MOVE-1 上原ひろみの『MOVE』を購入後の1年間,事あるごとに聴き通してきた。悔しいことに『MOVE批評がまとまらなかったからだ。

 『MOVE』は決して難解なアルバムではない。懐が深いのは『VOICE』の方である。『MOVE』はどちらかと言えば浅い。
 『MOVE』には上原ひろみのやりたいことが手で掬えるかのように浮かび上がって見えている。しかし,掬えそうでどうしても掬えない。

 金魚を掬うために投入した水を含んだ「ふ」のような感覚…。何だろう『MOVE』のこの独特の感覚…。
 ある日には芸術音楽の頂点でもあるかのようにスケール豊かに聴こえるのだけれども,次の日には煮詰まった過去の音楽のようにしか聴こえない…。予定調和でないのは分かるが,はみ出し具合が予定調和の範疇か否か…。

 大袈裟ではなく,今や世界広しと言えど,こんなにも“超カッコイイ”演奏が出来るのは「上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト フィーチャリング・アンソニー・ジャクソン & サイモン・フィリップス」だけだと思う。
 レベルがズバ抜けている。上原ひろみピアノアンソニー・ジャクソンベースサイモン・フィリップスドラム。個々のレベルを超越した「ザ・トリオ・プロジェクト」としての成熟である。
 上原ひろみ有する“カリスマ”のリーダーシップの全てが上手く行っている。3人の関係性が育っている。でも,しかし…。

 しかし,感動が持続しないのだ。『MOVE』を聴いている瞬間。それはもう感動の嵐。だけどふと日常に戻ると現実と『MOVE』がリンクしない。
 キース・ジャレットパット・メセニーが代表する管理人の“フェイバリットジャズフュージョンにそんなことはない。CDプレイヤーの再生ボタンを停止した後も「感動の音楽」が頭の中で鳴り続ける。音楽が現実とリンクする。

 『VOICE』はそんな愛聴盤だった。でも『MOVE』は違う。感動が鳴り続けないのだ。感動がブツ切りなのだ。
 だから『MOVE』に「リアリティ」を感じない。上原ひろみに「会いに行けるアイドル」を感じないのだ?

 なんてことを書いているのだろう。明日にはこれと真逆のことを書く可能性を秘めていることを承知しているはずなのに…。
 うん。もういいのだ。ここ数週間で評価が固定されてきた。『MOVE』は残念ながら星4つ。評価を徐々に落としてきた。スルメ盤になると希望して聴き込んできたが,結果『MOVE』は聴き始めて1週間後が一番良かったのかも…。

MOVE-2 管理人の結論。『MOVE批評

 『MOVE』に『TIME CONTROL』を感じた日は駄盤であり『MOVE』に『VOICE』を感じた日は最高傑作!

 個人的な1年間の統計によれば『MOVE』に『VOICE』を感じるかどうかは,キラー・チューンの【MOVE】【BRAND NEW DAY】【FANTASY】【MARGARITA!】ではなく【ENDEVOR】と【IN BETWEEN】のサビ部分。

 そう。「働く。人は生きるために働くのか,働くために生きるのか」「幻想と現実のはざまに揺れ,惑いながら,生きる」の術。

 読者の皆さんに1年間かけて導き出した感想を“象形文字”でお答えいたしました。上記“象形文字”でご納得いただけなければそれまでです。

  01. MOVE
  02. BRAND NEW DAY
  03. ENDEAVOR
  04. RAINMAKER
     SUITE ESCAPISM
  05. REALITY
  06. FANTASY
  07. IN BETWEEN
  08. MARGARITA!
  09. 11:49 PM

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