本日,テレビ東京(TVQ九州)にて「ソロモン流 上原ひろみ」が放送されました。
番組は日本,イタリア,ロシアでの演奏旅行とその舞台裏。上原ひろみのオンとオフの二本立てドキュメンタリーでした。
東京公演は「コットン・クラブ」と「ブルーノート東京」。“世界の”上原ひろみの凱旋ライブではない。実は,今回の帰国は「考え出すと回らないスケジュール」の合間をぬった久しぶりの休暇の予定だった。しかし,この度の震災に心を痛め,休日返上で急遽決まったライブだった。
まずは「コットン・クラブ」公演。「少しでも元気の足しになるような演奏ができれば」と語っていた上原ひろみだったが,リハーサルから本気モード。誰も声をかけることのできない緊張感に包まれ,あっという間に会場15分前まで弾いてしまっていた。調律師にせかされてピアノのチェックを始めるも,またまた熱が入ってしまう。
調律師は上原ひろみを「一番ピアノを楽しそうに弾いている人」と語る。それに答えて「自分が楽しくないものを人に楽しめ,というのは無理なので」と上原ひろみが語っていた。
変幻自在なスタイル。うなりを上げて疾走する。ピアノと組み合う格闘技。誰もが思わず拍手したくなる迫力。秀逸なアレンジ&早弾き。弾いていることがいかにも楽しいという表情。音楽という枠さえも越えた何かが上原ひろみのライブにはある。
上原ひろみの激しい演奏は肉体を酷使する。毎日のように悲鳴を上げる“ステージ上にアスリート”さながらの体調管理の様子が放送された。本番前にパスタを食べる。炭水化物を食べないとエネルギーが出ない。常識を越えた指の指の筋力トレーニングが強さの秘訣であった。
番組BGMで何度も流れた【グリーン・ティー・ファーム】。そう。故郷,浜松でのオフ・ショット。何と上原ひろみが,浜松市の「文化芸術特別賞」を受賞した。「地元の星」だと紹介されていた。
そんな「地元の星」も女の子。「子供の頃からずっと好きだった」と語る600円のワンタン麺をぱくついていく。「これ以上ないシンプルな味わい。一つの中の完結された世界観が好き」だと語りながら,ぱくついていく。好きなものに夢中になるのはピアノと同じのようだ。
上原ひろみの子供の頃の“お宝映像”が放送された。6歳の時の「エチュード/モデラート」の映像を見つめながら「ピアノを弾くと周りの人が笑顔になるのが楽しかった。お客さんがみんな笑顔になって拍手してくれる」と語っていた。
“天才少女”の誕生は,周りの人のおかげでしょう。上原ひろみにとっては,喜んでくれる人がいなければピアノを弾く意味がないのかもしれない?
続く「ブルーノート東京」公演。今回の「ブルーノート東京」は,震災の影響で海外ジャズメンからのキャンセルが相次いだためのピンチ・ヒッターとしてのボランティア出演。
それで今回のステージは,タップダンサー・熊谷和徳とのスペシャルコラボレーション。即興が得意な2人の天才。アイコンタクトを取りながら軽快なフレージングでタップとピアノで会話する。見たこともないアドリブの応酬。【ホワット・ア・ワンダフル・ワールド】に,童謡【ふるさと】を加えて弾いたエンディング。観客は勿論,スタッフまでをも泣かせてしまいました。
日本の最後は,番組の案内人・船越英一郎とのインタビュー。
「旅から旅へという生活。ホテルからホテルへの生活。朝起きてここどこだっけ?っていうのがある。現場のサンドイッチのパンがしっとりしているから日本だなと感じる。落語が好きで,ここの間はこの人だな,と感じるのが好き。音楽も落語と同じで名人になるジャンプ台みたいなものはない。その年代のベストを追い求めたいと思う」と語っていた。
2ヵ国目はイタリア。海外で初めてとなるオーケストラとの共演である。
曲目は【ラプソディ・イン・ブルード】。クラシック・ピアノはソロ以外は楽譜通りが原則なので,指揮者にソロを織り込みたいと伝えたリハーサル風景。
お互いの曲に対するイメージが同じでないと上手くいかないものなのに,何と指揮者の楽譜と上原ひろみの持参した楽譜が違っていた。しかし予期せぬ出来事にもパニックにはならない。「こんな感じで弾きたいんだけど」。一瞬の即興で指揮者のハートを鷲掴み。
