GRAVITY-1 T−スクェア7年ぶりのメンバー・チェンジ。「期待は半分。不安は2倍」の中で聴いた23TH『GRAVITY』(以下『グラヴィティ』)。

 『グラヴィティ』を「戦々恐々」聴き始める。聴き終える。和泉宏隆本田雅人の不在を微塵も感じない。あれれっ? 確かにキーボードサックスの響きは前作までと明らかに違う。しかし難波正司キーボード宮崎隆睦サックスの響きが,これはこれで非常に心地良い。
 “崖っぷち”だったT−スクェアが『グラヴィティ』で見事な“サクセス・ストーリー”を演じ切っている。

 言い切ってしまおう! 安藤まさひろ以上に貢献度の高かった“T−スクェアの両翼”が抜けたダメージなどない! 決して聴き劣りなどしない! NO! 逆にクオリティが上がっている? 和泉宏隆本田雅人“ビイキ”にも関わらず(うかつにも)このメンバー・チェンジは有りだと思ってしまう自分がいる。
 それくらい,大声で叫びたくなるくらいの『グラヴィティ』は「名盤中の名盤」なのである。

 『グラヴィティ』成功の秘密は2つ(3人のキーパーソン)ある。(在り来たりの?)第一の理由は,新加入の難波正司宮崎隆睦の見事なカバーリングであろう。それぞれ和泉宏隆本田雅人の“後釜”ということで相当ナーバスになっていたと思う。
 難波正司宮崎隆睦にとって和泉宏隆本田雅人が同時に脱退したのは逆にラッキーだった。難波正司だけ,宮崎隆睦だけが新加入した場合の注目度は,きっとどちらかの新メンバー1人に集中砲火したに違いない。偶然の“2人でワンセット”が,プレッシャーを幾分(半分?)和らげてくれたと思う。

GRAVITY-2 『グラヴィティ』で,T−スクェアの新フロントマンとなる宮崎隆睦アルト・サックスを初めて聴いた。印象は「めちゃめちゃきれいな音色&ソフトで温かな音色」「ノンビブラートで伸びるフレージング」であった。悪く言えば「灰汁がない→個性が薄い」となるのかもしれないが,いえいえどうして,T−スクェアの新フロントマンに“必要十分な”実力者である。
 何よりも宮崎隆睦特有の雰囲気が“スクェア・サウンド”と溶け合う“相性の良さ”を持っている。こんなフィーリングは他のサックス奏者では感じない。

 管理人は『グラヴィティ』一作で,T−スクェアの新フロントマンは宮崎隆睦以外にいない,を確信した。宮崎隆睦にとって惜しむべきは,バンド加入3作でT−スクェア自体が“バンド形態の解消”を迎えたこと。もう少し長く,仮に本田雅人同様,T−スクェアに7年間在籍していたなら,本田雅人並みの“大物”になっていたかも? まあ,前記,難波正司との同時入団で運を全て使い果たしたのかも?

 T−スクェアの新音楽監督へ就任したキーボード・プレイヤーの難波正司。実は難波正司T−スクェアの関係は深い。
 難波正司T−スクェアの初共演は「アイルトン・セナ・トリビュート」の『SOLITUDE』までさかのぼる。【HEAVEN KNOWS】のリプライズでのピアニストと言えば,熱心なスクェア・ファンには通りがよいはず。

 しかし,キーボード・プレイヤーの役割以上に,難波正司の重責はT−スクェアの音楽監督にある。なんと!難波正司こそ『グラヴィティ』のプロデューサーなのである。

 T−スクェアのプロデューサーの通例は,伊藤八十八青木幹夫の名義を借りたセルフ・プロデュース。唯一の例外は『NATURAL』におけるラス・フリーマン。そう。T−スクェアの外部プロデュースは,長いバンドの歴史上『グラヴィティ』における難波正司が2組目のことである。

GRAVITY-3 ここは詳しく語らねば…。
 安藤まさひろと“旧知の仲”の難波正司。なんと!難波正司T−スクェア加入の順番は「プロデューサーが先のキーボード・プレイヤーが後」であった。やはり和泉宏隆T−スクェア脱退は“降って湧いた話”だったのだろう(プライドを傷つけられた和泉宏隆の胸中を察します?)。

