LITTLE TINY-1 矢野沙織ジャズ・サックスと向き合う時,彼女の若さなど意識することはない。仮に意識しようものなら「世界の中心で愛を叫」びたくなってしまうはず?(管理人は今でも長澤まさみが大好きです!)。

 しかし矢野沙織の7th『LITTLE TINY』を聴いた瞬間,いつもの圧倒的なテクニックに感動すると共に「等身大の」矢野沙織を強く意識させられてしまった。全ての演奏が「初老」のそれであるが,時折強烈な「若さ」を感じる瞬間が記録されているのだ。
 これは初めての感覚。過去のどの作品からも感じられなかった不思議な感覚。これぞ若さ溢れる躍動感の自然体。そう。『LITTLE TINY』で矢野沙織がまた1枚脱皮した。またしてもハートを鷲掴みされてしまった。一体どこまで登りつめるんだ〜。

 『LITTLE TINY』での年季の入った音色と若さはつらつのフレージング。矢野沙織アルト・サックスが躍動している。やっぱり矢野沙織は凄すぎる。超大物=ロニー・スミスの音圧をしっかり受け止め,動じない矢野沙織が男前。
管理人の心境こそが“揺れ動く女心”なのである。どうしよう。

 『LITTLE TINY』は,ベストCD矢野沙織BEST 〜ジャズ回帰〜』の大ヒットを受けて準備されたジャズ・オルガン界の大御所=ロニー・スミス,馴染みのギタリストピーター・バーンスタイン,大物ドラマールイス・ナッシュとのオルガン・トリオとのワンホーンで乗り込んだNY録音である。

 矢野沙織オルガンと来れば名盤SAKURA STAMP』であろうが『LITTLE TINY』は『SAKURA STAMP』の続編ではない。
 『SAKURA STAMP』が矢野沙織のオリジナル集だとすれば『LITTLE TINY』は矢野沙織スタンダード集。“矢野沙織の”との枕詞がミソであって『LITTLE TINY』にはジャズ・スタンダード以上に【クロース・トゥー・ユー】【ベルベット・イースター】【ダニー・ボーイ】での“らしい”解釈が際立つ選曲。矢野沙織の「グルーヴィーで歌心溢れる」演奏が素晴らしい。

 加えて,絶賛すべきは矢野沙織のオリジナル=【マイ・ベイビー・ショット・ミー・ダウン】【パードン・ルーシー】。
 チャーリー・パーカーホレス・シルヴァーマイルス・デイビスギル・エヴァンスと横一線に並べても遜色ないバップ・ナンバー。
 「21世紀のジャズ・スタンダード」と来ればハービー・ハンコックの『ザ・ニュー・スタンダード』を連想する管理人であるが,ハービー・ハンコックに代表される既存曲の発掘よりも矢野沙織のような書き下ろしに可能性大を実感してしまう。うん。

LITTLE TINY-2 思うに『LITTLE TINY』での矢野沙織の成長は,前々作『GROOVIN’ HIGH』でのジェームズ・ムーディーとの幸運な出会いが“花開いた”結果だと思う。

 テナー・サックスジェームズ・ムーディーアルト・サックス矢野沙織が師事した理由は,当然演奏力の向上もあろうが,それ以上に音楽性。いいや,ジャズメンとしての人間性にある。
 矢野沙織を弟子として娘のように,時に優しく時に厳しく,朝4時から晩8時まで寝食を共にした2週間に及ぶ自宅レッスン。ジャズの真髄に初めて触れた矢野沙織は「他の人を生かし自分を生かすジャズメン」へと成長した。

 そう。『LITTLE TINY』の音造りは「ロニー・スミストリオフィーチャリング矢野沙織」!
 矢野沙織アルト・サックスが実に自然に,オルガンギタードラムと調和して響いている。ゆえに全員のソロに,そのプレイヤーとしての個性が色濃く表われている。『LITTLE TINY』が矢野沙織と3回目のレコーディングとなったピーター・バーンスタインが“別人格の”アドリブを繰り出している。

 聞けば,今作のレコーディングはスタジオの機材にトラブルがあり4人ともブースは使わず,顔と顔を突き合わせたライブに近いレコーディング形式を取ったとのこと。そう。4人の名手が高次元でアンサンブル。4人が共通認識で通じ合っている。
 だからこそ,百戦錬磨のロニー・スミスにしてルー・ドナルドソンへ「矢野沙織の演奏を録音スタジオまで聴きに来い」と言わしめたそうでして…。か〜,ロニー・スミスピーター・バーンスタインルイス・ナッシュも,3人まとめて矢野沙織にKOされてしまっている。管理人がKOされたのも当然なのだ。

 ただ,それだけに『LITTLE TINY』への苦言を一言。
 惜しむべきは,SPECIAL TRIBUTE TRACKTAKE THE“A”TRAIN WIH HIBARI MISORA】の存在である。

 このトラックはなんなんだ。美空ひばりの個性が超・強烈過ぎて「JAZZ QUEEN矢野沙織の完璧なワンホーンカルテットが「ぶち壊し」。最後においしいところを全部持っていかれている。ああ〜。星5つのはずが星4つ。

LITTLE TINY-3 矢野沙織は“天才少女”に違いないのです。美空ひばり相手に善戦したと思います。アドリブの出来も最高だと思いますが,やはり組んだ相手がまずかった〜。美空ひばりは“超・天才少女”でした〜。

 管理人の結論! 読者の皆さんには『LITTLE TINY』を聴くなら9曲までで寸止めすることをお奨めいたします。

PS1 演奏は男前な矢野沙織だが,ビジュアルはついに艶かしいインナーで爆●&生脚披露のセクシー系の大解禁。『LITTLE TINY』で矢野沙織がついに女を武器にし始めました。うれしい。
PS2 「LITTLE TINY-3」は販促用のクリアファイルです。こちらは学生時代へと逆戻りです。かわいい。

  01. My Baby Shot Me Down
  02. Split Kick
  03. (They Long To Be) Close To You
  04. She Rote
  05. Velvet Easter
  06. Boplicity
  07. Pardon Lucy
  08. K.C. Blues
  09. Danny Boy
  10. Take The "A" Train

(サヴォイ/SAVOY 2007年発売/COCB-53685)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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