VILLAGE VANGUARD II-1 読者の皆さんは,90年代に巻き起こった大西ブームをご存知であろうか? 当時の異様な盛り上がりと比べれば,今の上原ブームなど足元にも及ばない。
 そのブームの頂点に鎮座する大西順子を評して,やれ,J-ジャズの旗頭だのオピニオン・リーダーだの,ジャズ・シーンの牽引車と語られていた。
 管理人も大西フィーバーに沸いた一人であったのだが,あの論調には疑問を感ずにはいられなかった。みんなして大西順子を真剣に聞いているのか,と思ってしまった。

 管理人の意見はこうだ。大西順子は“オーソドックスなジャズ・ピアニスト”であって革命児ではない。大西順子は正統派のスインガーであって,モードよりもハード・バップ=ノリ重視のジャズ・ピアニストなのである。

 大西順子ジャズ・ピアノに無意味なアドリブはない。ジャズを単なる素材として遊び道具の様に扱う傲慢さとも無縁である。テーマ,ソロ,アレンジなどトータルなバランスに重きが置かれており,曲を成立させる&聴かせることに真摯に取り組んでいる。
 そう。ウイントン・マルサリスとM-BASEの狭間で学んだバークリー卒,それが大西順子なのである。

 大西順子をマラソンに例えるなら,先頭集団に属してはいるが集団の後方を走っているようなランナーである。
 決して自分からレースを引っ張るでもなく仕掛けるでもない。TV画面の隅っこに映り続け時折名前を紹介されるようなランナー。最後は粘って8位入賞のような…。← 大西順子ファンの皆さん,ごめんなさい。

 大西順子自身,ヒートアップするメディア,身の丈以上の過大評価に戸惑っていたのではなかろうか? いや,これは管理人にも確信があるが,大西順子はこの状況に燃えに燃えたはずだ! 勝気で反骨精神に溢れる彼女は,デビュー以前にも増してジャズに打ち込んだに違いない!

 努力を重ねた“人気先行”大西順子に,ついに実力が追いつく日がやっていた! CDデビューから2年,大西順子は名実共にJ-ジャズの旗頭,オピニオン・リーダーになった!
 その成長の証しが“ジャズの殿堂”ビレッジ・バンガードでの2枚のライブ盤である。

 『JUNKO ONISHI LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』(以下『ビレッジ・バンガードの大西順子』)と『JUNKO ONISHI LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD Ⅱ』(以下『ビレッジ・バンガードⅡ』)の2枚のライブ盤は,ビル・エヴァンスジョン・コルトレーンらの,ビレッジ・バンガード録音の傑作ライブ盤と肩を並べる“掛け値なし”の大名盤である。

VILLAGE VANGUARD II-2 大西順子のトレードマークである,男勝りの打楽器的なピアノ演奏と“グシャッ”とした音色が炸裂している。「ゴリゴリ」とピアノを力任せにドライブさせながらもメロディアスにスイングする“生粋のジャズメン魂”がパンチラする,いやモロ見えである!
 透け透けの“ジャズメン魂”で「低音スイング」するジャズ・ピアノが大好物である。

 しかしここでまさかのねじれ現象! ここでもやっぱり東芝EMIである(大西順子と東芝EMIとの決定的な関係は後日詳述します)。
 『ビレッジ・バンガードの大西順子』と『ビレッジ・バンガードⅡ』の2枚は同日録音である。当然クオリティに差はないのだが,片やスイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】1994年度ジャズ・ディスク大賞【銀賞】受賞。片や無冠という処遇ぶり。冷遇である。

 管理人の好みは無冠の帝王『ビレッジ・バンガードⅡ』にある。単純にスローな選曲。とりわけ【りんご追分】である。もっともっと『ビレッジ・バンガードⅡ』!

  01. THE HOUSE OF BLUE LIGHTS
  02. NEVER LET ME GO
  03. BRILLIANT CORNERS
  04. RINGO OIWAKE
  05. TEA FOR TWO

(サムシンエルス/SOMETHIN'ELSE 1995年発売/TOCJ-5572)
(ライナーノーツ/成田正)

人気ブログランキング - 音楽(ジャズ)