GRACEFUL VISION-1 『GRACEFUL VISION』(以下『グレースフル・ヴィジョン』)は『ILLUME』以上に「静」なCDである。

 “新生ニューヨーク・トリオ”との触れ込みであったが,ベーシストはレギュラーのラリー・グレナディアだし,ドラマービル・スチュアートからアリ・ホニックに代わっただけなんでしょ? “いつもの”ニューヨーク・トリオの最高なピアノ・トリオなんでしょ?
 そんな感じの“軽い気持ちで”聴き始めたものだから…。

 『グレースフル・ヴィジョン』の“表の顔”は,アキコ・グレースのリーダーシップが色濃く反映されたライブ感覚の「先見の明&想像力&理想像&幻の光景(ヴィジョン)」なピアノ・トリオである。
 しか~し『グレースフル・ヴィジョン』の“裏の顔”は予想と正反対の,とことん「静」! 『グレースフル・ヴィジョン』を聴いた瞬間「これがあのニューヨーク・トリオなのか?」と,耳を疑いたくなるくらいの大変動! 新生とは真正であった。

 『グレースフル・ヴィジョン』の“静けさ”は『ILLUME』の“静けさ”とは異なっている。アリ・ホニックの,それはそれは刺激的なビートが炸裂しているのだが,これぞ「雷鳴の後の地鳴り」のよう。そう。聴き所は「一瞬の静寂」にある。
 『グレースフル・ヴィジョン』の象徴としての“沈黙のジャズ・ピアノ”【GRACEFUL INTERMISSION】! 中身は聞いてのお楽しみ(このトラックを聴ける人がいるならば)である。

 『グレースフル・ヴィジョン』は,優雅であり,クラシカルであり,そして深く美しく響いている。まるで雨音を聴いているかのようなピアノ・トリオのファンタジーに,魂が震えた感覚がしっとりと残っている。アキコ・グレースジャズ・ピアノが“瑞々しい”。

GRACEFUL VISION-2 誌的で日本的で切なく儚げな【EVANESCENCE OF SAKURA】。心の奥底を明るく照らしてくれる“ソロ・ピアノ・タッチな”【SILVER MOON】。穏やかで凛然たる律動感に満ちた【APPROACH TO SHINE】。悲しくも美しいレクイエム【LACRIMOSA】…。
 そうして迎える『グレースフル・ヴィジョン』のハイライト! 日本的な間,空間,無を経て,ボーナス・トラック【DELANCEY STREET BLUES ’08】が耳元を一気に駆け抜ける! 突き抜ける! これぞ待ち設けていたカタルシス!

 そう。『グレースフル・ヴィジョン』こそ「ジャズを超えたジャズ・アルバム」である。しかし惜しまれるのは,ほんの一歩だけ「ジャズを超え過ぎた」かなぁ。

  01. Evanescence of Sakura
  02. How Deep is the Ocean
  03. Fly On Seven
  04. Doxy
  05. Approach to Shine
  06. Silver Moon
  07. Lacrimosa
  08. Innocent Waltz
  09. A Nightingale Sang in Berkeley Square
  10. Traumerei
  11. Graceful Intermission  
  12. Delancey Street Blues '08

(サヴォイ/SAVOY 2008年発売/COCB-53723)
(ライナーノーツ/岩浪洋三,バリー・アイスラー)

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