ONE FOR ALL-1 ジャズメンとは常に前進し,変貌し,疾走して行くもの。しかし,たまにはクリエイティブの手を休め,多くの音楽仲間やファンと共に,ただただこれまでのハイライトを分かち合う。
 渡辺香津美の『ONE FOR ALL』(以下『ワン・フォー・オール』)は,正しく「喜びに浸るためのライブ」。こんなに“リラックスしたライブ”もいいものだと思う。

 『ワン・フォー・オール』は渡辺香津美の「音楽生活30周年記念」のライブ盤。“世界のKAZUMI”にふさわしく場所はNY。ワールドクラスの音楽仲間と世界中のファンが一同に会した“再会セッション”である。
 そう。『ワン・フォー・オール』の演奏は“並みの”フュージョン。真剣勝負な“ガチンコ”ジャズを期待すると肩透かしを喰らってしまう。でもこんな普段着の演奏だからこそ表現できた,あの瞬間にしか味わえない喜びの新発見がGOO。

 『ワン・フォー・オール』の聴き所は,気心知れた仲間とのインタープレイ渡辺香津美ピアノ矢野顕子ビブラフォンマイク・マイニエリギターラリー・コリエルベースジョン・パティトゥッチパーカッションミノ・シネルの超豪華メンバー5人と順番にアンサンブルを重ねていく。

 『ワン・フォー・オール』の前作が『DANDYISM』で良かったと思った。『DANDYISM』で小曽根真に“寄り添った”経験が『ワン・フォー・オール』での演奏に生かされていると思った。
 そう。『ワン・フォー・オール』の真実は『ONE FOR ALL,ALL FOR ONE』(「一人はみんなのために,みんなは一人のために」 by スクール☆ウォーズ)。ジャズの言語で翻訳すると「過ぎ去った時間はこの一瞬のために。この一瞬はこれからの時間の為に」…。

 矢野顕子マイク・マイニエリラリー・コリエルジョン・パティトゥッチミノ・シネルの豪華共演者が渡辺香津美のためだけにステージに上がり,渡辺香津美はゲストを立てる。自分と相手の良さを消さないインタープレイ渡辺香津美ギターを主役とすべく,一瞬で見事に反応してみせる。

ONE FOR ALL-2 ただし4人との“再会セッション”進行中の中,唯一,渡辺香津美とは初レコーディングのジョン・パティトゥッチが突き進む。
 “スーパー・ベーシストジョン・パティトゥッチはあれでも“手加減”したのかもしれないが,格の違いは隠せない。渡辺香津美の超絶ギターベースを合わせる瞬間のジョン・パティトゥッチベースは“2番目の”超絶ギター然。うお〜。

 個人的には『ワン・フォー・オール』をこんなにもリラックスして楽しめるのは矢野顕子の存在に負うところが大きい。ジャズ・ピアニストに専念した【WATER WAYS FLOW BACKWARD AGAIN】は,永遠の天才少女”あっこちゃん”100%!

  01. HAVANA
  02. WATER WAYS FLOW BACKWARD AGAIN
  03. LIBERTANGO
  04. SOMEWHERE
  05. AFRO BLUE
  06. ONE FOR ALL
  07. MILESTONES

(ポリドール/DOMO 1999年発売/POCJ-1451)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)