SURF RIDE-1 近年はこのようなことは少ないと思うが,管理人がジャズを聴き始めた30年前の日本のジャズ・シーンは「黒人至上主義」だった。黒がジャズであって白はジャズではない,という逆アパルトヘイトが絶対的権威を誇っていた。

 しかし,そんなジャズ・シーンの中にあって“別格”扱いされていた白人ジャズメンが数人いた。アルト・サックスアート・ペッパーリー・コニッツテナー・サックススタン・ゲッツ辺りの“インプロバイザー”たちである。

 特に上記の3人に関しては「黒人至上主義」も否定できない,美しいインプロビゼーション。そう。アドリブに黒も白もない。
 あれっ? COOLリー・コニッツスタン・ゲッツは分かるとしてアート・ペッパー? アート・ペッパーってウェスト・コースト派のメロディアスなウェットでしょう?

 バッカモン! アート・ペッパーこそ“稀代の天才”インプロバイザーの大本命! COOLで硬派なアルトを聴け! アート・ペッパーデビュー盤=『SURF RIDE』(以下『サーフ・ライド』)を聴いてからぬかせ! ぐうの音もでないはずである。

( …と『サーフ・ライド』のジャケットを水戸黄門の印籠ばりに取り出して罵倒したいところであるが,これがどうにも『サーフ・ライド』=波乗り=黄色いビキニのお嬢さん。痛たたた。でもこのハレンチなジャケットのイラストが結構好きなんです。いかにもアメリカンしていると思いませんか? 部屋に飾るのは恥ずかしくてできない超・軟派=音楽の中身とは正反対ですけどねっ )

 そう。『サーフ・ライド』の真実とは「アート・ペッパー版・スタン・ゲッツ」! 情感を含ませないCOOLアート・ペッパーを“骨の髄まで”堪能できる代物である。聴き方によっては「アート・ペッパー版・チャーリー・パーカー」とも読み取ることができる!
 とにもかくにも『サーフ・ライド』こそが“インプロバイザーアート・ペッパーの頂点の記録で間違いない。か〜っ,ジャズ史に残る超名盤

 では管理人の,そして多くのジャズ・ファンの愛聴盤かというとそうでもない。その理由は『サーフ・ライド』におけるアート・ペッパーは修行僧のように聴こえるから。
 アート・ペッパーの魅了とは,緩急自在のアドリブで,メロディなり情感なりを一瞬で浮かび上がらせてしまうところにある。だからこそメロディなり情感なりを伴わない『サーフ・ライド』は不完全。ひたすらアドリブだけを吹き込んでいる。

 アート・ペッパー特有のアルトに,男の色気を求めているマニアには大外れ。アドリブの面白さが分から限り,聴いていてこれほど凡庸なアート・ペッパーも他にないであろう。メロディを脇に置いたストイックで締まりのあるアドリブの連続。だから『サーフ・ライド』のアート・ペッパーは修行僧なのだ。

SURF RIDE-2 管理人の結論。『サーフ・ライド批評

 『サーフ・ライド』は『リターン・オブ・アート・ペッパー』や『モダン・アート』での「アドリブ天国」とは異質な「アドリブ地獄」の炸裂集。

 聴き始めは楽しくないかもしれないけど,アート・ペッパーアドリブのクセが“分かれば分かるほど”病み付きになって,やがて一切聴かなくなる。『サーフ・ライド』はそんなアルバムです。

  01. TICKLE TOE
  02. CHILLI PEPPER
  03. SUSIE THE POODLE
  04. BROWN GOLD
  05. HOLIDAY FLIGHT
  06. SURF RIDE
  07. STRAIGHT LIFE
  08. THE WAY YOU LOOK TONIGHT
  09. CINNAMON
  10. NUTMEG
  11. THYME TIME
  12. ART'S OREGANO

(サヴォイ/SAVOY 1952年発売/COCB-50279)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/青木和富)

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