NOW HE SINGS, NOW HE SOBS-1 『RETURN TO FOREVER』で「フュージョンの扉」を抉じ開けたことで名高いチック・コリア
 しかしこちらは『RETURN TO FOREVER』程,名が通ってはいないが,その衝撃たるもの『RETURN TO FOREVER』を超えている。

 そう。チック・コリアは『RETURN TO FOREVER』のわずか4年前に『NOW HE SINGS,NOW HE SOBS』(以下『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』)で「ジャズ・ピアノの新しい扉」を抉じ開けていたのだ。

 『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』の“斬新な”ジャズ・ピアノたるや,2014年の今の耳にも新しく響く,これぞモダン・ジャズ・ピアノの“革新性”!
 とても60年代の発想とは思えない“尖がった”ジャズ・ピアノが真に荒々しい。それでいて全編を支配する壮大なコンセプション。隙のない完璧な演奏にただただ圧倒されてしまう。

 チック・コリアが奏でる,乾いた無機質な現代音楽的要素のジャズ・ピアノ,は過去に前例がなかった。チック・コリアが「ジャズ・ピアノの新しい流れ」を作り出したのだ。

 ベースミロスラフ・ヴィトウスドラムロイ・ヘインズとの“研ぎ澄まされた会話”は,フリー・ジャズにも通ずる激しいタッチと無機質的なフレージングのアドリブ・ラインがメロディアスすぎる。モーダルでメカニカルなフレーズの洪水は,本当に鳥肌が立つほどに素晴らしい。

 『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』のタイトル通り,チック・コリアジャズ・ピアノが「歌い,鳴いている」。チック・コリアの個性であるエキゾチックな叙情性が“隠し味的”に繰り返し登場している。
 「やっぱり,チック・コリアだよなぁ」的な安心感が感じられるのも事実である。

NOW HE SINGS, NOW HE SOBS-2 管理人はチック・コリアの“天才”を認めつつも,チック・コリアの問題作が発売される度に,正直“冷めてしまう”瞬間が多々あるのだが,それでもチック・コリアから離れられないばかりか“一目置いてしまう”のは『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』の存在が大きい。
 チック・コリアが本気を出せばトンデモナイモノがいつでも作れるに違いない。多少の問題作にも耳を傾けざるを得ない。決して侮ってはならないのだ。

 ズバリ,超・名盤ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』こそ“ジャズ・ピアノの最高峰”の1枚である。
 『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス』の衝撃は『RETURN TO FOREVER』の衝撃を超えている。

PS 『RETURN TO FOREVER』繋がりで語ると【STEPS−WHAT WAS】が【SOMETIME AGO】の原型であろう。

  01. STEPS-WHAT WAS
  02. MATRIX
  03. NOW HE SINGS-NOW HE SOBS
  04. NOW HE BEATS THE DRUM-NOW HE STOPS
  05. THE LAW OF FALLING AND CATCHING UP

(ソリッドステート/SOLID STATE 1968年発売/TOCJ-5959)
(ライナーノーツ/土倉明,皸羶成)

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