次は,オーケストラの団員たちとのリハーサル。クラシックの領域でどれだけの仕事ができるのか,冷静に品定めされている。やはりここでも,即興一発。「まるで魔法だったよ。演奏から情熱が伝わってきた」。思わず笑顔の団員たち。団員のハートも鷲掴み。合奏部分も一体に仕上がった。
公演当日。自分でメイクしながら気合を入れる。「思う存分楽しんできます」と言い残して出発。結果は…。聴衆の叫び声&スタンディング・オベーション。今や団員たちも長年の友達のように見えた。
翌日,8時間移動でロシアはモスクワ入り。自分の公演の宣伝看板を見て「一瞬で疲れが吹っ飛ぶ。うれしいなぁ」だって。
到着その日の夜のステージ。満員の聴衆に優しく語りかける。客席との会話である。ここでもやっぱり…。圧倒的な力量でモスクワっ子のハートも鷲掴み。あまりの喝采に思わず涙する。
そうなんだ。ここなんだよなぁ。上原ひろみの魅力って…。
ピアノの指さばきは革命的と絶賛された。グラミー賞を受賞して世界中から取材も殺到した。しかしいつでも他人事。名声や賞を取る事に関して欲求はない。4年前に結婚したが2人で過ごす時間も多くない。ではなぜそこまで?
上原ひろみの答えはこうである。「おばあちゃんになるまでずっとピアノを弾いていることが私の目標で,それ以上の野望はないです」。
いや〜,この言葉にグッと来ました。これまでも応援してきましたが上原ひろみが,もっともっと好きになりました。
番組は日本,イタリア,ロシアでの演奏旅行とその舞台裏。上原ひろみのオンとオフの二本立てドキュメンタリーでした。
東京公演は「コットン・クラブ」と「ブルーノート東京」。“世界の”上原ひろみの凱旋ライブではない。実は,今回の帰国は「考え出すと回らないスケジュール」の合間をぬった久しぶりの休暇の予定だった。しかし,この度の震災に心を痛め,休日返上で急遽決まったライブだった。
まずは「コットン・クラブ」公演。「少しでも元気の足しになるような演奏ができれば」と語っていた上原ひろみだったが,リハーサルから本気モード。誰も声をかけることのできない緊張感に包まれ,あっという間に会場15分前まで弾いてしまっていた。調律師にせかされてピアノのチェックを始めるも,またまた熱が入ってしまう。
調律師は上原ひろみを「一番ピアノを楽しそうに弾いている人」と語る。それに答えて「自分が楽しくないものを人に楽しめ,というのは無理なので」と上原ひろみが語っていた。
変幻自在なスタイル。うなりを上げて疾走する。ピアノと組み合う格闘技。誰もが思わず拍手したくなる迫力。秀逸なアレンジ&早弾き。弾いていることがいかにも楽しいという表情。音楽という枠さえも越えた何かが上原ひろみのライブにはある。
上原ひろみの激しい演奏は肉体を酷使する。毎日のように悲鳴を上げる“ステージ上にアスリート”さながらの体調管理の様子が放送された。本番前にパスタを食べる。炭水化物を食べないとエネルギーが出ない。常識を越えた指の指の筋力トレーニングが強さの秘訣であった。
番組BGMで何度も流れた【グリーン・ティー・ファーム】。そう。故郷,浜松でのオフ・ショット。何と上原ひろみが,浜松市の「文化芸術特別賞」を受賞した。「地元の星」だと紹介されていた。
そんな「地元の星」も女の子。「子供の頃からずっと好きだった」と語る600円のワンタン麺をぱくついていく。「これ以上ないシンプルな味わい。一つの中の完結された世界観が好き」だと語りながら,ぱくついていく。好きなものに夢中になるのはピアノと同じのようだ。
上原ひろみの子供の頃の“お宝映像”が放送された。6歳の時の「エチュード/モデラート」の映像を見つめながら「ピアノを弾くと周りの人が笑顔になるのが楽しかった。お客さんがみんな笑顔になって拍手してくれる」と語っていた。
“天才少女”の誕生は,周りの人のおかげでしょう。上原ひろみにとっては,喜んでくれる人がいなければピアノを弾く意味がないのかもしれない?
