LIGHT UP-1 カシオペアバラード。それは野呂一生フレットレス・ギターのことである。
 あの甘美で哀愁たっぷりなバラード野呂一生フレットレス・ギターなくして成立し得ない音世界。もはやフレットレス・ギターを抜きにして野呂一生は語れない。

 しかし,野呂一生フレットレス・ギターバラード・ナンバーの専売特許ではなかった。
 ズバリ『LIGHT UP』のテーマは「脱バラードフレットレス・ギター」。フレットレス・ギターで高速チューンを奏でていく。この“掟破り”が大当たり。
 『MAKE UP CITY』で,日本初のデジタル・レコーディング。『TOP SECRET』で,日本初のCD−EXTRAを記録した野呂一生が,自身3度目の日本初となる『LIGHT UP』で「攻撃的フレットレス・ギター」に挑戦している。

 【DANCE WITH BEAM】【WILL BE FINE】のような,完全フレッテッド指向な曲想を奏で上げるフレットレス・ギターのファンキーでダンサブルな早弾きパッセージ。
 “超高難易度な”フレットレス・ギターをいとも簡単そうに弾きこなす“神業”を超えた部分で感じる余裕がフレットレス・ギターの特徴“まろやかな音色”によるものなのだろう。どんなにギンギンに飛ばしても“ほろ酔い気分”でまどろめる。
 【MA・DO・BE】に至っては,もろ“ボサノヴァギター”な仕上がりに驚愕させられる。

 しかし特筆すべきは,野呂一生の驚異的な「フレットレス・ギター・ハイ・テクニック」ではない。
 ズバリ『LIGHT UP』の聴き所は,カシオペアとは異次元の「フレットレス・ギター・バンド・サウンド」である。

 野呂一生フレットレス・ギターフィーチャリングする,和泉宏隆ピアノ熊谷徳明ドラム亀山アキラベース林良キーボードの「SWEET BROTHERS」(バック4人組に与えられたユニット名)。
 実に素晴らしいバンド・サウンドが鳴っている。これぞ野呂一生の誇るバンド・サウンド。野呂一生の天分=リーダー気質は健在であった。

 フレットレス・ギターの,ほんわり暖かいコタツのような“オレンジの音色”をフロントに据えた,灼熱の太陽ばりの“真っ赤な”バンド・サウンドがムーディ&エネルギッシュ。
 『LIGHT UP』を聴いていると「ああ,やっぱり野呂さんだな」な瞬間を幾度も痛感させられる。そう。ほんのりカシオペアの残り香が放たれている。
 【FACE TO THE LIGHT】【HOT LINE】は“カシオペアばり”な名演。なんで『INSPIRE』に収録されなかったのだろう?

 でもでも,ここまで書いてきたがやっぱり…。フレットレス・ギターバラードであろう。【TOGETHER】に涙ちょちょぎれ〜。

LIGHT UP-2 管理人の結論。『LIGHT UP批評

 『LIGHT UP』は,フレットレス・ギターという“孤高の”楽器を使いながらも,耳をくすぐり続ける王道のポップ・メロディアス。『LIGHT UP』の全10トラックが野呂一生の10の才能を1トラック毎に『LIGHT UP』。

 『LIGHT UP』こそ“フレットレス・ギタリスト野呂一生20数年の集大成にしてソロ名義の最高傑作。
 なんだかんだ言ったって,結局,管理人は野呂さんが大好きなんだ。「根っからの野呂好き」を自覚させられた1枚である。

  01. FACE TO THE LIGHT
  02. A SIGHT IN THE HEART
  03. HOT LINE
  04. TOGETHER
  05. INWARDLY
  06. MA・DO・BE
  07. DANCE WITH BEAMS
  08. MEANING OF LIFE
  09. WILL BE FINE
  10. MILLION STARS

(パイオニアLDC/PIONEER LDC 2002年発売/PICL-1258)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)