2007年02月11日

DIMENSION / 11TH DIMENSION “KEY”4

アナログレコード

 「第三世代」という言葉がある。何かと耳にする「携帯電話」の話ではない。J−ジャズフュージョンの話である。

 世代交代はいつでも,革新的な新規格の登場と共に幕を開ける。第三世代携帯電話とは「IMT−2000」規格に準拠した携帯電話やその方式のことを指す。要は高速パケット通信と高い周波数利用効率が特長である。
 世代交代は新規ユーザーにとっては“朗報”であっても,旧ユーザーには,時として“痛み”を伴う。そう。互換性問題…。
 管理人は「IDO」時代からのauユーザーなので影響はなかったが,NTTドコモが「FOMA」を開始した時には,エリア外+エリア内なのにつながらない,のオンパレード! 残念ながら,第二世代の「MOVA」と第三世代の「FOMA」に互換性はなかった。

 90年代前半のこと,J−ジャズフュージョンに「第三世代」と呼ばれる若手ジャズメンたちが登場した。
 ナベサダヒノテルらの第一世代,カシオペアスクェアらの第二世代の影響は確実に受けているものの,全く違うアプローチ,全くの新発想=完全なる新規格! ある部分は旧世代との互換性もあるが,ある部分は互換性など考慮されていない。

 “新規”ユーザーである,第三世代のファンたちは,すぐに“おいしいところ”を聴きこなしてしまうが“機種変”ユーザーである,第一,第二世代のジャズフュージョン・ファン,つまり管理人のような「立派なおじさんたち」であるが,彼らが第三世代を使いこなすには“慣れ”が少々必要である。

 そこで「DIMENSION」! 第三世代の“旗印”である「DIMENSION」を「ビーイング系」「超絶技巧集団」と呼ぶ人も多いが,管理人にはピンとこない。
 確かに一世風靡した「ビーイング系」との交流が深いが,それはDIMENSIONの“懐の深さ”を意味しているに過ぎない。
 DIMENSIONには,意図的にポップスやロック寄りの音造りをしたトラックがあるが,その瞬間瞬間で周りの音に反応する演奏姿勢は,ジャズ・スピリッツで溢れている! 絶妙のアドリブに一発で心を奪われてしまう!
 DIMENSIONのスーパー・テクニックは「超絶技巧」であるが,正しくは“百戦錬磨”の「セッション集団」と呼ぶべきだろう。
 そう。DIMENSIONの体内には“いい音の前にいい演奏がある”ジャズフュージョンの血が流れている! たとえポップスやロックを演奏しようとも,常に“おいしい”アドリブを追求する「セッション集団」としての本性を隠すことなどできていない。
 特にキーボード小野塚晃は,渡辺貞夫グループの“レギュラー・ピアニスト”として10年前にプレイしていたが,今年のツアーで“復活”を果たしたジャズメン。そう。小野塚晃は今も昔も“ジャズ畑”の人間なのである。
 それで“目新しさ”ではなく“基本性能”に注目して聴いてみると,機種変組のおじさんたちでも“スンナリ”と,新規格のJ−ジャズフュージョンを受け入れることができると思う。

 『11TH DIMENSION “KEY”』(以下『KEY』)がいい。『KEY』なら,DIMENSIONへの拒否反応はでないと思う。「スッ」と身体に染み入る造込みで,第三世代特有の“壁”を感じない。メロディーの良さに魅了されることと思う。
 その分「超絶技巧」はスパイス程度。DIMENSION・ファンの間では“凡作”とされているので,あらかじめご了承願いたい。

 そんな“敷居の低い”『KEY』なので,昔の“文脈”を通しても心地良く聴くことは可能だが,いつまでも過去との互換性に頼っているとしたら新規格の恩恵に浴することはできない。
 ここは思い切ってDIMENSIONの音世界へ身を委ねてみてほしい。まずは勝田一樹アルト・サックスが耳で追いやすいと思う。この転調の多さとハイトーンの“乱れ打ち”は,過去のJ−ジャズフュージョンの“型”には無かったものだ。
 何が新しいのか,うまく説明できないが,以前の“しがらみ”をとっぱらった音楽理論が,作曲方法,演奏手法まで変えてしまっている。やはり世代交代は,革新的な新規格の登場と共に幕を開けたのだった。

 ちまたでは2007年問題=団塊の世代の大量退職によるノウハウの消滅に危機感が叫ばれている。
 しかしJ−ジャズフュージョン界は安泰である。DIMENSIONに代表される「第三世代」が立派にシーンを担っている。そして今や矢野沙織アキコ・グレース山中千尋らの「第四世代」の台頭も著しい。“十年一昔”とは良く言ったものである。
 ガンバレ第一世代,負けるな第二世代! この気持ちは当の第三世代,第四世代のジャズメンも同様だろう。ジャズメンに定年退職などないのだから“生涯現役”のベテラン勢と若手たちが“切磋琢磨”し,次世代の新規格の創造にチャレンジし続けてほしい。
 2007年のJ−ジャズフュージョン界は,世界的に見ても稀に見る激戦区。新旧入り混じった素晴らしい環境下にある。

(1998年録音/BMCR-7030)

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この記事へのコメント
1. Posted by BLUE LIFE    2007年02月12日 18:40
いつの時代にも基本性能は大切かもしれませんね。
2. Posted by セラビー    2007年02月12日 19:21
BLUE LIFEさん,コメントありがとうございます♪
いつの時代もJAZZの楽しみはアドリブ,インプロヴィゼーションの冴えにあると思っています。
DIMENSIONの音は表面上,最新型のFUSIONですが,根底にはJAZZの基本が流れています。年季の入ったJAZZマニアでもきっと唸りますよ。
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