BASIE'S AT NIGHT-1 最高のハコで最高の仲間と最高の演奏。目の前には最高の観客がいる。渡辺貞夫にとって『BASIE’S AT NIGHT』(以下『ベイシーズ・アット・ナイト』)はそんな最高なCDであろう。

1)最高のハコ=理想のライブ・ハウス=日本一のジャズ喫茶ベイシー」。しかも勝手知った定期公演。信用しているオーナー・菅原正二氏の「完璧な段取り」がある。
2)最高の仲間=渡辺貞夫のレギュラー・クインテットピアノ小野塚晃ベース納浩一ドラム石川雅春パーカッションンジャセ・ニャン。長年連れ添った者同士の絶妙なコンビネーションがある。
3)最高の演奏=ナベサダのルーツを網羅するビ・バップ,ボサノバ,カリプソ,アフリカ,フュージョンスタンダードバラード。そのどれものが“ナベサダ”の代表曲である。アルト・サックスが“甘い音色でスイング”している。
4)最高の観客=ナベサダをフォローし続け,毎年「ベイシー」でのライブに足を運び続けるお客さんとスタッフたち。一音足りとも聴き逃すまいとする「拝聴」の姿勢にナベサダがいつも以上に乗せられている。

 ライブ・レコーディング日の「ベイシー」は“特別な空間”。渡辺貞夫が“聖地に立つ”〜。正しく『ベイシーズ・アット・ナイト』。
 アットホームなホームタウンでのライブであるにも関わらず,渡辺貞夫は決して手を抜いたりしない。それどころか渡辺貞夫の“気合テンコ盛りな”アルト・サックスのパルスがビシバシ飛んでいる。演奏を上手にまとめることを敢えてせず,音色やフレーズを含めた「いい音」をひたすら追い求めたナベサダ流“チャレンジ”のドキュメントなのである。
 カットなしのセットリスト全17曲収録なのがうれしすぎる〜。ミス・タッチも含めて発せられた全ての音が“JAZZ”なのだ〜。

 そんな“理想のライブCD”『ベイシーズ・アット・ナイト』なのだが,管理人の評価は星4つ。だって「最高のハコ+最高の仲間+最高の演奏+最高の観客」なはずなのに,肝心の感動が今一つ伝わってこないのだ。

 ライブCDが本当のライブに勝るなど,初めから思ってやいない。でも出来の良いライブ盤には本当のライブでは体験できない“サプライズ”がある。
 例えば,本当のライブでは聞こえないジャズメンの息遣いが聞こえる。本当のライブでは数十メートル先で演奏しているはずなのにまるで目の前で演奏しているかのような大迫力。本当のライブではドラムの音量が大きいのにバランスよく調整されたミキシング ETC。

 なのに『ベイシーズ・アット・ナイト』は,渡辺貞夫クインテットとの距離を感じてしまう。渡辺貞夫が遠く感じてしまう。ナベサダとの関係が希薄になった気がした。
 原因は多分レコーディングのせい。どうにも『ベイシーズ・アット・ナイト』の音質が耳に合わない。ズバリ,デッドすぎる。
 「臨場感」「解像度」「ダイナミックレンジ」「空間の表現」の4つを欲張って詰め込んで録音しているが,この4要素が上手く折り合っていないというか,残響が少ない分,聞こえなくても良いところまで聞こえてしまっている。結果,楽器の輪郭が貧弱で,渡辺貞夫の意図した“音空間”を上手に捉えきれていない。本当のところプレスされた『ベイシーズ・アット・ナイト』の音質を菅原正二氏が,どう感じているのか,気になるところである。

BASIE'S AT NIGHT-2 管理人の結論。『ベイシーズ・アット・ナイト批評

 聴いていて“入り込めない”ライブ盤ほど退屈なものはない。『ベイシーズ・アット・ナイト』では渡辺貞夫クインテットに共感できない。せっかくのCD2枚組が逆に憎らしく思えてしまう。

 管理人の『ベイシーズ・アット・ナイト』の楽しみと言えば,ピアノ小野塚晃ドラム石川雅春の「DIMENSION勢」の演奏力。特にナベサダ小野塚晃デュエットカリニューゾ】だけはヘビーローテーション。
 フュージョンではなく“JAZZYな”DIMENSIONを勝手にイメージして楽しんでいま〜す。

  DISC 1
  01. ONE FOR YOU
  02. PLUM ISLAND
  03. I'M OLD FASHIONED
  04. ALALAKE 〜 LOPIN'
  05. TEMBEA
  06. DEEP IN A DREAM
  07. MAJI

  DISC 2
  01. BYE BYE BABE
  02. BASIE'S AT NIGHT
  03. LIFE IS ALL LIKE THAT(FOR SNOOPY & HIS
     FRIENDS)

  04. SEE WHAT HAPPENS
  05. CALL ME
  06. MANHA DE CARNAVAL
  07. EPISODE
  08. KARIBU 〜 ORANGE EXPRESS
  09. HARAMBEE
  10. CARINHOSO

(ビクター/JVC 2007年発売/VICJ-61508-9)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/菅原正二,渡辺貞夫)

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