BLUE MARINE-1 ズバリ,今田勝は「日本のジョー・サンプル」である。
 ただし,この言葉を誤解しないでいただきたい。今田勝フュージョン路線は,完全に『RAINBOW SEEKER』スタイル。ジョー・サンプルの後追いなのであるが,今田勝の個性が強くてジョー・サンプルのコピーの遥か上を行っている。

 そんな今田勝が“似た者”ジョー・サンプルへ捧げたアンチテーゼがある。それが『BLUE MARINE』(以下『誘われてシーサイド』)である。
 『誘われてシーサイド』における,今田勝の「非なる」ジョー・サンプル,が実に興味深い。

 一般に『誘われてシーサイド』は,今田勝が「アイウイットネス」のスティーブ・カーンアンソニー・ジャクソンスティーブ・ジョーダンの3人に,グローバー・ワシントン,JR.トム・ブラウンを迎えて作られた豪華盤で通っているが,管理人的にはウェザー・リポートからマノロ・バドレーナを引っ張ってきた事実にニヤリ。

 そう。今田勝は「アイウイットネス」の凄腕リズム隊に元メンバーのパーカッショニストウェイン・ショータークラスのフロントを組み合わせた,仮想ウェザー・リポート&仮想ジョー・ザビヌルの世界を構築してジョー・サンプルクルセイダーズへ「ア・テ・ツ・ケ」た。ただし結果は「つ・も・り」止まりである。

 残念な理由は今田勝グローバー・ワシントン,JR.の相性の悪さ。グローバー・ワシントン,JR.抜きの【エンジェルフィッシュ】と【スマイル・フォー・ユー】の決定的名演は陽。太陽サンサン。ルンルン・ソング。『RAINBOW SEEKER』を凌いでいる。

 なのにグローバー・ワシントン,JR.が入ると途端に陰。これはグローバー・ワシントン,JR.が悪いのではなくフロントの人選ミス。グローバー・ワシントン,JR.は『WINELIGHT』な秋の人。夏が似合うは夕暮れ時。太陽サンサンは無理な人。『RAINBOW SEEKER』の2番煎じでボツ。

BLUE MARINE-2 いや〜,惜しい。同じサックス奏者ならグローバー・ワシントン,JR.ではなくベニー・モウピンだったのに…。
 クルセイダーズへ「ア・テ・ツ・ケ」るならウェザー・リポートではなくてヘッド・ハンターズジョー・サンプルへのアンチテーゼの役割モデルはジョー・ザビヌルではなくてハービー・ハンコックだったのに…。

 今田勝の「非なる」ジョー・サンプルへのアンチテーゼ。ちょっとは効果があったかな?
 いいや,やっぱり今田勝は,どんなに弾いてもどうもがいても「日本のジョー・サンプル」。『誘われてシーサイド』での今田勝は「頭隠して尻隠さず」だったかな?

 今田勝ジョー・サンプルの“呪縛”を自覚したのか,この2年後に「ナウイン」を結成。そう。ジャズ・ピアニストとしての自分に素直になればフェンダー・ローズで世界進出。小難しく考えないフュージョン路線が待っています。

  01. BLUE MARINE
  02. STREET DANCER
  03. ANGELFISH
  04. SECRET SOUNDS
  05. JUMPIN' DOLPHIN
  06. TROPICAL BUTTERFLY
  07. DEAR LILI
  08. SMILE FOR YOU

(ポリドール/POLYDOR 1982年発売/H32P20065)

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