NATURAL-1 ザ・スクェアの“ネームバリュー”を捨ててまで,アメリカでのブレイクを目指したT−スクェアCBSソニーが,本腰を入れてLA録音したのが『NATURAL』(以下『ナチュラル』)である。

 「郷に入っては郷に従え」!? 『ナチュラル』には“アメリカンナイズド”されたT−スクェアの5人がいる。
 “アメリカンナイズド”されたT−スクェアの最大要因は,全米NO.1のスムーズ・ジャズ・バンド=ザ・リッピントンズラス・フリーマンの“プロデュース力”に尽きる。

 ザ・リッピントンズの,いや,スムーズ・ジャズ界の“心臓”と讃えられるラス・フリーマン・プロデュースは安藤まさひろ発信のリクエスト。
 そう。安藤まさひろの“真の野望”は“スクェアリッピントンズ化”であった。
 
 『WORDLESS ANTHOLOGY 』のライナーノーツ安藤まさひろが公言しているが,そもそも安藤まさひろは,ザ・リッピントンズT−スクェアの音楽性を思い重ねている節がある。
 そう。誤解覚悟で述べると,T−スクェア→日本のザ・リッピントンズ→世界のT−スクェア。この図式が安藤まさひろの思い描いた,T−スクェアのアメリカ進出の真実である。『TRUTH』の成功の味に酔いしれたんだろうな〜。売れたかったんだろうな〜。安藤さんはエロイからな〜。

 もう少々誤解覚悟で述べると『ナチュラル』は“安藤まさひろの復権”のためにあった。
 『R・E・S・O・R・T』から始まった“スクェア和泉化”が大ヒット。スクェアの2枚看板=“ロックな安藤メロディ”と“和泉バラード”のパートナーシップも『TRUTH』まではバランスが保たれていたのだが…。

 全ては『YES, NO。』であった。『YES, NO。』で発揮された和泉宏隆の才能大爆発。『YES, NO。』で安藤まさひろ和泉宏隆の抜群のコンビネーションに“力関係”が生じてしまった。
 例えるなら,これはジャズ・メッセンジャーズにおけるアート・ブレイキーホレス・シルヴァーホレス・シルヴァーの才能が発揮されればされるほどアート・ブレイキーの影響力が弱まっていく。
 まぁ,安藤まさひろはそれでも笑っていたはず。そう。安藤さんはエロイから(全てをエロで片付けてしまってすみません)。

 そこで安藤まさひろ“憧れの”ザ・リッピントンズ! ザ・リッピントンズ安藤まさひろと同じギタリストラス・フリーマン率いるフュージョン・バンド。正式なバンド名は「ザ・リッピントンズ・フィーチャリング・ラス・フリーマン」。 そう。言わば,ザ・リッピントンズラス・フリーマンの“ワンマン・バンド”。ねっ,安藤まさひろの“羨望の眼差し”も理解できるでしょ?

 振り返れば“安藤まさひろの復権”の予兆はあった。『WAVE』を安藤目線で聴き直してみてほしい。
 11曲中8曲が安藤まさひろ作。【MORNING STAR】や【HARD−BOILED】のアレンジは安藤まさひろギターを聴くためのものであろう。
 まっ『WAVE』『ナチュラル』で復権を果たした安藤の“天下”も,本田雅人が加入する『NEW−S』までであるのだが…。

 さて,そんな安藤まさひろ“ご指名”のラス・フリーマン・プロデュースは『ナチュラル』の全10曲中4曲。しかしラス・フリーマンは真の天才。『ナチュラル』の他の6曲までもが“ラス・フリーマンナイズド?”されている。
 『ナチュラル』は聴きようによってはザ・リッピントンズのようである。『ナチュラル』はアメリカン・フュージョンである。そう。T−スクェアスムーズ・ジャズに“かぶれ”てしまっている。
 うーむ。この辺りがスクェア・ファンの間で『ナチュラル』がイマイチ人気薄の原因なのでしょう。ザ・リッピントンズが大好きな管理人は『ナチュラル』も大好物で〜す!

NATURAL-2 『ナチュラル』の特徴は『ナチュラル』なだけにナチュラルグルーヴ
 でもでも聴き込ば聴き込む程,とんでもなく緻密な音造りのスタジオ・ワークの“跡”がクッキリ。例えば,シンクロした音を左右に若干ずらすとかEWIを3回重ねるとか…。
 ラス・フリーマンの“漆塗りのように何層にも重ね塗られたオーヴァー・ダビング“の妙技は“ハイセンスの神業”である。
 5人の演奏が“キラキラと”エフェクトされている。とりわけ印象深いのは則竹裕之の“空間を支配する”ドラミングである。拍の空間でのハイハットがスリリングに響く。スプラッシュ・シンバルのサスティンまでもが計算されている。しかし“人間の演奏臭さ”にこだわっている。これぞ“匠の音造り”のお手本であろう。

 この分厚い音造りのせいなのか,ミディアム・テンポの連続のせいなのか『ナチュラル』は“秋”している。
 運動会や文化祭のカッコツケ・ヒーローの【CONTROL】。残暑から秋晴れの【DAISY FIELD】。そして大泣きの【WHITE MANE】と【LAST RAINDROPS】は“秋深し”である。あまりにも美しいメロディーに心が震えます。

 ギンギンにハードな『WAVE』とメガリス・ショックの『NEW−S』に挟まれた,全体的に地味な印象の『ナチュラル』であるが,最高級の完成度を誇るスムーズ・ジャズ名盤。個人的にはもう1枚,良質で上質な“T−スクェアスムーズ・ジャズ”を聴いてみたいと思う今日この頃です。

PS ボーナス8cmCDシングル収録の【RADIO STAR】=須藤満チョッパー・ベースフィーチャリング・リミックス。超カッコイイ,レア音源です。

  01. CONTROL
  02. DAISY FIELD
  03. WIND SONG
  04. WHITE MANE
  05. HAPPY SONG
  06. SNOWBIRD
  07. LABYRINTH OF LOVE
  08. UP TOWN
  09. RADIO STAR
  10. LAST RAINDROPS

  01. RADIO STAR
  02. GO FOR IT

(CBSソニー/CBS/SONY 1990年発売/CSCL1121-2)
(ボーナス8cmCDシングル付 CD2枚組)
★【初回生産限定盤】4面ダブル・デジパック仕様

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