『TOKYO』の3曲目は【春咲小紅】。


 【春咲小紅】は,ご存知・矢野顕子の大ヒット曲。小学生の頃,オリジナルを相当聞いてしまったことと,ジャズにアレンジされた【春咲小紅】とは初対面だったので,一聴した程度では,なかなか“しっくり”こなかった。
 それが今では…。【春咲小紅】は,いつの日か「ジャズ・スタンダード」と呼ばれる日が来るのでは,と肩入れしている。アドリブの自由度は高いし,リズムがクリエイトする。名曲であろう。

 【春咲小紅】を名曲に“仕立て上げた”のが,アキコ・グレースの成せる技! なかなか“しっくり”こないので,これは“駄作”とあきらめ聴き流していたが,ふと「いいフレーズ」と思い,CDクレジットに目をやると【春咲小紅】だった,という経験を何度も味わった。
 そう。矢野顕子の【春咲小紅】をイメージすると駄作であるが,原曲を無視して,アキコ・グレースピアノ・トリオとして聴くと,俄然,耳に飛び込んでくる! 『ジャズに名曲なし,名演あるのみ』の名言が脳裏をよぎる。

 実際に原曲の“跡形”はほんのわずか。ただし,クライマックスでテーマが鳴り出す進行表が「ジャズ・スタンダード」っぽいのである。例えば3分47秒で安心していると3分50秒からの“4連発”はジャズ・ピアノの“王道”であろう。

 “和”のテイスト全開のアドリブがどれもいい。個人的には“地味”ではあるが,47秒からのイントロを6分30秒のアウトロでパワーアップして聴かせる「リズムの連打」が好みである。

AKIKO GRACE : Piano
KIYOTO FUJIWARA : Bass
TAPPY IWASE : Drums