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 ジャズフュージョン界の好敵手,ライバル相関図の名文句は「カシオペアスクェアがいるように,ウェザー・リポートにはクルセイダーズがいる」。これが世間一般の通例である。
 「カシオペア VS スクェア」は理解できるが,管理人は「ウェザー・リポート VS クルセイダーズ」という記事を見つける度に,いつも首をかしげてしまう。悶々としてしまう…。

 アドリブ芸術であるジャズにおいて“誰々に似ている”と批評されるのは,ジャズメンにとって“屈辱”なのかも知れないが(中には矢野沙織のように,パーカーに似ていると呼ばれることが“最高の栄誉”と言う人もいますが…)世間では簡単な判断基準として,何につけ誰かと誰かを比較する。二つ並べて見た方が確かに分かりやすい。言わば,批評の“常套手段”であろう。

 さて,ウェザー・リポートクルセイダーズは「ブラック・ファンク」の共通項はあるものの,音楽性は明確に異なっている。
 マニア同士の間では無意味な比較であることが浸透しているはずなのに,相手が初心者だったりすると,ついつい,引き合いに出してしまいがちである。やはりビッグ・ネームは通りがいい。
 キーボードが同じ“ジョー”で,ホーンが同じ“ウェイン”という点も,潜在的なライバル意識として働いていると思うのだが…。

 では,ウェザー・リポート抜きに,クルセイダーズ自体を解剖してみると「ファンキー&メロディアスなリズム+2ホーンのカウンター」が特徴! しかしこの特徴が確立されたのは,フュージョンの波が押し寄せてきてからのことである。
 フュージョン・ブーム以前のCDは正直,管理人の耳には合わない。いかにも古臭い! クルセイダーズクルセイダーズ“らしく”なったのは,70年代に入ってからのこと。ちょうど『THE JAZZ CRUSADERS』→『THE CRUSADERS』へバンド名を変更した頃からだ。
 “新生”クルセイダーズは,バンド名から『ジャズ』を除き去ることにより,ジャズブルースを前面にアピールするバンドから,ジャズを下敷きにした「ブラック・ファンク」をアピールするバンドへと脱皮した。
 そう。クルセイダーズの代名詞である“躍動的なビート”は,納豆のごとく“ねっとりと糸を引くブルース系から“洗練された”ブラック・ファンクへと昇華したのだ。

 『THE 2ND CRUSADE』(以下『セカンド・クルセイド』)は,そんな過渡期のブラック・ファンクが録音されている。過渡期と書いたが,正確には“新芽”を聴き分けることができる。そう。クリエイティブな音楽が“誕生した瞬間の”感動や“みずみずしさ”で満ちている。
 誤解を招かないよう補足しておくと,この『セカンド・クルセイド』は,バンド名を“新生”クルセイダーズに変えてからの2作目であって“ぽっとでの”デビュー2作目ではない。この時すでにクルセイダーズジャズ界の中堅グループとしての地位を確立していたのだ。 そんな彼らの“チャレンジ作”だからこそ,安心して“目新しい所”だけを抜き出して聴き取れる。これもまた『セカンド・クルセイド』の楽しみの一つである。

 『セカンド・クルセイド』以降,フュージョン・シーンをリードしてきた,クルセイダーズの“洗練された”ブラック・ファンクには「軽さ」が伴っている。
 ここで詳しく語ることはしないが,ジャズフュージョンにおいて「軽さ」と言う言葉は良い意味で用いられる。「重くぶ厚い音」も確かにジャズの魅力であるが,「軽やかな音」こそ,よりジャズ的と言える。
 全体を貫く“黒さ”に,印象としてのんびりとした休日の雰囲気が混在している。混在こそフュージョン! 真に開放的で明るいサウンドである。

 冒頭で述べたように,世間ではクルセイダーズを説明する手段としてウェザー・リポートとよく対比させる。
 しかし管理人に言わせれば,クルセイダーズの対抗馬は,ハービー・ハンコックヘッド・ハンターズでしょ? 同年録音の『ヘッド・ハンターズ』と『セカンド・クルセイド』を聴き比べれば「明るく伸び伸び,骨太なのに軽い」クルセイダーズの特徴が“より際立つ”に違いない。
 明日以降,ライバル対決の話題なら「ハービー・ハンコックヘッド・ハンターズ) VS クルセイダーズ」で行きませんか?
 『セカンド・クルセイド』を聴いていただければ,この主張に同意していただけることと思っています。

(1973年録音/38XD-637)

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