アナログレコード

 またも「どこかに在りそうで,でもどこにも見つからない」自作格言シリーズを…。
 「言葉だけでは感動しない。言葉で伝えようとする“必死な思い”が,言葉に“魂を吹き込み”感動させるのだ」。
 そう。「熱意こそ話の命」なのである。同じ言葉を話そうとも,熱意のない話し手の言葉に感銘を受けることはない。それがどんなに洗練された,選びに選び抜かれた言葉であったとしても…。

 音楽も同様である。殊にジャズ。全く同じトラック,同じフレーズを耳にした時,感動することもあれば,そうでないこともある。伝わってくる音もあれば,そうでない音もあるのである。
 たとえ泥臭くとも“これだけはどうしても伝えたい”とする“たどたどしい”アドリブには,感動を与えるエネルギーがある。
 一方,美辞麗句を並べあげた超高速・スーパーテクのアドリブでも,そこに“魂”が欠けているなら,単なる騒音でしかない。
 そう。「熱意こそジャズの命」は至言だと思っている。

 管理人は,そんな“汗だく”ジャズメンが大好きだ。そして“汗だく”ジャズメンの代表格と言えば,ジャッキー・マクリーンである。
 ジャッキー・マクリーンは歴としたジャズ・ジャイアントの一人であるが,正直,スーパー・スターとは呼べない。冷静に彼のアドリブを分析すると,世評通り「B級」の烙印を押してしまうはずだ。

 しかし,しかしである。ジャッキー・マクリーンアドリブには,具体的に数字化できない“+α”がある。
 この“+α”とは“実直さ”! 決して語り口は饒舌ではないのだが,自分の感情をストレートにぶつけてくるのだ。
 それを何度も何度もクドイくらいにぶつけてくる。その一つ一つは弱くとも,正に「雨垂れ石を穿つ」である。ついにはジャッキー・マクリーンの“熱意”あるいは“信念”に押し倒され,感動の扉がこじ開けられてしまうのだ。
 この“信念に根ざす実直さ”が「下手の横好き」→「好きこそ物の上手なれ」を経由して,ジャッキー・マクリーンジャズ・ジャイアントへと押し上げていった原動力であろう。

 さて,ジャッキー・マクリーンアドリブからは「真にジャズ好きなんだなぁ」と分かるフレーズが飛び出してくる。何の脈略も無いところから,突然,噴火してくる辺りが,所謂「B級」の証しなのであるが,ここで言う「B級」とは“誉め言葉”である。
 有名シェフが調理する,高級食材盛りだくさんのレストランは当然おいしい。誰が食べてもおいしいに決まっている。これはA級グルメ!
 しかしマニアなグルメたちは,路地裏にある“隠れ家”的な名店を“こよなく愛する”のではなかろうか? その店の味を評価するのは,常連のマニアだけかもしれないが,高級レストランでは味わえない“旨味+特有のクセ”を求めて,つい足が向いてしまうのである。そう。“止められない止まらない”B級グルメの魅力!

 『4, 5 AND 6』(以下『4, 5 & 6』)は,ジャッキー・マクリーンの“B級の旨味”が“たっぷり詰まった”名盤である。
 タイトルの『4, 5 & 6』は,それぞれ「カルテットクインテットセクステット」を表わしている。このCDは,3つの異なる編成と相対したがゆえに,ジャッキー・マクリーンの個性が“埋もれるどころか逆に浮き彫りにされていて”彼の本質を掴みやすい。
 天才なら“簡単に”吹ききってしまうであろうアドリブを,ジャッキー・マクリーンは,たとえ口が重かろうとも“ハスキーボイス”に魂を込めて,一生懸命絞り出す! “重み”漂う一言なのである!
 そう。『4, 5 & 6』には,自分の言葉で“必死に”語ろうとするジャッキー・マクリーンの魂=「彼そのもの」が実物大で記録されている。

 全てのジャズ・ファンに『4, 5 & 6』を,時間をかけて“聴き込む”ことをお奨めしたい。
 この“マクリーン節”を楽しめるようになりさえすれば,他の「B級」ジャズメン“特有の味”をも愛せるようになるのだから…。

(1956年録音/VICJ-23514)

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