MAIDEN VOYAGE-1 『MAIDEN VOYAGE』(以下『処女航海』)は“叙情派”フリューゲル・ホーンの第一人者=アート・ファーマーによる「ウィズ・ストリングス」アルバムにしてスタンダード・アルバム。

 この企画が成立した瞬間に「名盤誕生」が保証されたも同然であったが,さらなるフラッグ・シップを目指して,ベーシストロン・カータードラマージャック・デジョネットピアニストとアレンジャーに佐藤允彦を起用。鉄壁で隙のない超豪華布陣が“ゆったりしたスイング”を聴かせてくれる。

 何ともゴージャス。何ともデリシャス。実に高度な音楽性で描かれた“柔らかな音空間”にまどろんでしまう。『処女航海』のタイトルよろしく豪華客船で大海原を世界一周。要はリッチな「クロスオーヴァーウィズ・ストリングス」の出帆であった。

 『処女航海』の主役は佐藤允彦である。佐藤允彦が,あのアート・ファーマーを,あのロン・カーターを,あのジャック・デジョネットを,意のままに操っている。
 有名ジャズスタンダードがスローで,しかし複雑で凝りに凝った“モダンな”アレンジで新たなる息吹を感じる。音に表情があるウィズ・ストリングスが最高に素晴らしい。この音は生きている!

 『処女航海』での“ゲスト”プレイヤーっぽいアート・ファーマーの「リリカルな」フレーズにストリングスがシンクロした瞬間の“美と創造の”フリューゲル・ホーン。ハミングしている!
 この音使いは反則である。ツボを突いてくる,というかツボしか攻撃してこない。快楽しか感じなくなる。この音は生きている!

MAIDEN VOYAGE-2 ジャズでもフュージョンでもなくコンテンポラリーでもなく映画音楽でもない,クロスオーヴァーウィズ・ストリングスの『処女航海』。果たしてこの音楽は佐藤允彦の「快楽の音楽」なのであろう。

 大衆音楽ではなく上品な貴族が嗜むウィズ・ストリングス。西洋の王族ではなく日本の大奥テイストな佐藤允彦のアバンチュール。そう。豪華客船で大海原を世界一周するには四十八手を超える快楽の仕込みが不可欠なのである。『処女航海』に“世界一の”浮世絵や漆塗りの元禄文化を思い見る。

 是非『処女航海』は読書しながら聴いてみてください。文面から潮の香りが匂い,文面から汽笛が聞こえてきた瞬間の快楽。読書こそ最高の快楽。オシャレな男の嗜みである。そんな自分に船酔いしてしまう!?

  01. NICA'S DREAM
  02. RUBY MY DEAR
  03. BLUE BOSSA
  04. GOODBYE PORK PIE HAT
  05. BLUE IN GREEN
  06. MAIDEN VOYAGE
  07. NAIMA

(インターフェイス/INTERFACE 1983年発売/COCB-53476)
(ライナーノーツ/高井信成)
(紙ジャケット仕様)

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