WAVE-1 『TRUTH』の大ヒットは,望むと望まざるとに関わらず,ザ・スクェアを根底から大きく変えてしまった。

 『TRUTH』は“売れ線狙い”の大傑作であったが,ザ・スクェアのオリジナリティは基本的に普遍である。それで『TRUTH』の大ヒットによって,自分たちの“スクェア・サウンド”に絶対の自信を抱いたことだろう。

 J−フュージョンでは,ザ・スクェアだけが持つ貴重な『TRUTH』での成功体験。成功した者でなければ見ることのできない景色をザ・スクェアの5人だけが目撃できた。

 『TRUTH』の大ヒットを受けて,伊東たけしは3枚目のソロCDT.K.』を,和泉宏隆は初のソロCDAMOSHE』をリリース。
 伊東たけし和泉宏隆の“『TRUTH』後の景色”が非常に興味深い。“新たなアプローチ”の連続は“スクェア・メンバー”の誇りから来る自信の裏付けを感じさせられた(なんだか“スクェア・メンバー”が“SMAPメンバー”みたいな紹介ですねっ)。

 一方,ザ・スクェアのリーダー=安藤まさひろは『TRUTH』での成功体験を,ソロCDではなく,更なるバンドの発展へとフィードバック!
 安藤まさひろの目標の1つが,ザ・スクェアの“海外(アメリカ)進出”であった。かつては“遥か彼方の夢”だったものが,現実に手を伸ばせばそこにある。
 事実『TRUTH』は全米でも発売済。LAでのヒロシマ(アメリカで人気のフュージョン・バンド)との共演ライブが大成功。『YES, NO。』のツアーでは,なんとツアー・バスでの全米横断ライブまで敢行した。

 ここで安藤まさひろの次なる一手に驚いた。なんとバンド名の変更である。ザ・スクェアからT−スクェアへ…。

 本来,バンド名が変わるって,結婚して嫁いで姓が変わるぐらいの大事件だと思うのだが,かつて和泉宏隆がバンド名の変更について「THE」から「」へと「HE」がとれて臭くなくなった,と茶化していたぐらい当の本人たちは“アッケラカーン”? 

 改名の発端は「THE SQUAREザ・スクェア)」という同名のバンドがすでにアメリカに存在していたというのが理由なのだが,新バンド名=「T SQUAREティー・スクェア)」の「」というネーミングには
 THE」という従来のバンド名の短縮形。
TOKYO」という“日本の”フュージョン・バンドをアピールする意味合い。
T型定規」という数学的で理知的なイメージ。
 …という“後付のトリプル・ミーニング”がメンバー・スタッフ・ミーティングで決定したとのこと。結構安直なネーミング?

 アメリカ進出という安藤まさひろの“野望”をかなえる,ザ・スクェアT−スクェア改名後の第一弾が『WAVE』(以下『ウェーブ』)である。

 ズバリ言おう。『ウェーブ』こそ,ザ・スクェア時代の総決算にしてT−スクェアの総決算! 『ウェーブ』には,すでに日本でTOPを獲り,これからアメリカでもTOPを窺うにふさわしい“スクェアの王道サウンド”の貫禄を感じさせる。

 “スクェアの王道サウンド”の貫禄を例えるなら,チャーリー・パーカー
 その昔,ビ・バップの金字塔=『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』で,チャーリー・パーカーチャーリー・チャン名義で録音した。しかし,あのアルト・サックスの音色は“唯一無二”。印税を借金取りに持っていかれないようにするためのチャーリー・チャン名義だったらしいが,正体即バレである。
 同様に“スクェアの王道サウンド”が鳴り出せば,T−スクェアを名乗ろうが“唯一無二”のザ・スクェアの正体即バレである。

 そう。バンド名が変わろうが,アメリカを意識しようが,やってることは従来通りのスクェア・サウンド。「伝説の5人」と讃えられる,安藤まさひろ伊東たけし和泉宏隆則竹裕之須藤満=“唯一無二”のザ・スクェアの音なのである。

 NO! 『ウェーブ』こそ,ザ・スクェア時代の総決算にしてT−スクェアの総決算! バンド名が変わっただけなのに,まるで別バンドのように感じさせる瞬間がある。

 ザ・スクェアT−スクェアのニュアンスの違いを例えるなら,勝田一樹に代表される多名義なジャズメン!
 DIMENSIONアルト・サックス・プレイヤー=勝田一樹は,芸名として勝田かず樹へ変更したが,3つ目の名前としてソロプロジェクトでの活動は「JAFROSAX(ジャフロサックス)」名義を使い分けている。

 ザ・スクェアT−スクェアへの変更は,勝田一樹勝田かず樹のように思えて,実は勝田一樹JAFROSAXに近かったりする。
 そう。T−スクェアとしての真新しい音造り。バンド名の変更が「伝説の5人」のジャズメン魂にまで影響を及ぼした節がある。

 その核となったのが則竹裕之須藤満のリズム隊のフィーチャリングである。この『ウェーブ』から,則竹裕之須藤満の生み出すグルーヴが,単なるバンドのリズム・セクションの枠を超え,T−スクェアの音造りに深く関わり始めた。

 『R・E・S・O・R・T』から『YES, NO。』までのスクェアは,和泉宏隆の音世界を5人で追求するフュージョン・バンドであった。
 和泉宏隆キーボードが全体像を描き,そこに安藤まさひろギター伊東たけしアルト・サックスが“スクェア風”の華やかな彩りを添えていた。そう。ザ・スクェアのリズム隊はキーボードを除いたベースドラムの本来3人組の実質2人体制。

WAVE-2 しかし『ウェーブ』での則竹裕之須藤満の役割は異なる。存在感を増している。いや,もはやスクェアに“なくてはならない存在感”を確立している。

 その昔のピーター・アースキンが,実力でウェザー・リポートの“レギュラー”ドラマーの椅子を奪ったように,則竹裕之須藤満もそれぞれ“レギュラー”ドラマー,“レギュラー”ベーシストの椅子を掴んでみせた。
 則竹裕之須藤満こそ,それまで移り変わりの激しかったスクェアにあって,何と14年もの間(T−スクェアのバンド形態が解消されなければ,その後のずっと継続したであろう)“レギュラー”を務めたのだ。

 その理由は則竹裕之須藤満の持つバカテクだけではない。スクェア・カラーのサウンド・メイクの能力の高さにある。サウンド・メイクで成長できたのはスクェアに対して抱く2人の愛情の表われだと思う。
 この意味で『ウェーブ』こそ,則竹裕之須藤満の“原点”であり,T−スクェアの“原点”であろう。

 さて,管理人の結論=『ウェーブ批評
 『ウェーブ』は,アメリカを意識した“ギンギンに攻める”ハードなスクェア・サウンドの名盤中の名盤である。

 『ウェーブ』の至る所にスクェアの隠そうにも隠せない“地”がポロリ。T−スクェアは世界のどこで演奏しても“J−フュージョン丸出し”のバンドなのでした。

  01. MORNING STAR
  02. LOVE FOR SPY
  03. JEALOUSY
  04. YOUR CHRISTMAS
  05. ROUTE 405
  06. DOOBA WOOBA!!
  07. BIG CITY
  08. STILL I LOVE YOU
  09. HARD-BOILED
  10. ARCADIA
  11. RACHAEL

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