管理人にとってバド・パウエルの代表曲と来れば【クレオパトラの夢】で決まりである。しかし,これがモダン・ジャズの代表曲とか,ジャズ・ピアノの代表曲というお題に変われば【クレオパトラの夢】は外れる。
【クレオパトラの夢】はバド・パウエルの“命の音”に聴こえる。バド・パウエルに“人間”を感じるのだ。
ではモダン・ジャズの代表曲とか,ジャズ・ピアノの代表曲とは何だろうか? 異論反論オブジェクションが殺到する覚悟で選べば,バド・パウエルの【ウン・ポコ・ローコ】の3連発! 【ウン・ポコ・ローコ】の3連発を“かませば”大抵のジャズ・ファンは逃げてしまう。想像を絶した“衝撃”にジャズという音楽から距離を置こうと考えるかもしれない。
【ウン・ポコ・ローコ】と距離を置く。それも1つの選択だと思う。自分が好きでもない音楽を無理をしてまで聴き続ける必要などない。かくいう管理人もジャズ=【ウン・ポコ・ローコ】とは思っていないから大丈夫である。
でも,でも,でも…。【ウン・ポコ・ローコ】は,ジャズ・ファンなら「どうしても乗り越えなければならない壁」である。【ウン・ポコ・ローコ】を乗り越えなければ“激情系”ジャズを楽しむことなどできやしない。そして“激情系”ジャズを楽しめなければジャズの楽しみも半減してしまう。あぁ〜。
管理人が【ウン・ポコ・ローコ】をここまで持ち上げるのは【ウン・ポコ・ローコ】が“激情系”ジャズの大名演という理由に加えて【ウン・ポコ・ローコ】が3連発だからという理由になる。
1stテイク,2ndテイク,3rdテイクはどれも他とは異なっている。これら3テイクの微妙な違いを聴き分けるには時間と忍耐力が必要とされるが,この聴き比べこそが最高に楽しい。
バド・パウエルの“灰汁の強さ”がテイク毎に隆起する流れが読めるようになるとしめたもの。流れを掴めるようになるとバド・パウエルの「快感の絶頂」を共有できるようになる。そうなると“天才中の天才”の運指と身体が無意識のうちに反応し感じ始めるエクスタシー。
恐らく,このバド・パウエルと同期する快感を最初に味わったのはブルーノートの名プロデューサーにして熱烈ジャズ・マニアのアルフレッド・ライオンであろう。
アルフレッド・ライオンがジャズ界にもたらした功績の一つに「リハーサル」がある。アドリブ至上主義のジャズに,エネルギーと瞬発力だけではなく演奏のクオリティをも求めて「リハーサル」を持ち込んだ。
そのアルフレッド・ライオンが【ウン・ポコ・ローコ】を立て続けに冒頭3トラックも並べているのだから,3トラックの全てが聴くに値するエクスタシーを収めている証拠である。
さて,問題はここからである。管理人が【ウン・ポコ・ローコ】をモダン・ジャズの代表曲,あるいはジャズ・ピアノの代表曲に選ぶ理由はこうである。
【ウン・ポコ・ローコ】3テイクの聴き分けをマスターした後で【ウン・ポコ・ローコ】の3連発を改めて通して聴いていると,これまでとは全く異質の快感が押し寄せてくる。
3種類のエクスタシーが収められていた【ウン・ポコ・ローコ】の3連発が,単体を超え“【ウン・ポコ・ローコ】組曲”として迫ってくる。そう。3つで1つの【ウン・ポコ・ローコ】。
アルフレッド・ライオンが真のジャズ・ファンに伝えたかった【ウン・ポコ・ローコ】とは“【ウン・ポコ・ローコ】組曲”。【ウン・ポコ・ローコ】とはリズムやメロディの違いを楽しむものではなく,音楽全体の流れを楽しむものである。
長編のクラシックに無駄な1小節がないように【ウン・ポコ・ローコ】の3連発にも無駄なアドリブが1つもない。点と線がつながって初めて全体像が浮かび上がっている。
いや〜,バド・パウエルの名演も奇跡的だが,アルフレッド・ライオンの音楽全体を捉える耳も奇跡的。“【ウン・ポコ・ローコ】組曲”はバド・パウエルとアルフレッド・ライオンの“奇跡のコラボレーション”なのである。
あれっ,だあれ,ここまで読んでも【ウン・ポコ・ローコ】を繰り返し聴いても「ちっとも分からん」とため息ついている人は…。
でも大丈夫。【ウン・ポコ・ローコ】が楽しめなくても大丈夫。【ウン・ポコ・ローコ】3連発収録の『THE AMAZING BUD POWELL VOL.1』(以下『ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.1』)の楽しみは【ウン・ポコ・ローコ】3連発以外にもあ〜る。
トランペットのファッツ・ナバロがいるではないか! テナー・サックスのソニー・ロリンズがいるではないか!
『ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.1』は【ウン・ポコ・ローコ】3連発“激情系”だけではない“リラックス”ジャズの大名演をも同時収録!
管理人にとっての『ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.1』は“激情系”から“リラックス”へとシフト中で〜す。
01. UN POCO LOCO (1st take)
02. UN POCO LOCO (2nd take)
03. UN POCO LOCO
04. DANCE OF THE INFIDELS
05. 52ND ST. THEME
06. IT COULD HAPPEN TO YOU (alternate master)
07. A NIGHT IN TUNISIA (alternate master)
08. A NIGHT IN TUNISIA
09. WAIL
10. ORNITHOLOGY
11. BOUNCING WITH BUD
12. PARISIAN THOROUGHFARE
【クレオパトラの夢】はバド・パウエルの“命の音”に聴こえる。バド・パウエルに“人間”を感じるのだ。
ではモダン・ジャズの代表曲とか,ジャズ・ピアノの代表曲とは何だろうか? 異論反論オブジェクションが殺到する覚悟で選べば,バド・パウエルの【ウン・ポコ・ローコ】の3連発! 【ウン・ポコ・ローコ】の3連発を“かませば”大抵のジャズ・ファンは逃げてしまう。想像を絶した“衝撃”にジャズという音楽から距離を置こうと考えるかもしれない。
【ウン・ポコ・ローコ】と距離を置く。それも1つの選択だと思う。自分が好きでもない音楽を無理をしてまで聴き続ける必要などない。かくいう管理人もジャズ=【ウン・ポコ・ローコ】とは思っていないから大丈夫である。
でも,でも,でも…。【ウン・ポコ・ローコ】は,ジャズ・ファンなら「どうしても乗り越えなければならない壁」である。【ウン・ポコ・ローコ】を乗り越えなければ“激情系”ジャズを楽しむことなどできやしない。そして“激情系”ジャズを楽しめなければジャズの楽しみも半減してしまう。あぁ〜。
管理人が【ウン・ポコ・ローコ】をここまで持ち上げるのは【ウン・ポコ・ローコ】が“激情系”ジャズの大名演という理由に加えて【ウン・ポコ・ローコ】が3連発だからという理由になる。
1stテイク,2ndテイク,3rdテイクはどれも他とは異なっている。これら3テイクの微妙な違いを聴き分けるには時間と忍耐力が必要とされるが,この聴き比べこそが最高に楽しい。
バド・パウエルの“灰汁の強さ”がテイク毎に隆起する流れが読めるようになるとしめたもの。流れを掴めるようになるとバド・パウエルの「快感の絶頂」を共有できるようになる。そうなると“天才中の天才”の運指と身体が無意識のうちに反応し感じ始めるエクスタシー。
恐らく,このバド・パウエルと同期する快感を最初に味わったのはブルーノートの名プロデューサーにして熱烈ジャズ・マニアのアルフレッド・ライオンであろう。
アルフレッド・ライオンがジャズ界にもたらした功績の一つに「リハーサル」がある。アドリブ至上主義のジャズに,エネルギーと瞬発力だけではなく演奏のクオリティをも求めて「リハーサル」を持ち込んだ。
そのアルフレッド・ライオンが【ウン・ポコ・ローコ】を立て続けに冒頭3トラックも並べているのだから,3トラックの全てが聴くに値するエクスタシーを収めている証拠である。
さて,問題はここからである。管理人が【ウン・ポコ・ローコ】をモダン・ジャズの代表曲,あるいはジャズ・ピアノの代表曲に選ぶ理由はこうである。
【ウン・ポコ・ローコ】3テイクの聴き分けをマスターした後で【ウン・ポコ・ローコ】の3連発を改めて通して聴いていると,これまでとは全く異質の快感が押し寄せてくる。
3種類のエクスタシーが収められていた【ウン・ポコ・ローコ】の3連発が,単体を超え“【ウン・ポコ・ローコ】組曲”として迫ってくる。そう。3つで1つの【ウン・ポコ・ローコ】。
アルフレッド・ライオンが真のジャズ・ファンに伝えたかった【ウン・ポコ・ローコ】とは“【ウン・ポコ・ローコ】組曲”。【ウン・ポコ・ローコ】とはリズムやメロディの違いを楽しむものではなく,音楽全体の流れを楽しむものである。