続く「ブルーノート東京」公演。今回の「ブルーノート東京」は,震災の影響で海外ジャズメンからのキャンセルが相次いだためのピンチ・ヒッターとしてのボランティア出演。
それで今回のステージは,タップダンサー・熊谷和徳とのスペシャルコラボレーション。即興が得意な2人の天才。アイコンタクトを取りながら軽快なフレージングでタップとピアノで会話する。見たこともないアドリブの応酬。【ホワット・ア・ワンダフル・ワールド】に,童謡【ふるさと】を加えて弾いたエンディング。観客は勿論,スタッフまでをも泣かせてしまいました。
日本の最後は,番組の案内人・船越英一郎とのインタビュー。
「旅から旅へという生活。ホテルからホテルへの生活。朝起きてここどこだっけ?っていうのがある。現場のサンドイッチのパンがしっとりしているから日本だなと感じる。落語が好きで,ここの間はこの人だな,と感じるのが好き。音楽も落語と同じで名人になるジャンプ台みたいなものはない。その年代のベストを追い求めたいと思う」と語っていた。
2ヵ国目はイタリア。海外で初めてとなるオーケストラとの共演である。
曲目は【ラプソディ・イン・ブルード】。クラシック・ピアノはソロ以外は楽譜通りが原則なので,指揮者にソロを織り込みたいと伝えたリハーサル風景。
お互いの曲に対するイメージが同じでないと上手くいかないものなのに,何と指揮者の楽譜と上原ひろみの持参した楽譜が違っていた。しかし予期せぬ出来事にもパニックにはならない。「こんな感じで弾きたいんだけど」。一瞬の即興で指揮者のハートを鷲掴み。
次は,オーケストラの団員たちとのリハーサル。クラシックの領域でどれだけの仕事ができるのか,冷静に品定めされている。やはりここでも,即興一発。「まるで魔法だったよ。演奏から情熱が伝わってきた」。思わず笑顔の団員たち。団員のハートも鷲掴み。合奏部分も一体に仕上がった。
公演当日。自分でメイクしながら気合を入れる。「思う存分楽しんできます」と言い残して出発。結果は…。聴衆の叫び声&スタンディング・オベーション。今や団員たちも長年の友達のように見えた。
翌日,8時間移動でロシアはモスクワ入り。自分の公演の宣伝看板を見て「一瞬で疲れが吹っ飛ぶ。うれしいなぁ」だって。
到着その日の夜のステージ。満員の聴衆に優しく語りかける。客席との会話である。ここでもやっぱり…。圧倒的な力量でモスクワっ子のハートも鷲掴み。あまりの喝采に思わず涙する。
そうなんだ。ここなんだよなぁ。上原ひろみの魅力って…。
ピアノの指さばきは革命的と絶賛された。グラミー賞を受賞して世界中から取材も殺到した。しかしいつでも他人事。名声や賞を取る事に関して欲求はない。4年前に結婚したが2人で過ごす時間も多くない。ではなぜそこまで?
上原ひろみの答えはこうである。「おばあちゃんになるまでずっとピアノを弾いていることが私の目標で,それ以上の野望はないです」。
いや〜,この言葉にグッと来ました。これまでも応援してきましたが上原ひろみが,もっともっと好きになりました。
コメント一覧 (2)
上原も穐吉敏子のようにずっと続けて欲しいですね。私は、上原の魅力はキーボード(ミニ)とピアノを一緒に操るのも凄いが、踊りだしたくなるような早弾きだと思いますね。
『情熱大陸』の上原ひろみは凄かったですが『ソロモン流』の上原ひろみはもっと凄かったですね。華麗なる音楽家としてもう拍手するしかありませんでした。
ホームズさんに言われて初めて考えてみた上原ひろみのビッグ・バンド。これが実現したらビッグ・ニュースです。
いつかは叶う夢の一つでしょうが,今想像するとどうしても「のだめちゃん」になってしまいます?
早弾きなのに踊りたくなってしまうのは,ただ早く弾くだけに終わらない,上原ひろみのリズム感とか音楽性にあるのでしょうね。