MOSAIC-1 ジャズ界の2大“名伯楽”=マイルス・デイビスアート・ブレイキー
 マイルス・デイビスアート・ブレイキーは共に才能ある新人を発掘し育て上げる名手である。共にバンド・リーダーとして絶大な統率力を誇っているが,決して縛り上げることはなく「自分の眼に見込み違いはない」と言わんばかりに,若手に自由に演奏させている。

 しかし,同じ工程で出てきた音の印象は「雲泥の差」。マイルス・デイビスのバンドは,メンバーの交代に呼応して次々と音楽スタイルが変化する。方や,アート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズは,いつの時代でもそれと分かる「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」印なジャズが鳴り続けている。これって何だろう?

 その答えが『MOSAIC』(以下『モザイク』)の中にある。なぜなら『モザイク』でのジャズ・メッセンジャーズが,ジャズ・メッセンジャーズ史上最大の音楽的変化を遂げているからである。
 そう。『モザイク』において,新・音楽監督=ウェイン・ショータージャズ・メッセンジャーズを遂に完全掌握。マイルス・デイビスジョン・コルトレーンによりスタートを切ったばかりのモードの取り込みと,ここがウェイン・ショーターの“大仕事”である小オーケストラ化を狙ってのトランペットテナー・サックストロンボーンを加えた「3管編成」の導入である。

 “天才”ウェイン・ショーターが仕切った,3管時代のジャズ・メッセンジャーズの音は実に革新的。『モザイク』発売でのアート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズが,モードの先駆者=マイルス・デイビス・コンボを抜き去り時代の先端を走っている。どっしりと地に足を着けながら遠くを目指すといった演奏で,次の展開が予想できないスリリングなフレージングが飛び出している。
 ズバリ,分厚いのにメロディアスな和音がたいそう効いているのだ。ウェイン・ショーターが提示したモードは,音数が少ないのに一音が響き渡る「アダルト」なんだよなぁ。音の選び方の自由が広がっているはずなのに冷静にコントロールされたアドリブ。これがカッコ良すぎるんだよなぁ。もう,こんちくしょう〜。

 事実,あの“最強のジャズ・ファン”アルフレッド・ライオンをして『モザイク』に魅了させられている。ブルーノートには『モザイク』以前に,リー・モーガンウェイン・ショーターの2管編成ジャズ・メッセンジャーズの録音ストックが4枚存在した。その4枚の出来にアルフレッド・ライオンが満足していたからこそ,アート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズでのインパルスへの吹込みを快諾していた。ブルーノートとしては確実に売れるであろう4枚を1枚1枚リリースすればいいのだから…。
 『モザイク』は,そんなアルフレッド・ライオンの目論見をすっ飛ばした。ブルーノートがストックしていた4枚のリリースは先送りされ『モザイク』の先行リリース大決行。『モザイク』の“衝撃”の大きさがよく分かるエピソードと思う。

 『モザイク』でのアート・ブレイキーの“大仕事”は,モードに馴染めなかったリー・モーガンボビー・ティモンズの代わりに,トランペットフレディ・ハバードピアノシダー・ウォルトンジャズ・メッセンジャーズに迎え入れたスカウティング力。
 アート・ブレイキーの“眼力”とウェイン・ショーターの“才能”が相まって,モードの歴史に足跡を残した名盤モザイク』。3管特有の緻密なアレンジ。ジャズ・メッセンジャーズは“個”が前に出るコンボから“アンサンブル”を前面に押し出すコンボへと進化した。凝りに凝ったユニゾンが心地良い。

MOSAIC-2 さて,ここまで長々と『モザイク』で聴かせたジャズ・メッセンジャーズの変化について論じてきた。
 しかし管理人が『モザイク』で,読者の皆さんへ一番訴えたいのは,モードでも3管でもなく,アート・ブレイキーの“比類のない個性”についてである。

 冒頭で書いた,メンバーの入れ替わりが激しいのに一貫して流れる「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」印。やっぱりアート・ブレイキーなのである。
 そのことをウェイン・ショーターは生涯忘れないことだろう。『モザイク』でウェイン・ショーターが精魂込めて手を加えた名アレンジをして,ドラムのニュアンスだけは踏み込めない聖域が確実に存在している。アート・ブレイキーが割って入れるようにジャズ・メッセンジャーズがスペースを残し,そこでアート・ブレイキーが実にジャズ・メッセンジャーズ“らしい”ソロを取っていく。

 そう。アート・ブレイキーが登場すれば(バックがどんな大物であろうと)その瞬間はただのバンドの構成員。『モザイク』でのドラムソロにはジャズ・メッセンジャーズのDNAが流れている。

  01. MOSAIC
  02. DOWN UNDER
  03. CHILDREN OF THE NIGHT
  04. ARABIA
  05. CRISIS

(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-7111)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,岡崎正通)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)