2007年01月14日
マイケル・ブレッカー / タイム・イズ・オブ・ジ・エッセンス
電話口で一声聴いて,すぐに誰からの電話か分かる人がいる。一方,親子だったり兄弟だったり「全く同じ話し方?」なので,確認しないと誰からの電話か分からない場合もある。後者に関しては,どんなに親しい間柄であっても,実際に一音で判別するのは難しい。「オレオレ…」の言葉を鵜呑みにし,当人と思い込んだまま別人と話し続ける…。読者の皆さん,くれぐれも「振り込め詐欺」にはご用心!
さて,ジャズ/フュージョンを聴いていると,これとよく似た場面に遭遇する。一音聴いて,すぐに誰だか分かるジャズメンもいれば,CDのクレジットを見ないと,誰の音だか分からないジャズメンもいる。そして,これは嘆き悲しむべきであろうが,ジャズ/フュージョンに関しては,残念ながら圧倒的に後者が多い!
「あの音色が…,あのフレージングが…」と,ジャズメンの個性を表現することが多いし,それは決してウソではないのだけれども,ジャズ/フュージョンの主役はあくまで楽器であり,楽器は物である。徹底した品質管理のもとで大量生産されている。だれが弾いても同じ音が出るように作られているのだ。
判別の難しさは電話口での人声の“それ”とは次元が違う。
では完全に判別不能なのかというと,そうでもない。少数ではあるが明確に“自分の音”を持つジャズメンは存在する。その代表格の一人が,今回紹介するマイケル・ブレッカー!
これはフュージョン・サックスの第一人者=ケニー・Gの談話であるが,彼の定義によると,全世界のサックス奏者の中で“自分の音”を持っているのは,グローヴァー・ワシントンJr.にデヴィッド・サンボーン,そしてマイケル・ブレッカーの3人だけ,となっている。
だが,管理人は当初,この意見に納得できずにいた。グローヴァー・ワシントンJr.とデヴィッド・サンボーンは分かるが,マイケル・ブレッカー? マイケル・ブレッカーより“個性的な音”を持つサックス奏者は五万といる! 長らくそう思っていた。
しかしあるCDとの出会いによって,ケニー・Gの見解の正しさを悟る時がやって来た。そのCDこそ『TIME IS OF THE ESSENCE』(以下『タイム・イズ・オブ・ジ・エッセンス』)!
『タイム・イズ・オブ・ジ・エッセンス』は,なにかと“話題性”のあるCDであった。
プレス・リリースから引用すると「ミレニアム(千年期)の最後に50歳になったマイケルが,半世紀の生涯を総括する」「そこで『タイム・イズ・オブ・ジ・エッセンス』=時間(タイム)が肝心なんだ」という“熱の入れよう”であった。
また管理人のようなメセニー・フリークにとっては“盟友”パット・メセニーの全編参加! ただそれだけで“即買い”であった。
いや,最大の収穫とされたのは,オルガン奏者=ラリー・ゴールディングス! 確かにラリー・ゴールディングスの名演が,ベースレス・カルテットを機能させている。そう。最大の“功労者”はラリー・ゴールディングスであろう。
NO! 『タイム・イズ・オブ・ジ・エッセンス』最大のセールス・ポイントは,3人の異なるドラマーとの共演であった。マイケル・ブレッカー+パット・メセニー+ラリー・ゴールディングスのトリオに,エルヴィン・ジョーンズ,ジェフ・“ティン”・ワッツ,ビル・スチュアートという“超豪華”ドラマー3人組みが,トラック毎に“絡んで”みせるのだ!
肝心の音の仕上がりも“話題先行”を打ち消すに十分な「スイングジャーナル誌選定ゴールドディスク」受賞の“折紙付き”! 真にクリエイティブで素晴らしい出来である。気に入った! マイケル・ブレッカーのテナー・サックスが気に入った! 発売当時『タイム・イズ・オブ・ジ・エッセンス』が管理人のCDプレーヤーに「常駐」していた日々を思い出す。
「どのような編成でも,バンドにとって一番重要なのはドラムなんだ」。こちらはパット・メセニーの談話であるが,この言葉が真実であるならば『タイム・イズ・オブ・ジ・エッセンス』ほど“エキサイティング”なCDはない。そしてパット・メセニーのこの言葉は至言であるに違いない。
確実にトラック毎に,ドラマー毎に,同じバンドとは思えない“化学変化”が生じている。しかしその中にあって,いつも音楽の中心にはマイケル・ブレッカーがいる。マイケル・ブレッカーがマイケル・ブレッカーらしく“威風堂々”と主役を張っている!
ケニー・Gが言いたかったのはこのことであった。妙に一人で納得した。「目からウロコ」の初体験。そう。今なら胸を張って公言できる! マイケル・ブレッカーは“自分の音”を持つ,素晴らしいジャズメンである!
