WHEN OCTOBER GOES-1 『リヴィング・ウィズアウト・フライデイ』でのレイ・パーカーベースラフレェ・オリヴィア・スキィドラムからなる山中千尋トリオは「アンサンブル指向」。3人共に他の楽器のスペースを空けつつも自己主張を繰り返している。
 そう。山中千尋の本質は,共演者の力を引き出しつつ自分の力量を発揮するタイプのジャズ・ピアニストである。

 そんな「アンサンブル指向」のジャズ・ピアニストにとって,とりわけ重要なのがベーシストドラマーベーシストドラマーの資質次第で“大化けの化学反”応を見せることもあれば,せいぜい凡庸な駄盤を産み出す結果も待ち受けている。ハービー・ハンコックライル・メイズなどが「アンサンブル型」の最右翼であろう。

 山中千尋の2nd『WHEN OCTOBER GOES』(以下『ホエン・オクトーバー・ゴーズ』)での共演クレジットを見て胸がときめいた!
 やった! ラリー・グレナディアベースジェフ・バラードドラム。そう。あの“天才”ブラッド・メルドートリオのレギュラー・ベーシストにレギュラー・ドラマー参戦! ついに山中千尋ブラッド・メルドーと肩を並べる大チャンス!?

 まぁ,そんな過剰な期待はウソであるが,ラリー・グレナディアジェフ・バラードとの共演で確実に山中千尋が「ヴァージョンアップ」。バークリー首席卒業は伊達ではない。NY在住の山中千尋=本場ブルックリン・ジャズは満点の完成度。そう。山中千尋“世紀の”快演なのである。

 山中千尋が“ブッ飛んでいる”。一発勝負のインタープレイが疾風の如く。単純に「脇を固める」存在では収まらないラリー・グレナディアジェフ・バラードを追いかけて,ついに掴まえる瞬間の躍動感は「もしかしてブラッド・メルドー?」級。
 名盤ホエン・オクトーバー・ゴーズ』で山中千尋が“一皮も二皮も剥けた”。ちーたんファンの耳の皮さえ剥いてみせた。「黒い恐怖」おそろしや〜。

 さて,それでいて『ホエン・オクトーバー・ゴーズ』に熱演の印象がない。パワフルなのに軽快なスイング感。凛としていてエレガントな表情は『リヴィング・ウィズアウト・フライデイ』延長線上にある「七色レインボー」。
 山中千尋ピアノの音色は,山中千尋のイマジネーションそのものである。感情を88の鍵盤に重ねて,ただただ歌う。しなやかで瑞々しい音の余韻がかすかな震えとなって,僕らの心の内面にじわじわと降り注いでくる。

 加えて,山中千尋の“アナログな”選曲眼。どうしたらかまやつひろしジャコ・パストリアスがつながるのか? 【BALLAD FOR THEIR FOOTSTEPS/THREE VIEWS OF A SECRET】の“完璧なつながり”は驚異的。
 キース・ジャレットの数多くの名曲群の中から阪神大震災のオムニバス盤『THE RAINBOW COLORED LOTUS』収録の【PAINT MY HEART RED】をなぜ選ぶ? タイトル・トラックにバリー・マニロウの【WHEN OCTOBER GOES】をなぜ選ぶ?

 そして山中千尋の生涯の代表曲=【八木節】。キース・ジャレットの【PAINT MY HEART RED】の美しさに息を呑んだ瞬間,目の前に舞い上がる,クリエイティブで複雑なパルスのどよめき! か〜,この緩急自在のアレンジ力が絶品!
 いいや,山中千尋の作曲力! 【TAXI】【S.L.S.】 ←『ホエン・オクトーバー・ゴーズ』のトラック批評をカミング・スーン。

WHEN OCTOBER GOES-2 管理人の結論。『ホエン・オクトーバー・ゴーズ批評

 山中千尋の複雑で味わい深い響きのピアノの音色。ダイナミズムと繊細さ。アンサンブルとインタープレイ。テクニックと歌心。『ホエン・オクトーバー・ゴーズ』を聴いていると,無意識のうちに口許がほころんでいる自分に気付く。

 山中千尋ラリー・グレナディアジェフ・バラード=「THIS IS CHIHIRO YAMANAKA TRIO」!

  01. Taxi
  02. Just In Time
  03. Paint My Heart Red
  04. Yagi Bushi
  05. Plum The Cow
  06. Ballad For Their Footsteps/Three View Of A Secret
  07. I Got Rhythm
  08. When October Goes
  09. S.L.S.
  10. In A Mellow Tone

(澤野工房/ATELIER SAWANO 2002年発売/AS025)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/北見柊)

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