『’ROUND ABOUT MIDNIGHT』の3曲目は【ALL OF YOU】(以下【オール・オブ・ユー】)。

 【オール・オブ・ユー】は,軽快で“おちゃめな”マイルス・デイビスを楽しむのにもってこい。
 “強面”で“シリアス”なマイルス・デイビスしか知らない人には,マイルス・デイビスの持つ“コミカルな”一面に触れて驚かれることと思う。

 元来,高音域担当のトランペットには“闇夜を切り裂く”と言った表現がピッタリだし“笑う”トランペッターなど薄気味悪い。
 実際,マイルス・デイビスという人には,その偉大な実績からもジャズ界の“ドン”“親分”のイメージが付きまとうし,あの“しゃがれ声”を聞くとホンマモンかと疑ってしまう。
 そう。“笑い”とは対極にある絶対的な存在感! マイルス・デイビスは常に高倉健や菅原文太の位置にいる。

 しかし【オール・オブ・ユー】でのマイルス・デイビストランペットは実に明るい。はじけるスイング感さえ感じさせてくれる。今にも“踊り出しそうな”マイルス・デイビスがここにいる!

 フィーリー・ジョー・ジョーンズの“裏拍子”を刻みまくるドラミングと,レッド・ガーランドの“カクテル・ピアノ”がマイルス・デイビスを“陽気に”乗せてしまった。
 特に3分50秒からのレッド・ガーランドピアノソロは,ポール・チェンバースベースと見事に絡みつきコロコロと…。

 オープニングのテーマではまだ“ハニカミ”状態にあったのが,レッド・ガーランドソロ直後から始まるエンディングのテーマでは,例えば6分7秒からしばらく続く“音の途切れ具合”など,完全に“スイングのそれ”へと変貌している。このテイストは“笑い”のトランペットそのものであろう。

 たまには“陽気でハッピー”なマイルス・デイビスも悪くない。
 やっぱりマイルス・デイビス自身,根っからのジャズファンなんだなぁ。
 強面キャラを忘れ,つい乗せられてしまった“おちゃめな”マイルス・デイビスに親近感を覚えてしまう。

 
MILES DAVIS : Trumpet
JOHN COLTRANE : Tenor Sax
RED GARLAND : Piano
PAUL CHAMBERS : Bass
PHILLY JOE JONES : Drums

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'ROUND ABOUT MIDNIGHT
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出エジプト記4章 モーセは自分は適任でないと感じる
チャーリー・ヘイデン & ハンク・ジョーンズ 『スピリチュアル