23-1 4人組のカシオペア,5人組のT−スクェア以上に,3人組のDIMENSIONのキャラが立っている。
 DIMENSIONは,音の粒立ちが良いと表現したらよいのだろうか? いつでもガッツリのカブリツキ! ソロにしてもアンサンブルにしても圧倒的な演奏力を誇っている。

 そんな“バリバリ”のDIMENSIONで初めて感じた“余裕の音”。それが『23』である。
 もうアクセルを目一杯踏み込んだりはしない。『23』でDIMENSIONはスポーツ・カーからセダンへと乗り換えた。大排気量はそのままに走り方が変化した。アクセルを踏まずとも軽々と坂道を登っていく感覚。トルクである。
 『23』で伝わってくる“ナチュラルな”トルク感が,DIMENSIONのポテンシャルの高さを際立たせていると思う。

 DIMENSIONの歴史は変貌の歴史。おおまかに書くと「爽やかギターフュージュン期 → 超絶技巧の近未来フュージュン期 → 円熟のクラッシュ・アンド・ビルド期 → 音の万華鏡期」とフュージュン・バンドとしての音を固めつつも一作毎に新境地へと挑戦し続けてきたDIMENSION
 これまでにもアダルト路線を感じさせるアルバムもあったが『23』に漂う“大人の余裕”はジェントルマン。全てを知り尽くし全てを受け入れた上でのONとOFF。自然体なのである。それでいて微動だにしない。揺るぎないDIMENSION・サウンドの最高峰に違いない。

 そんなこんなで『23』はミディアム系? 非常に聴きやすい。聴き込んだいくとさらに「一皮向ける」感覚があるが,一聴しても質の高い演奏に気付くのが『23』の特徴であろう。
 単純に『23』のジャケット・カラーのイメージだろうが『23』の音が白い。まばゆい。

 ハードでマッチョな『22』を聴き込んできた反動なのか『23』の音の拡がりがクールでカッコイイ。爽快なメントール系に喜びを感じる。
 【AFTER THE RAINBOW】【SLASH】【RED MOON】の大サビに仰け反ってしまう! これは角松敏生風のポップ・インスト! 増崎孝司ギターが飛ばしている。 
 【STORY】は【IF】ではなく【HEARTS】路線の名バラード勝田一樹アルト・サックスが歌っている。涙ちょちょぎれ〜。

23-2 パット・メセニーT−スクェアが大好きな管理人の『23』の楽しみの一つに,3人のゲスト・ドラマーの聴き比べがある。

 正直に順位をつけさせていただくならポール・ワーティコ則竹裕之坂東慧の順番である。最下位とした坂東慧が素晴らしい。やっぱり坂東慧は天才である。しか〜し,坂東慧以上に,則竹裕之が素晴らしい。則竹裕之にかかれば坂東慧は「まだ青い」となる(伊東たけし風)。しか〜し,則竹裕之以上に,ポール・ワーティコが素晴らしい。ポール・ワーティコにかかれば則竹裕之は「まだ青い」となる(伊東たけし風)。

 ポール・ワーティコが産み出す,細かい刻みと大きなグルーヴに“格の違い”を感じてしまった。これはパット・メセニー・グループT−スクェアから来る“格の違い”? パット・メセニー・グループ在籍時のポール・ワーティコは(パット・メセニーライル・メイズが凄すぎるので)特にこれと言って凄いと思ったことはなかったけれど,伊達にPMGのレギュラー・ドラマーは務まらない?

 ポール・ワーティコ石川雅春を越えて来た! DIMENSION史上最高のドラミングを聴け!

  01. After The Rainbow
  02. Evolution
  03. Steppin Out!
  04. Slash
  05. Red Moon
  06. Story
  07. You Never Know
  08. Change
  09. Yellow Line
  10. Scratch

(ザイン/ZAIN RECORDS 2010年発売/ZACL-9046)
(デジパック仕様)

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