ただし,もう“生”マイケル・ブレッカーを拝聴することは“かなわぬ夢”となりました。訃報です。マイケル・ブレッカー氏は昨日(2007年1月13日),死の眠りにつかれました。ここに謹んで哀悼の意を表します。
(1999年録音/MVCI-24017)
この記事へのコメント
1. Posted by BLUE LIFE 2007年01月15日 20:11
ご冥福をお祈りします。エリック・クラプトンやマイケル・フランクスのアルバム聴いててアレ?と思うとブレッカーのソロでした。このアルバムはルネッサンス・マンが好きです。
2. Posted by セラビー 2007年01月15日 21:31
BLUE LIFEさん,コメントありがとうございます♪
そうそう。私にも同じ経験があります。マイケルは「ノンジャンル」のプロでしたね。
そうそう。私にも同じ経験があります。マイケルは「ノンジャンル」のプロでしたね。
3. Posted by Oz Fritz 2007年01月16日 17:49
世の中に音楽好きと自称する人は数えきれない程いるが、あえてその真意を問うと、このような感覚で音楽を解釈している人もいるんだなぁ。
ビール瓶の口に息を吹き込んで音を出している訳じゃないから、楽器は物ではないよ。
作り手の指向と耳によって、物質を楽器に仕上げているのです。
4. Posted by セラビー 2007年01月16日 19:00
Oz Fritzさん,コメントありがとうございます♪
私は楽器はジャズメンにとっての「道具」。伝えたい何かを表現するための「手段」に過ぎないと思っています。
マイルス・デイビスがマーカス・ミラーについて「オレがベースを弾いたと同じようにプレイするヤツ」と語った通りでは?
私の関心はあくまでも,そのミュージシャンの中身! 内にある“魂の音楽”であって,個性的な音色を出しているかは“二の次”です。
Oz Fritzさんのご指摘はごもっともです。厳密には演奏する人によって楽器の鳴り方は全て異なっています。でもほんの一音聴いただけで誰の音だか判断できるのかなぁ?
私は楽器はジャズメンにとっての「道具」。伝えたい何かを表現するための「手段」に過ぎないと思っています。
マイルス・デイビスがマーカス・ミラーについて「オレがベースを弾いたと同じようにプレイするヤツ」と語った通りでは?
私の関心はあくまでも,そのミュージシャンの中身! 内にある“魂の音楽”であって,個性的な音色を出しているかは“二の次”です。
Oz Fritzさんのご指摘はごもっともです。厳密には演奏する人によって楽器の鳴り方は全て異なっています。でもほんの一音聴いただけで誰の音だか判断できるのかなぁ?
5. Posted by ハリー 2007年01月16日 22:34
私も実はマイケルはあまり個性的ではないと今日までおもっておりました。
ブレッカーブラザーズ、ステップス・アヘッドから聴きなおしてみます。
57歳は若すぎる。ご冥福を祈ります。
ブレッカーブラザーズ、ステップス・アヘッドから聴きなおしてみます。
57歳は若すぎる。ご冥福を祈ります。
6. Posted by セラビー 2007年01月16日 23:36
ハリーさん,コメントありがとうございます♪
やっぱりそう思われましたか? そうでしたら『タイム・イズ・オブ・ジ・エッセンス』から始めるのが,てっとり早くてお奨めです。
私のマイケル“一人追悼式”はまだ続いております。
やっぱりそう思われましたか? そうでしたら『タイム・イズ・オブ・ジ・エッセンス』から始めるのが,てっとり早くてお奨めです。
私のマイケル“一人追悼式”はまだ続いております。
7. Posted by まさこ 2007年01月17日 00:45
↑↑ 私はピアノが好きでよく聴きますが、一音でピアニストを聴き分けるなど至難の業です。見分けのつきようがありません。よく聴くと、モンクかな、パウエルかな〜、ぐらいなものです。
私も楽器に「魂込める」のは、楽器職人じゃなくて、ミュージシャンだと思います。。。
8. Posted by セラビー 2007年01月17日 01:19
まさこさん,コメントありがとうございます♪
応援? 別に対決しているつもりはありませんが…。
コメントを読んで「仏作って魂入れず」を思い出しました。ついでに,学生時分,JAZZの「ブラインド・テスト」なるもので遊んだことを思い出しました。ソニー・ロリンズとの共演者を当てるゲームでしたが,これがなかなか当たらなくて…。
私もモンクとパウエルなら一音で当てる自信はありますが,いや,自信喪失?
「ブラインド・テスト」の受験などもうしません。マイケル・ブレッカーなら満点とれそうですけど…。
応援? 別に対決しているつもりはありませんが…。
コメントを読んで「仏作って魂入れず」を思い出しました。ついでに,学生時分,JAZZの「ブラインド・テスト」なるもので遊んだことを思い出しました。ソニー・ロリンズとの共演者を当てるゲームでしたが,これがなかなか当たらなくて…。
私もモンクとパウエルなら一音で当てる自信はありますが,いや,自信喪失?
「ブラインド・テスト」の受験などもうしません。マイケル・ブレッカーなら満点とれそうですけど…。
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