 ここはプロデューサー=難波正司の実績=“歌もの”スクェアにベスト・マッチなJ−POP畑のミリオン・ヒットメイカー&安藤まさひろと同稼業のゲーム音楽家の安心感。
 難波正司の実力は『グラヴィティ』の新鮮なのに成熟した音。奥行きのあるメロディとリズムとシンセサイザーの完璧なバランス。現代的な音のうねり,打ち込みと生音の融合に顕著。
 案外,パット・メセニー大好きの安藤まさひろが『IMAGINARY DAY』を意識した結果の難波正司の起用だったりして? 難波正司プロデューサーは大当たり!

 さて『グラヴィティ』第二の成功の秘密は“T−スクェアのアイデンティティ”安藤まさひろの存在感にある。

 T−スクェアというバンドは,どんなにメンバーが変わろうともサウンドと曲調は変わらない。勿論,実際には一作ごとに変化している。『B.C. A.D.(BEFORE CHRIST & ANNO DOMINI)』〜『BLUE IN RED』〜『GRAVITY』の3作はT−スクェアの歴史の中でも指折りの激変期である。
 でもでも変な違和感は残らない。聴いて「あっ,スクェアだ」と感じさせる何かがある。これを“T−スクェアのアイデンティティ”と呼ばずにいられようか!
 【SAILING THE OCEAN】【PRAISE】の絶対神曲の存在感! 安藤まさひろがいる限り“王道のスクェア・サウンド”は不変なのである。

 さて,そんな“T−スクェアのアイデンティティ”安藤まさひろが率いるJ−フュージョン・バンド=スクェアもデビュー20周年。活動20周年をファンと共に喜ぶべく『グラヴィティ』の初回生産限定盤には,ボーナス・トラック【JAPANESE SOUL BROTHERS】初のスタジオ録音収録の特別ボーナスCD付属の2枚組。これが実に“豪華絢爛”で涙モノの大作なのだ。

GRAVITY-4 【JAPANESE SOUL BROTHERS】の“売り”は歴代メンバー総勢15人(鷺巣詩郎中村裕二青山純清水永二を除く。現メンバー=安藤まさひろ難波正司則竹裕之須藤満宮崎隆睦の5人+伊東たけし本田雅人久米大作宮城純子和泉宏隆河合誠一マイケル長谷部徹田中豊雪御厨裕二仙波清彦のOB10人)によるセッションとソロ廻し!

 誰がどのパートを演奏しているかのクレジット封入で“夢の聴き比べ”が楽しめます。でもでもやっぱり【JAPANESE SOUL BROTHERS】はライブで聴きたい! 譜割を無視した“大爆発”のベース・ソロあっての【JAPANESE SOUL BROTHERS】! スタジオ録音版はきれいなのですが少々迫力に欠けてしまいました。まっ,記念盤のファン・サービスとしてはありですが,次回はボツでお願いします?

 「名盤中の名盤」を産んだ難波正司主導のトロイカ体制も『グラヴィティ』一作で終了。

 しかし何の心配も無用です。『SWEET & GENTLE』『T−SQUARE』では,管理人が(安藤まさひろも)本田雅人に次ぐ“天才”と公言するキーボード松本圭司が新加入。
 “松本時代”(宮崎時代とは称しません。宮崎さん,ごめんなさい)のT−スクェアからも目と耳が離せません。あの出来事でT−スクェアが強制終了を果たすまで,まだまだ激動の時代は続いていく〜。

PS 難波正司の脱退は“キーボード・プレイヤー”難波正司としても好きだっただけに残念に思います。和泉サウンドから難波サウンドへの変化をもう少し楽しみたかったなぁ。

  DISC-01
  01. The Seven Wonders
  02. Sailing The Ocean
  03. Ms. Bracing
  04. Tokyo Sound Machine
  05. Praise
  06. Down To Earth
  07. One Step Beyond
  08. Explorer
  09. The Forest House
  10. Away From Home

  DISC-02
  01. Japanese Soul Brothers

(ソニー/SONY 1998年発売/SRCL4260-1)
(ライナーノーツ/伊藤八十八)
★【初回生産限定盤】三方背スリーブ仕様 特別ボーナスCD付 CD2枚組

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