TONIC-1 「メデスキ,マーチン&ウッド」と聞いて,眉をひそめるジャズ・ファンは多い。その大半は,4ビート以外はジャズとは認めない,と言う頑固で可哀想な人たちである。

 勿論,どんな音楽どんなジャズを聴こうとも,それはその人の自由である。好みの問題なので「メデスキ,マーチン&ウッド」を受け付けないのも致し方ない。誰しもどうしても受け付けないジャズメンの1人や2人はいることだろう。
 だから「メデスキ,マーチン&ウッド」が嫌いだとしても,それ自体は何ら悪いことではないわけだし,アンチに対して文句を言ったり批判するつもりなど毛頭ない。

 ここで管理人が指摘したいのは「メデスキ,マーチン&ウッド」 → ジャム・バンド → 正統派ジャズ・ファンは聴くものではない,と言う構図にハマッテはいないか? 要するに「喰わず嫌い」ではなかろうか?と読者の皆さんに問いかけたいだけなのだ。

 そもそもジャズの歴史は「何でもありで排他性なし」。多くの革命を経てジャズは進化を遂げてきた。ジャズの魅力とは,それがハード・バップだから,これがピアノ・トリオだから,と言った音楽形態の優劣ではない。いつでもアドリブインプロヴィゼーションの冴えであり,クリエイティブなリズムであり美しいメロディーなのである。

 アドリブインプロヴィゼーションが目的ならアンチ・ジャムは矛盾する。なぜならジャムとは,ロック畑のインスト・インプロヴィゼーションのことである。アンチ・ジャムは70年代のアンチ・ジャズ・ロックの歴史を繰り返すことに他ならない。

 ジャムを,そして「メデスキ,マーチン&ウッド」を嫌うのは一向に構わないが,単なる「喰わず嫌い」では勿体ないし相当に損していると思うのだ。それでまずは自分の好みと合わないか一聴してから判断してほしい。 ← 幾分おせっかいが過ぎたかなぁ。でも聴いた人の半数ぐらいは,管理人のような“おせっかい焼き”に変貌すること請け合いですよっ? ジャズは4ビートに限る,と主張するのはもう辞めにしませんか?

 それで今夜は超イレギュラーではありますが,おせっかいついでに,4ビート至上主義のジャズ・ファンの皆さんへの「メデスキ,マーチン&ウッド」のお奨めナイト! 4ビート至上主義のジャズ・ファンに受け入れられる「メデスキ,マーチン&ウッド」の1枚目は『TONIC』(以下『トニック』)推しナイト! 本当は『THE DROPPER』を推したいけど!

 『トニック』は「メデスキ,マーチン&ウッド」にしては珍しい,生ピアノに生ベースの全編アコースティック・セットでのライブ盤。
 4ビートを聴き込んできた管理人の耳をして『トニック』が超イケル。驚嘆のインプロヴィゼーションの「雨嵐」に衝撃を受けること必至。

TONIC-2 特筆すべきはジョン・メデスキである。元来,ジャズ・ピアニストとしてピアノを知り尽くしたジョン・メデスキが,いつものオルガンを手放し生ピアノと対峙することでピアノ版の電気グルーヴを産み落としている。いいや,生ピアノであるがこそ,電化の覆いを剥ぎ取った“生身のグルーヴ”がストレートに伝わってくる。

 ビリー・マーチンクリス・ウッドのリズム隊もジャズ本来のビートで,ジョン・メデスキを攻めたてている。とぐろを巻き,スパイラルに陥るこのトランスこそが,現代の“疑似”4ビートなのである。

 『トニック』に,オルガンジャズの「メデスキ,マーチン&ウッド」を期待すると“肩すかし”を喰らってしまう。
 しかし『トニック』には「メデスキ,マーチン&ウッド」の“本質”が,他のどのアルバムにも増して鮮明に記録されていると思えてならない。

 アンプラグドであるがゆえに,一層浮き彫りにされる「メデスキ,マーチン&ウッド」の底力! オルガン抜きで成立した電気グルーヴが素晴らしい!
 ジャムジャズ! ジャムアドリブ! 本物を聴き込んだ耳には「ジャズ」も「ジャム」も相違なく聴こえるはずである。

 
01. INVOCATION
02. AFRIQUE
03. SEVEN DEADLIES
04. YOUR LADY
05. RISE UP
06. BUSTER RIDES AGAIN
07. THAW
08. HEY JOE

 
MEDESKI, MARTIN & WOOD
JOHN MEDESKI : Piano, Melodica
BILLY MARTIN : Drums, Percussion, Mbira
CHRIS WOOD : Bass

(ブルーノート/BLUE NOTE 2000年発売/TOCP-65445)
(ライナーノーツ/フェデリコ・クリビオーレ,佐藤英輔)

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詩編56編 私の涙をあなたの革袋に
CASIOPEA 『カシオペア