MEGA db-1 『MEGA db』と来れば“ドラムンベース”が代名詞。当時流行していたドラムンベースを「生でやったらどうなるか」をコンセプトにしてサンプリングやシーケンサも大胆に使用したクラブ・サウンドが代名詞。

 しかし『MEGA db』を聴いて感じたのは“流行の最先端”というよりも,現実とかけ離れた“近未来サウンド”!
 “人力ドラムンベース”が売りだというのに,対極に位置する機械的な音で,言葉として表現するなら「デジタル・フュージョン」の印象を受けてしまう。
 櫻井哲夫の人力ベース神保彰の人力ドラムヒューマン・レベルを超えてしまった結果としての機械的な音。
 そう。叩きまくりで弾きまくりな「超高速・人間ドラムンベース」は打ち込み以上の「デジタル・フュージョン」なのだった。
 
 凄いぞ,ジンサク! これぞDIMENSIONでも成し得ていない近未来サウンドの完成形だ! でも,それだけ? 本当に,これだけ?
 『MEGA db』での“超絶技巧っぷり”はジンサク史上最強! 櫻井哲夫神保彰も,かなり激しく攻め立てている! でも,それだけ? 本当に,これだけ?

 『MEGA db』は悪くはないが,何回聴いても伝わってくるものがあまりなかった。「敢えて生楽器でドラムンベースをやってみました」以上のものが見つからない。
 …っていうかドラムンベースってこんなに上品な音楽じゃない。「チープな質感」がドラムンベースの良さのはずなのに…。もっと変態チックな演奏だったら良かったのに…。櫻井さんも神保さんも真面目すぎる人だからなぁ…。

 『MEGA db』を聴いて伝わるものがあるとすれば,前半が櫻井哲夫サイドで後半が神保彰サイド。メロディアスなドラムンベースの前半とリズミカルなドラムンベースの後半でアルバムが完全に二分されているアルバム作りの方向性。

MEGA db-2 前半の4曲は櫻井哲夫のサポートとしての神保彰の演奏であり,後半の4曲は神保彰のサポートとしての櫻井哲夫の演奏であり,従来のユニットとしてのジンサクの演奏は皆無。互いがジンサク名義で今やりたいことを相方に遠慮なくやった感有り有り。
 そう。ジンサクは『MEGA db』で「2度目の死」を迎えたのであった。

 『MEGA db』リリースの翌月,ジンサク名義での最後のライブ,その翌月には敢えてジンサク名義ではなく櫻井神保セッション名義でのライブを行ないユニットの解消を発表する。

 ジンサクとしての8年間のチャレンジは,特に桜ちゃんファンの管理人としては感慨深いものがありすぎで…。
 その点『MEGA db』のライナーノーツに寄せられた,河合美佳伊東たけし塩谷哲野呂一生本多俊之佐藤竹善沼澤尚角松敏生のコメントはいつ読んでも感激してしまいます。

  01. COSMIC ORB
  02. AZTEC
  03. KAOS
  04. FLASH BACK
  05. STRUTTIN
  06. GET FREAKY
  07. BLUSTER
  08. PARALLEL EGOES

(ファンハウス/FUN HOUSE 1997年発売/FHCF-2405)
(ライナーノーツ/河合美佳,伊東たけし,塩谷哲,野呂一生,本多俊之,佐藤竹善,沼澤尚,角松敏生)

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