEATH THE MASK』を置き土産に解散した。
 『BENEATH THE MASK』で“燃え尽きてしまった”わけではない。事の本質とは,解散ではなく“卒業”なのだ。

 メンバー全員が「エレクトリック・バンド」の活動を通じて「BIG」になってしまった。ジョン・パティトゥッチを皮切りにメンバー全員がソロ活動の注力し始めた。もはや「エレクトリック・バンド」の活動に縛ることができなくなったがゆえの“卒業”なのだった。

 幸い,サックスエリック・マリエンサルは留年。ジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックルフランク・ギャンバレの卒業を認めたとなれば,チック・コリアの次なるお仕事は「新人発掘」。
 チック・コリアが「発掘」したのは,ベースジミー・アールドラムゲイリー・ノヴァックギターマイク・ミラーの腕達者。

 そうして名付けられた新バンド名は,なんとも!「チック・コリア・エレクトリック・バンド」!?
 そんでもってコンセプトまで新しくなって「チック・コリア・エレクトリック・バンド」+「チック・コリア・アコースティック・バンド」=「チック・コリア・エレクトリック・バンド」!?

 しかし,すでに「エレクトリック・バンド」と「アコースティック・バンド」は,例えば『INSIDE OUT』での“エレクトリックジャズ”と『ALIVE』での“アコースティックフュージョン”とで,すでに2つのバンドは融合していたようなものだったから…。あちゃちゃ〜。

 そんな,上記,紆余曲折を得て“フライング気味”に活動を開始した「チック・コリア・エレクトリック・バンド」だから『PAINT THE WORLD』(以下『ペイント・ザ・ワールド』)ただ一作を残してあっさりと解散してしまう。チック・コリアの「黒歴史」の一つであろう。

PAINT THE WORLD-2 しか〜し『ペイント・ザ・ワールド』に関する管理人の評価は五つ星! …と言うか,この状況こそが“ひらめきで生きる男”チック・コリアの真骨頂! 『ペイント・ザ・ワールド』における“打ち上げ花火”に見事にハマッタ口であった。

 “カッチリ系”だった「エレクトリック・バンド」から“しなやかな系”の「エレクトリック・バンド」への変化が気に入った。
 ジミー・アールゲイリー・ノヴァックが生み出すリズムはソリッドであるが,それ以上に「余地としての空間」がある。ライブ感に溢れ,ある意味レイドバックしていた。

 それでいてフロントが切れていた。エリック・マリエンサルの激しいブロー。マイク・ミラーのディープなカッティング。そして何よりもチック・コリアキーボードがいかにも即興的に挟み込む効果的なサウンドによって「エレクトリック・バンド」のアンサンブルがドラマティックな動きを示す。軽やかで奥深いインタープレイが最高である。

 ズバリ『ペイント・ザ・ワールド』は,バンドの成り立ちといい音楽性といい「第3期」リターン・トゥ・フォーエヴァーの『ミュージックマジック』との類似点が多い。“短命”に終わったのはなんとも!チック・コリアらしい。
 でも,そうであれば「エレクトリック・バンド」の『ザ・コンプリート・コンサート』も聴いてみたいよなぁ。

  01. PAINT THE WORLD
  02. BLUE MILES
  03. TONE POEM
  04. CTA
  05. SILHOUETTE
  06. SPACE
  07. THE ANT & THE ELEPHANT
  08. TUMBA ISLAND
  09. RITUAL
  10. ISHED
  11. SPANISH SKETCH
  12. FINAL FRONTIER
  13. REPRISE

(GRP/GRP 1993年発売/MVCR-148)
(ライナーノーツ/チック・コリア,青木和富)

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