ELIS-1 『ELIS』(以下『エリス』)こそ渡辺貞夫最高のヒット作(アメリカ「ラジオ&レコード」誌ジャズ・チャート4週連続第1位! あくまでランキング上の最大ヒット。セールス枚数で語ったら『エリス』ではなく『カリフォルニア・シャワー』か『ランデブー』だったのでは?)。
 ズバリ,ヒットしたからというわけではないが,管理人の選ぶ渡辺貞夫“最高傑作”は『エリス』である。

 『エリス』は渡辺貞夫20年振りのブラジル・レコーディング。キーワードはエリス・レジーナである。
 『エリス』の真実は“ブラジルの歌姫”エリス・レジーナへの追悼盤。渡辺貞夫は1979年の「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」でエリス・レジーナのステージに飛び入り参加するほどの大ファン。終演後のパーティーで一緒にアルバムを作る約束を交わしていたが,その16年後にエリス・レジーナの元夫=セザール・カマルゴ・マリアーノとの共演でエリスとの約束を果たすことに…。

 『エリス』のレコーディング・メンバーはキーボードセザール・カマルゴ・マリアーノギターエイトール・テイシェイラ・ペレイラベースニコン・アスンサゥンドラムパウリーニョ・ブラーガパーカッションパペーチ,そしてゲスト参加でギターボーカルの“大御所”トッキーニョ

 ヤバイ。トッキーニョ以外誰も知らない。ブラジルだから,まぁいいか〜。なんて気持ちで『エリス』を聴いてびっくらこいた。
 上手い。上手すぎる〜。期待度マイナスからのNY超え〜。NYの一流スタジオ・ミュージシャンのハイレベルをも凌駕している。サッカー王国ブラジルは音楽王国でもあったのだ。こんなに無名の凄腕ジャズメンが,未だ国内で活動しているとは大ショック。

 “音楽センスの塊”集団=王者ブラジル。管理人にとって『エリス』は,音楽王国ブラジルの底力,裾野の広がりや底辺の深さを感じるきっかけCD。アメリカでもチャート1位取るはずだわ。

 …と書くと演奏テクニックのことだと思われるかもしれないが,管理人が言いたいのはそういうことではない。歌なのだ。歌心なのだ。『エリス』を聴いていると涙が出てくる。悲しくなんてない。感動してしまう。心が震えて止まらない。

 バラードの【ELIS】だけではない。トッキーニョとの【O QUE PASSOU PASSOU】だけでもない。【PASSO DE DORIA】と【MANHATTAN PAULISTA】の極上リズムに腰をくねらせ泣いてしまう。どうしようもなく泣けてくる。

ELIS-2 管理人の結論。『エリス批評

 『エリス』の魅力は“愛”である。音ではなく愛が鳴っている確かな感覚がある。『エリス』を聴くたび渡辺貞夫の“大きな大きな愛”に優しく包まれてしまう。心の奥底がジンジン温かくなっていく。

 この渡辺貞夫の“ほっかり”感覚。やっぱり『エリス』の魅力は“ブラジルの渡辺貞夫”なんだよなぁ。管理人の大好きなパット・メセニーウェイン・ショーターもブラジルに行った。管理人もこれからブラジルに行こうと思います。

  01. QUILOMBO
  02. PASSO DE DORIA
  03. ELIS
  04. MANHATTAN PAULISTA
  05. O QUE PASSOU PASSOU
  06. PACIENCIA

(エレクトラ/ELEKTRA 1988年発売/WPCL-10647)

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