2007年01月10日

アキコ・グレース / 東京4

アナログレコード

 親は子供の誕生前からあれこれと名前を思案する。子供でさえペットの名付け親となるに際し熟考する。新商品の開発会議において最も時間を要するのがネーミング会議である。
 そう。名前って重要! 重要であるからこそ,多くの時間と労力をかけて,名前について熟慮を重ねるのである。

 さて,アキコ・グレースである。このアーティスト名に,あの日本人離れしたルックスとくれば,もしやハーフ? と思われるかもしれないが,アキコ・グレースとは芸名! 彼女は歴とした純・日本人。本名:岩瀬晶子さんである。
 この芸名には意味がある! メイド・イン・ジャパンの「最高傑作」としての鮮烈デビュー! この芸名は“世界進出”を見据えての“戦略”である! そう。アキコ・グレースの眼前には,デビュー前にして“世界への扉”がクッキリと見えていた。

 アキコ・グレース程の“高学歴ジャズメン”は世界的に見ても,そうザラにはいない。
 なんてったって芸大&バークリーのW首席卒業! バークリー在学中にも2年連続の学生代表演奏。バークリー・パフォーマンス・センターでの演奏という名誉を得た。
 卒業後も快進撃は続く! SAVOY初の日本人ジャズメン! ジャズ史上初,それもデビュー1年目にして,スイングジャーナル選定「ゴールドディスク」賞を2作連続&年間2枚獲得という離れ技! これは異例中の異例。大事件であった。
 スイングジャーナル関連でいえば「ニュースター賞」「日本ジャズ賞」を“当然のごとく”受賞したし,ミュージック・ペンクラブ賞ポピュラー部門・コンサート・パフォーマンス賞や文化庁主催芸術祭優秀賞(レコード部門)といったビックな受賞歴も多数ある。
 ここら辺はさらりと書き終えることにするが,よ〜く考えてみてほしい。これらの賞の“重み”はハンパではない。

 普段,アンチ・ジャズ・ジャーナリズムの管理人にここまで書かせたジャズメンはアキコ・グレースが初めてである。それだけでもアキコ・グレースの凄さが分かるってものでしょ? 「おぬしやるな〜」である。( ← って,そんなお前は一体何なんだって話ですけどね。全く説得力などありませぬ。いつも高飛車ですみません。)
 そう。アキコ・グレースジャズ・ピアノの前では,この類の“うんちく”など一切不要である。きっと一音聴いただけで,オッ,と思うに違いない。
 百戦錬磨の“通”なオヤジたちの耳をKOしてきた,ジャズの本場でも“超一流”として渡り歩ける程の実力者なのである。

 さてさて,話を戻そう。“世界進出”を見据えて,芸名デビューを果たしたアキコ・グレースが,実際に世界へと照準を合わせ始めたのが『TOKYO』(以下『東京』)の発表からである。
 デビューから続いたNY3部作で日本ジャズ界を“完全制覇”した勢いそのままに,と思いきや,大胆にも路線変更! これがアキコ・グレースの予想に反して不評を買った。この『東京』での失敗が響いて,過去の偉大な実績さえも“吹き飛ばされた”感さえある。正に株価の大暴落である。

 しかし管理人は『東京』は悪いとは思わない。失敗作だとは思わない。
 残念ながら最高傑作と呼ぶことはできないが,聴き所によっては過去のどのCDにも増して,アキコ・グレースの“個性”が豊かに表現されている,と思うからだ。

 アキコ・グレースの個性は“陰り”である! “陽の権化”ピーターソン派を自認するアキコ・グレースとしては意外に思えるが,彼女のピアノには“陰り”がある。“閉塞感”を感じると同時に“破壊の快感”が複雑に入り混じっている。
 表面的にはスマートでオシャレで洗練された“CITY系”であるが,華やかな「勝ち組」生活は多くの犠牲の上に成り立っている。
 創作活動=命を削る“ユンケル漬け”の毎日である。そう。“高学歴ジャズメン”の宿命である,結果を求められ続ける大きなストレスは“キャリア・ウーマン”的な“陰り”である。
 結果のためには,自分のやりたいスタイルを捨て,時流に乗っかる必要がある。ここがジャズメンにとって最大の“ジレンマ”であろう。
 この“ジレンマ”をアキコ・グレースは,デビュー前から抱えてしまっていた。売れて当然という,目には見えないプレッシャー,がのしかかっていた。それが無意識のうちに“陰り”という個性を作り上げてしまったのではなかろうか? 本当のアキコ・グレースとは「のだめ」なのかもしれない。

 “プライド,嫉妬,女の執念”が聴こえてきそうな“反骨精神”丸出しのピアノ・タッチが,男性では“制御不能”な強烈なエネルギーを発してくる! この“怨念の力”が日々の“閉塞感”を突き破って前進する! ここに“破壊の快感”が宿っている。
 ← おっと,当然ながらこれはアキコ・グレースジャズ・ピアノの特徴について述べているのであって,実際の彼女がそんな女性だと言うことでは決してありませんので,誤解なさらずに…。

 その点『東京』は,これまでの“しがらみ”や“ジレンマ”から全て解放されて,本当にアキコ・グレースがやってみたかったジャズ・ピアノの世界がストレートに表現されている。これまでの溜まりに溜まった“うっぷん”を全て“ぶちまけた”感がある。
 それゆえ,これまで表面に表われることの少なかった,しかし確実に底流に渦巻いていた“陰り”が,俄然上昇している! これは『東京』のテーマである“和”の追求と関連がある。
 そう。アキコ・グレースの原点である“和=自分のルーツ”を探す旅が「パンドラの箱」を解き放つ引き金となった! もうこの「パンドラの箱」は閉じられない。芸名に込められた“世界制覇”を完遂するその時まで…。

(2004年録音/COCB-53128)

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この記事へのコメント
1. Posted by BLUE LIFE    2007年01月11日 04:39
なんだか聴いてみたくなりました〜。
2. Posted by セラビー    2007年01月11日 07:53
BLUE LIFEさん,コメントありがとうございます♪
アキコ・グレースを聴かずして「J−JAZZ語るべからず」ですよ。
3. Posted by 梅太郎    2007年01月12日 21:47
 初めまして。だいぶ遅れてしまいましたが読者申請ありがとうございます^^
 ジャズは、詳しくありませんが、またちょくちょくお邪魔して勉強させてもらいます。今後ともよろしくお願いします
4. Posted by まる    2007年01月12日 23:51
5 はじめまして!「にきび情報ここにあり!」管理人のまると申します。この度は読者登録をどうもありがとうございました。とっても嬉しいです今後とも末永くどうぞよろしくお願い申し上げます。アキコ・グレースさんって純日本人の方だったんですかびっくりしましたあの歌唱力はすばらしいですよね〜私も大好きですではでは簡単ですがお礼とご挨拶まで。また遊びに来させていただきます^^。まる
5. Posted by セラビー    2007年01月13日 00:05
梅太郎さん,まるさん,コメントありがとうございます♪
JAZZ/FUSIONの名盤をお探しの際には,また当ブログにお立ち寄りくださいね。
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