2009年09月20日
エディ・ヒギンズ・トリオ / アゲイン
「録音好し,ジャケット好し,選曲好し」で大人気のVENUS。VENUSのターゲットは明快だ。「録音好し,ジャケット好し,選曲好し」とは「オーディオ好きで,美女好きで,スタンダード好きな」中高年のジャズおやじ向けのレコード会社なのである。そう。ニッチな市場で一定の売り上げが見込める「ジャズ天国」ならではの土壌が産み落とした「日本一のジャズ・レーベル」がVENUSなのである。VENUSの“看板”であるエディ・ヒギンズのピアノを聴く度に,管理人はVENUSの存在を日本人として誇りに思う。よくぞエディ・ヒギンズを,世界の(特に日本の)ジャズ・ファンへと紹介してくれたものだ。
確かにエディ・ヒギンズは“カクテル・ピアノ”である。エディ・ヒギンズのピアノの音は,パクパク,モグモグ,グイグイッと口に(耳に)入ってしまう。実に飲みやすい。実に聴きやすい。そういう意味で,ジャズ初心者に間口が広い=カクテル・ピアノである。
しかしエディ・ヒギンズのピアノの音は,ジャケット写真からイメージさせられる「甘口のカクテル」などではない。スッと咽喉を通った後に“ピリリと舌を刺す”辛口のジャズメンである。そう。日本酒または白ワインである。軽快で繊細な演奏なのにキレがある。薄味なのにコクがある。要は原曲のイメージを薄めすぎないジャズ・ピアノなのだ。
エディ・ヒギンズが,超一流のカクテル・ピアノ弾き,のスタイルを身に着けたことには,VENUS契約以前の演奏活動に理由がある。エディ・ヒギンズは,シカゴにあるジャズ・クラブ「ロンドン・ハウス」のハウス・トリオのリーダーとして12年,フロリダのジャズ・クラブ「バッバス」でも4年間活躍していた。そう。エディ・ヒギンズは“現場叩き上げ”のジャズ・ピアニストであった。
毎晩,酒に酔ったお客の前でカクテル以上にピアノで酔わせるには…。心地良く美しいメロディは原曲通り崩さずに演奏すること。聴いていて疲れない演奏であること。時にはスタンダードを離れて,ポップな人気曲をジャズにアレンジすること…。それら聴衆とダイレクトに相対するクラブ演奏の“極意”を身に着けたことが「美しいものをより美しく,客を喜ばせるためには自分のスタイルには固執しない,しかし辛口職人気質」の庶民目線での演奏が,VENUSの“看板”としての圧倒的支持につながっているのだと思っている。
『AGAIN』(以下『アゲイン』)を聴いてみてほしい。これぞ“エディ・ヒギンズ・スタイル”そのものである。いくら日本人好みに仕上げたとはいえ,ここまでツボをあてられると「参りました。おいしゅうございました」の言葉しかまず出やしない。
【祇園小唄〜京都ブルース】のような日本人向けのオリジナル曲は言うに及ばず,あれこれと他のジャンルの人気曲を持ってきてはジャズ・アレンジしているのだが,そのどれもが,自然なアドリブ,馴染み深いアレンジで,抜群に咽喉越しが良い。
そう。『アゲイン』は,初めてジャズ・クラブに来店した人に(初めてジャズを聴いた人に)「ジャズって素敵。スイングって楽しい」と理屈抜きに理解させてしまいそうな“エディ・ヒギンズ・トリオ”による名演集であろう。
『アゲイン』の魅力は,初心者向けばかりではない。VENUSのターゲット層である,中高年のジャズおやじにとって興味深いのは,エディ・ヒギンズと対極にあるビル・エヴァンスの代表曲が収録されていること。これは余談であるが,管理人はエディ・ヒギンズの演奏からビル・エヴァンスをリスペクトしているように思えてならない。発散派のエディが,内省派のエヴァンスに憧れを抱く気持ちも良く分かる?
最後に,VENUSの付加価値である録音であるが,ライナーノーツで寺島さんも書いている通り,レイ・ドラモンドのベースにパンチの弱さを感じたなら,高級オーディオで聴き直してみてください。この重低音に“のけぞってしまう”こと間違いなしですよっ。
PS 訃報です。エディ・ヒギンズ氏は先月末(2009年8月31日),死の眠りにつかれました。ここに謹んで哀悼の意を表します。
(ヴィーナスレコード/VENUS RECORDS 1998年録音/TKCV-35068)
(☆24BIT・ハイパー・マグナム・サウンド ライナーノーツ/寺島靖国)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】
(☆24BIT・ハイパー・マグナム・サウンド ライナーノーツ/寺島靖国)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】
この記事へのコメント
1. Posted by BLUE LIFE 2009年09月23日 02:23
うーん、亡くなってしまいましたかあ...
2. Posted by セラビー 2009年09月23日 07:11
BLUE LIFEさん,コメントありがとうございます♪
また一人偉大なピアノ弾きが旅立たれました。今週はエディのCDをヘヴィ・ローテで追悼会を開こうと思います。
また一人偉大なピアノ弾きが旅立たれました。今週はエディのCDをヘヴィ・ローテで追悼会を開こうと思います。
3. Posted by のぶひで 2009年09月23日 23:45
4. Posted by セラビー 2009年09月24日 00:19
のぶひでさん,コメントありがとうございます♪
日本一のJAZZレーベルは澤野工房でしたね。これは失礼いたしました。
エディ・ヒギンズよりもウラジミール・シャフラノフとは,のぶひでさんも寺島派でしょうか? 私も体半分は寺島派です。
日本一のJAZZレーベルは澤野工房でしたね。これは失礼いたしました。
エディ・ヒギンズよりもウラジミール・シャフラノフとは,のぶひでさんも寺島派でしょうか? 私も体半分は寺島派です。
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