OUTSIDE BY THE SWING-1 『OUTSIDE BY THE SWING』(以下『アウト・サイド・バイ・ザ・スウィング』)を一聴して驚いた日のことを覚えている。
 これが山中千尋か? あの山中千尋なのか? 自分の耳を疑ったことを覚えている。

 『アウト・サイド・バイ・ザ・スウィング』で山中千尋が“大変貌”。山中千尋に,テンションが半端ないストレート・ア・ヘッド・ジャズを演らせてはいけない。「オール4」のオールラウンダーが裏目に出ている。大胆なアレンジと繊細かつ力強い山中千尋の個性がまるで伝わってこない。“スパークしない”山中千尋ピアノには興味が沸かない。

 山中千尋は「アンサンブル指向」のジャズ・ピアニスト。犯人はジェフ・ワッツである。『アウト・サイド・バイ・ザ・スウィング』はジェフ・ワッツのアルバムである。それくらいに山中千尋ジェフ・ワッツに感化されてしまっている。

 例えばオープナーの【アウト・サイド・バイ・ザ・スウィング】。こんなに緊張感張り詰めた山中千尋ピアノは前例がない。そして【オール・ザ・シングス・ユー・アー】。山中千尋はメロディを繰り返すのみであってジェフ・ワッツの縦横無尽なドラミングの引き立て役を努めているにすぎない。
 そう。ブラックホール的なジェフ・ワッツの重力に山中千尋がすっかり引き寄せられパワーを発揮できていない。

 原因はマイナー・レーベル=澤野工房からメジャー・レーベル=ヴァーブへの移籍であろう。
 これが一体何を意味するのか? インディーズとメジャーの制作スタンスの違いは“ニッチ”から“万人受け”にあると思う。山中千尋もヴァーブの掟に従って?今まで続けていたセルフ・プロデュースをやめた。結果,山中千尋の非ジャズ的なセンスが前面に押出されたのだと思う。

 例えば『リヴィング・ウィズアウト・フライデイ』の再演となった【リヴィング・ウィズアウト・フライデイ】と『ホエン・オクトーバー・ゴーズ』の再演となった【八木節】。
 あれほど面白かった“地鳴りのような”名演が,極身近な距離感で鳴っている。ジェフ・ワッツ効果で,結構ビシバシ鳴っている。一般的にはカッコイイ演奏。でもジャズ・ファンからすると「そうではない!」んだよなぁ。
 キュートなピアニカで奏でる【キャンディ】のような小粋な演奏をもっともっと〜(ほっともっとは高橋みなみ)。

OUTSIDE BY THE SWING-2 『アウト・サイド・バイ・ザ・スウィング』での“大変貌”は山中千尋自身が望んだ変化ではなかったと思う。そういう意味では残念な駄盤である。

 管理人は澤野工房の名セルフ・プロデューサー=山中千尋を支持いたします(ただし名セルフ・プロデューサー=山中千尋がヴァーブの音造りを理解した『アビス』『ブラヴォーグ』は除く)。

  01. OUTSIDE BY THE SWING
  02. I WILL WAIT
  03. IMPULSIVE
  04. HE'S GOT THE WHOLE WORLD IN HIS HANDS
  05. TEARED DIARY (ATTENDS OU VA-T'EN)
  06. YAGIBUSHI 〜Revised Version〜
  07. CLEOPATRA'S DREAM
  08. MATSURIBAYASHI / HAPPY-GO-LUCKY LOCAL
  09. 2:30 RAG
  10. LIVING WITHOUT FRIDAY
  11. ANGEL EYES
  12. ALL THE THINGS YOU ARE
  13. CANDY

(ヴァーヴ/VERVE 2005年発売/UCCJ-2040)
エンハンストCD仕様:【I WILL WAIT(THE SCENE FROM THE RECORDING SESSION)】
(ライナーノーツ/ジョージ・ラッセル)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)