『SOPRANO SAX』の5曲目は【WILLOW WEEP FOR ME】(以下【柳よ泣いておくれ】)。

 【柳よ泣いておくれ】の魅力は「熟練の味」! 安定した刺激を送り続けるピアノ・トリオの音の波を“スイスイ”かき分けながら,自分の泳ぎを披露するズート・シムズ
 決して速くはないが,質の高い泳ぎ方は,芸術点最高の“模範演技”であり,教則である。

 終始リラックスした雰囲気の中,ソプラノ・サックスの表情だけが移りゆく…。
 起伏の出にくいソプラノ・サックスを,強引に吹き鳴らすことなく「色付け」するには相当のテクニックが要求されることと思うが,ズート・シムズ独特のフレージングで,ビリー・ホリデーばりの【柳よ泣いておくれ】を歌い上げている。実に渋い名演である。

 一方で【柳よ泣いておくれ】の聴き所は,主役であるはずのズート・シムズが上記「いぶし銀」の名脇役に回ったものだから,本来の脇役であるレイ・ブライアントが,前面に押し出された「玉突き」カルテット,の構図とも読み取れる。

 3分7秒からの,レイ・ブライアントピアノソロにも注目してほしい。普段着のレイ・ブライアントに似つかわしい“の木”が,ここでは“似ても似つかない”エレガントで華やかな“の木”へと変貌している。こんな“の木”も悪くはない。
 レイ・ブライアントピアノには,柳の下で“二匹目のドジョウ”を発見した時の驚きがある。

 
ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums

SOPRANO SAX-1
SOPRANO SAX
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