ANYTHING GOES-1 ブラッド・メルドーが“超・天才”だからと言って,毎度毎度のアルバム毎に,その“超・天才”を必ず披露しなければならないわけではない。

 たまには「一介のジャズ・ピアニスト」に戻って,自分の好きなメロディーを最高の仲間と共に響かせ,楽しむのもよいではないか! その場にいる全員で(この場合はCDを購入したリスナーの意味)名曲を,楽しむのもよいではないか!

 その意味で『ANYTHING GOES』(以下『エニシング・ゴーズ』)は,ブラッド・メルドーの「息抜き」であり「遊び」であり「浮気」である。
 “アーティスト”としての活動を離れたブラッド・メルドーが,純粋に「エンターテイナー」として振る舞っている。

 そう。『エニシング・ゴーズ』の主役はブラッド・メルドーではない。ブラッド・メルドーはホストに徹しているのであり,主役はブラッド・メルドーを愛する大勢のファンたちなのである。

 その証拠にピアノブラッド・メルドーベースラリー・グレナディアドラムホルヘ・ロッシィによる『エニシング・ゴーズ』は,不動のブラッド・メルドートリオの3人であるにも関わらず,いつもの「THE ART OF THE TRIO」名義を使用していない。

 この辺りに管理人はブラッド・メルドーの意図を読み取る思いがする。そして勝手に深読みすると『エニシング・ゴーズ』は,熱心なブラッド・メルドー・ファン向けのプレゼントではない。

 『エニシング・ゴーズ』は,ブラッド・メルドー初の“スインギーな”ジャズ・ピアノ集。ブラッド・メルドーがポップ感覚の門戸を大開放している。これまでの“難解”を封印して“スインギーな”ジャズ・ピアノを聴かせてくれる。
 あるがまま,感じるがままのブラッド・メルドー一流の「おもてなし」はアメリカン・ポップ・タッチ。軽い&軽い。

ANYTHING GOES-2 とは言え『エニシング・ゴーズ』にはブラッド・メルドー“らしい”香りがプンプン匂っている。新しい細かな仕掛け満載の「エンターテイメント・ショー」を演じている。

 具体的には音数を減らし,一音一音の密度を高める方向性にシフトしている。基本『エニシング・ゴーズ』は原曲に忠実なアレンジなのだが,原曲に忠実であろうとするがゆえに,本来,ピアノ・パートではないパートでもピアノで歌っている。
 だから美メロが飛び出すわけではないのだが,自由自在なタイム感で繰り返し登場する旋律を耳で追いかけているうちに催眠効果?にかかってしまう?

 一聴,聴きやすいのに,クッキリと分離したブラッド・メルドーの“外様の”個性。単なる聴きやすさを越えた“スインギーな”ジャズ・ピアノである。

  01. GET HAPPY
  02. DREAMSVILLE
  03. ANYTHING GOES
  04. TRES PALABARAS
  05. SKIPPY
  06. NEARNESS OF YOU
  07. STILL CRAZY AFTER ALL THESE YEARS
  08. EVERYTHING IN ITS RIGHT PLACE
  09. SMILE
  10. I'VE GROWN ACCUSTOMES TO HER FAC

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 2004年発売/WPCR-11808)
(ライナーノーツ/青木和富)

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