AFFINITY-1 ピアノビル・エヴァンスハーモニカトゥーツ・シールマンスベースマーク・ジョンソンドラムエリオット・ジグムンドサックスフルートラリー・シュナイダーの5人が様々な編成で演奏した『AFFINITY』(以下『アフィニティ』)であるが,印象としてはピアノハーモニカによる“デュエット”のようである。

 それくらい,ビル・エヴァンストゥーツ・シールマンスインタープレイが突出している。叙情性や情感溢れる素朴な音楽イメージを吹き飛ばす,硬いピアノと疾走するハーモニカによる“男の美学”。聞き流してもよし&聴き込んでもよし=「聴き所の玉手箱」!
 そう。『アフィニティ』はジャズの全史を見渡しても稀にみる“異色盤”にして大名盤なのである。

 『アフィニティ』の成功の理由は「1にシールマンス,2にエヴァンス」である。トゥーツ・シールマンスハーモニカビル・エヴァンス“お得意の”リリシズムをかっさらう! 筆舌に尽くし難い哀愁を伴ったハーモニカが紡ぎ出すリリシズムが本家との共演で深みを帯びている。

 対する“お株を奪われた形”のビル・エヴァンスが一歩も引いていない。いいや,いつも以上のリリシズム! ビル・エヴァンスの内に宿る秘められていたリリシズムが,トゥーツ・シールマンスの個性によって外界へと引き出されている。
 ビル・エヴァンストゥーツ・シールマンスの「ロマン主義」が“爆発した”インタープレイがここにある。事実,他の3人の演奏も素晴らしいものだが,先に述べた通り記憶には残らない。ラリー・シュナイダーの【酒バラ】だけは存在感があるかなぁ。

 それにしても「トゥーツ・シールマンス効果」は絶大である。基本ビル・エヴァンスはBGMにはならないのに『アフィニティ』だけはウィスキーをひっかけながら聞いても様になる。ボーッと聞き流してもグッと来る。緩く気楽なジャズ・アルバムの最高峰。

 『アフィニティ』の真骨頂は“癒し”であり「涙」である。ボーッと無防備にBGMとして流していると,いつしか様々な思い出が浮かび上がって「涙」が無意識のうちに“零れ落ちて”しまう。目からの「涙」ではない。心から「涙」が零れ落ちてくる。ワ〜っではなく“1粒だけがポロリ”な感じ。
 『アフィニティ』を聴き終える頃には,いろいろな心のしがらみがすっかり洗い流されている。聴いて良かった。このジンワリと温かな感覚はそう滅多に体験できるものではない。“ジャズを超えた”ジャズ・アルバムの最高峰。

 思うに,ビル・エヴァンスも管理人と同様,トゥーツ・シールマンスハーモニカを聞き流しての録音だったように思う。無心でピアノを弾いたのだと思う。メロディーがゆったりと響く雄大でロマンティックなピアノを弾いている。
 当然タッチは超強烈なのだがいつものピアノ・トリオとは何かが違う。これがトゥーツ・シールマンスハーモニカに癒された“素の”ビル・エヴァンスなのかもしれない。

AFFINITY-2 そう。『アフィニティ』に録音された“素の”ビル・エヴァンス
 ボーッと聞き流せてしまうしても,ビル・エヴァンスエレピを弾いているとしても『アフィニティ』は,巷で語られているようなフュージョン・アルバムなどでは断じてない。

 『アフィニティ』にジャズを感じないファンは,ビル・エヴァンスピアノを聴かずに,よく知られたポップ・チューンのメロディーを聴いているからであろう。
 ズバリ『アフィニティ』の官能の美メロの聴き所は,メジャーとマイナーを行き来する瞬間の“間”にありますから〜。
 トゥーツ・シールマンスの「覚醒を産み出す」クリエイトした大仕事が超最高〜。一音で世界旅行〜。一音でタイム・トリップ〜。

  01. I Do It For Your Love
  02. Sno' Peas
  03. This Is All I Ask
  04. The Days Of Wine And Roses
  05. Jesus' Last Ballad
  06. Tomato Kiss
  07. The Other Side Of Midnight (Noelle's Theme)
  08. Body & Soul

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1979年発売/WPCR-13177)
(紙ジャケット仕様)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/中山康樹)

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