長編のクラシックに無駄な1小節がないように【ウン・ポコ・ローコ】の3連発にも無駄なアドリブが1つもない。点と線がつながって初めて全体像が浮かび上がっている。
いや〜,バド・パウエルの名演も奇跡的だが,アルフレッド・ライオンの音楽全体を捉える耳も奇跡的。“【ウン・ポコ・ローコ】組曲”はバド・パウエルとアルフレッド・ライオンの“奇跡のコラボレーション”なのである。
あれっ,だあれ,ここまで読んでも【ウン・ポコ・ローコ】を繰り返し聴いても「ちっとも分からん」とため息ついている人は…。
でも大丈夫。【ウン・ポコ・ローコ】が楽しめなくても大丈夫。【ウン・ポコ・ローコ】3連発収録の『THE AMAZING BUD POWELL VOL.1』(以下『ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.1』)の楽しみは【ウン・ポコ・ローコ】3連発以外にもあ〜る。
トランペットのファッツ・ナバロがいるではないか! テナー・サックスのソニー・ロリンズがいるではないか!
『ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.1』は【ウン・ポコ・ローコ】3連発“激情系”だけではない“リラックス”ジャズの大名演をも同時収録!
管理人にとっての『ジ・アメイジング・バド・パウエル VOL.1』は“激情系”から“リラックス”へとシフト中で〜す。
01. UN POCO LOCO (1st take)
02. UN POCO LOCO (2nd take)
03. UN POCO LOCO
04. DANCE OF THE INFIDELS
05. 52ND ST. THEME
06. IT COULD HAPPEN TO YOU (alternate master)
07. A NIGHT IN TUNISIA (alternate master)
08. A NIGHT IN TUNISIA
09. WAIL
10. ORNITHOLOGY
11. BOUNCING WITH BUD
12. PARISIAN THOROUGHFARE
(ブルーノート/BLUE NOTE 1951年発売/TOCJ-6418)
(ライナーノーツ/岡崎正通)
(ライナーノーツ/岡崎正通)
コメント一覧 (4)
何と言いますか、ウンポコロコの場合は曲が曲だけに "隙間だらけ" で、パウエル自身のアドリヴが噴出する迄に絶妙なタイムラグが生じていて、そこでそのズレと旋律がdrumと合っているやらいないやらのアナーキーな感覚を生んでいる気がします。
要は失敗する一歩手前、ひょっとすると全て失敗?といった演奏から、その緊迫感が味わえるんですが、文章で何処まで伝わるかは謎ですね。
Liveに脚を運び、アンコールで難曲をリクエストして失敗するのを期待しつつ、その緊張感を楽しむ筋金入りJAZZオヤジの心境かも知れません。
やまChanさんには【ウン・ポコ・ローコ】で記事の大半を占めた気持ちが分かっていただけたものと思います。
【二人でお茶を】は笑顔で楽しめますが【ウン・ポコ・ローコ】は眉間にしわで楽しめますね。
ただしライオンと同様,この3連発にはストーリー性を感じます。テイク1があるからのテイク2であり,テイク2あってのテイク3。
やまChanさんが仰るように「失敗する一歩手前、ひょっとすると全て失敗?」なギリギリ感のラグタイムは「アンコールで難曲をリクエストして失敗するのを期待しつつ、その緊張感を楽しむ筋金入りJAZZオヤジの心境かも知れません」に同感です。
聴いた時は衝撃でした
リズムやメロディが、アドリブに追われ裸足で逃げ出す寸前!
でもやっとこさ、崖っぷちでテーマとしてとどまりアドリブに反撃みたいな
すいません、感覚的にしか言えません(汗)
【ウン・ポコ・ローコ】について明晰な分析力で語りたいのはやまやまですが,若い時ならまだしも,中年となった今では体力がついてきません。だから感覚的でしか書き散らせません。
「リズムやメロディが、アドリブに追われ裸足で逃げ出す寸前!」は名文ですね。
「でもやっとこさ、崖っぷちでテーマとしてとどまりアドリブに反撃」は至言ですね。
感覚的でしか語れない,とはご謙遜を〜。