UNDERCURRENT-1 ピアノギターによるデュエット・アルバムの「永遠の金字塔」! それがビル・エヴァンスジム・ホールによる『UNDERCURRENT』(以下『アンダーカレント』)である。

 ジャズにおいてデュエット・アルバムは数あれど,ピアノギターデュエットものは滅法少ない。なぜだろう?
 一般的に論じられている主流の理由は楽器の特性=ピアノギターも「コード楽器だから説」。ともすれば互いが互いを打ち消し合うようなデュエットになってしまう。しかしこれは個人的には違うと思っている。

 なぜならピアノギターデュエットは,同じコード楽器としてやり難さは残るだろう。しかしピアノギターメロディー弾きのリード楽器&リズム楽器としての側面も有している。
 要は,互いが互いを打ち消し合うこともできれば,互いが互いを引き立て合うこともできるコード楽器の共演である。ピアノギターデュエットものに難しさを感じるとすれば,それは楽器の相性を超えた“ジャズメンとしての資質”の問題であろう。

 ピアニストギタリストが口にしない,ピアノギターデュエットものが滅法少ない本当の理由がある。それが『アンダーカレント』の存在だと思う。
 もはや意識しなくとも潜在意識として刷り込まれちゃっている圧倒的な大名演。『アンダーカレント』がピアノギターデュエットの録音に二の足を踏ませる“楔”になっているのだと思う。
 どうしても比較される? どうあがいても越えられない?

 『アンダーカレント』を「永遠の金字塔」たらしめている最大の理由。それは『アンダーカレント』がビル・エヴァンスジム・ホールによる“実験作”だという事実にある。ビル・エヴァンスジム・ホールがアグレッシブに攻めている。ピアノギターデュエットの限界に挑戦しているのだ。

 そしてこの実験が“まさかの”完璧な成功を収めてしまった。『アンダーカレント』の印象は“優雅”という表現に尽きると思う。
 本当のビル・エヴァンスジム・ホールは『アンダーカレント』のジャケットに暗示されているように水面下でもがいているのに,水面上を漂っている死体?のようにしか聴こえない。ソフトでまろやかで寛いだ雰囲気が漂っている。上手い!そして美しい!
 互いの演奏にインスパイアされた素晴らしいインタープレイの最中であっても,相手をリスペクトする音が溶け合い調和が図られている。上手い!そして美しい!

UNDERCURRENT-2 アグレッシブに攻めているのにメロウで優雅で美しい。ホットな演奏なのにクールな音楽。『アンダーカレント』の奇跡的な超ハイレベルを勝手知ればこそ,一流のピアニストギタリストピアノギターデュエットに“ためらい”を感じるのだろう。
 全体を貫く知的なクールネスこそが,ビル・エヴァンスジム・ホール双方のアプローチに共通する『アンダーカレント』(底流の意味)なのである。

 その意味で「平成のアンダーカレント」に挑戦した渡辺香津美小曽根真と「21世紀のアンダーカレント」に挑戦したパット・メセニーブラッド・メルドーに惜しみない賛辞を贈りたい!

 果たしてその結果は,やっぱり『アンダーカレント』! やっぱりビル・エヴァンスジム・ホール! 50年以上の時を経て益々美しさの輝きを増していく!

  01. MY FUNNY VALENTINE
  02. I HEAR A RHAPSODY
  03. DREAM GYPSY
  04. ROMAIN
  05. SKATING IN CENTRAL PARK
  06. DARN THAT DREAM

(ユナイテッド・アーティスツ/UNITED ARTISTS 1956年発売/TOCJ-5972)
(ライナーノーツ/小川隆夫,皸羶成)

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