2009年10月11日
ロン・カーター / イッツ・ザ・タイム
ジャズ・ベースの重鎮であり続ける「ミスター・ベース」=ロン・カーターを語る時,管理人は必ずソニー・ロリンズを引き合いに出す。共にモダン・ジャズの重鎮であり「生きる伝説」と称されているが,そもそも「生きる伝説」って何なの? コルトレーン・チルドレンはいるのにロリンズ・チルドレンなどいやしない。ベース界の「生きる伝説」と言えばジャコパスただ一人でしょ?
そう。ロン・カーターとソニー・ロリンズの共通点は,このジャズのメインストリームから一歩も二歩も距離を置いた感じである。どうにもアウトローで一匹狼的な印象を拭えない孤高の巨匠。俗世間の流行に組しないオリジナリティの追求が「生きる伝説」なのである。
おっと,熱く語りすぎてしまった。上記は管理人の意見であって真実とは異なっている。真実のロン・カーターとは(ソニー・ロリンズにしてもそうであるが)厭世主義者ではない。ロン・カーターは,大学で教鞭を取ったほど若いベーシストの指導にも力を入れている,人なつっこく面倒見の良い協調性に富んだおじさんである。
しかしロン・カーターのジャズ・ベースを聴いていると,なぜだか“最新のジャズ事情”には無頓着なイメージを受けてしまう。「流行の音楽に耳を傾けるほど暇ではない。そんな時間があるのなら“セッセ&コツコツと”己の信じたジャズ,自分の目指すジャズに磨きをかけることが重要なのだ」。そう思えてしまうほどロン・カーターのジャズ・ベースは“ゴーイング・マイウェイ”→“ワン・アンド・オンリー”なジャズメンなのである。このギャップもまた「生きる伝説」ならではの…。
そう。「生きる伝説」ロン・カーターはジャズ・ベースの「世界標準」である。ジャズのメインストリームから“ハミダシテイル”にも関わらず,ジャズ・ベースを志す者ならば,今の自分の立ち居地を知るためにロン・カーターを聴いてみるらしい。「ロン・カーターがこう来たから自分は次はこう動こう」。そう思うらしいのだ。そう。ロン・カーターはジャズ・ベースの「絶対座標」! 「ミスター・ベース」の称号は,ジャコ・パストリアスではなくロン・カーターにこそふさわしい!
事実,近年のロン・カーターは“これぞロン・カーター”的なCDの大連発である。
『IT’S THE TIME』(以下『イッツ・ザ・タイム』)は,近年のロン・カーターが意欲的に取り組んできたベース・トリオの大傑作である。マルギリュー・ミラーのピアノとラッセル・マローンのギターと絡む
ロン・カーターのウッド・ベースは,いつもの個性的な節回しなのに,全体と良く調和している。ベース・トリオの3人が3人ともにリズムを取りメロディを奏で合うのだが,ロン・カーターがいつも以上にスペースを埋めている。
ロン・カーターの特徴と言えば,有り得ないくらいの「長尺ベース・ソロ」であるが『イッツ・ザ・タイム』では「ストレスが溜まるのでは?」と心配になるぐらいロン自身のベース・ソロが控えられている。その分,前述のスペースを埋めることが楽しかったのだろう。ベース・ラインが“粒立っている”。これぞ「ミスター・ベース」の別名「ヘタウマ・ウォーキング・ベースマン」の真骨頂である。
以前のように暴走しなくとも「ヘタウマ・ウォーキング・ベース」でコンボをリードする術に磨きがかかったベース・トリオ。このベース・トリオの味はロン・カーターでなければ決して出せない味である。ロン・カーターが扉を開いた「ドラムレス・ベース・トリオ」にはまだまだ可能性が秘められている。
「ミスター・ベース」=ロン・カーターは,流行を睨むことなく視線をさらに己の高みに向けている。
(サムシンエルス/SOMETHIN'ELSE 2007年録音/TOCJ-68075)
(ライナーノーツ/児山紀芳)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】
(ライナーノーツ/児山紀芳)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】
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この記事へのコメント
1. Posted by のぶひで 2009年10月12日 13:08
2. Posted by セラビー 2009年10月12日 14:11
のぶひでさん,コメントありがとうございます♪
そうですよね。私もマイルスとロンの似たもの関係について語ることがありますよっ。理論派! 詳細は次回のCD批評で書くとしますね〜。
そうですよね。私もマイルスとロンの似たもの関係について語ることがありますよっ。理論派! 詳細は次回のCD批評で書くとしますね〜。
3. Posted by BLUE LIFE 2009年10月13日 08:31
一時期の、アンプリファイド過剰なサウンドより良くなってるんですね〜。
4. Posted by セラビー 2009年10月13日 09:27
BLUE LIFEさん,コメントありがとうございます♪
ワン・アンド・オンリーなバランス無視のベースの大暴走はなくなりました。大人70歳にして成熟!?
ワン・アンド・オンリーなバランス無視のベースの大暴走はなくなりました。大人70歳にして成熟!?
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