GROOVY-1 “ジャズ通”もマニアの域に差し掛かると,気分はすっかり「ジャズ批評家」である。いっぱしにダメ出しなんぞしたくなる。
 しかし不用意なダメ出しにはご注意を! 特に初心者にありがちなのがジャズ雑誌の“丸かじり”! 一瞬で,ジャズをなんにも分かっていない“トウシロウ”として見下されてしまいます。

 別にジャズ批評に正解も不正解もないのだから,どうせ批評するのなら(これが一番難しいのであるが)その人自身が感じた“オリジナルの言葉”で正々堂々と批評すれば良い。たとえそれが管理人とは正反対の意見であろうと一向に構わない。本音トークである限り,ジャズへの見識を深める貴重な機会だと考えるからだ。
 管理人も好評・不評に関わらず“自分の言葉で語る”ことだけを肝に銘じ,早25年。ハッピー・ジャズ批評・ライフである。

 さて,そんな“他人の意見丸飲み”なダメ出しも,批評した当人がマニアから“侮られる”だけなら,かわいいもの。“身から出たサビ”で落ち着きもするが,みんながみんなジャズ・ジャーナリズムに乗せられて,ダメ出しを連呼するとなると…。
 おおこわ。“嘘から出たまこと”になってしまう。名盤が駄盤にさえなってしまう。

 そんなジャズメンの実例がある。“ピンボケ・トウシロウ”たちから,謂われのないダメ出しを喰らい続けて,いつのまにか世間の評価を落としてしまったのが,ピアノレッド・ガーランドではなかろうか?

 レッド・ガーランドの経歴は真にまばゆい。なんと言っても,あのマイルス・バンド出身のピアニストなのである。にもかかわらず,なぜこんなにもレッド・ガーランドへの評価が低いのだろう? 
 それはレッド・ガーランドの持つ“分かりやすさ”にあるのかもしれない。“難解なものを評価し分かりやすいものは貶める”とする,日本人にありがちな世評である。

 勿論,マニアでないと楽しめないジャズも存在する。しかしそれとこれとは話は別。ジャズメンの評価とは切り離して考えるべきであろう。あくまでもそっちがそうくるのなら,こちらにも考えがある。( ← おいおい勝手に対決かよ )

 真に実力のある人の話って,分かりやすいものですよね? 専門用語の羅列なしでも一発で理解できちゃうような…。単純に「分かりやすい=子供向け=レベルの低さ」と履き違えられては困ります。
 それでもご理解頂けぬ読者には『GROOVY』(以下『グルーヴィー』)! 『グルーヴィー』は,そんなジャズの“分かりやすい解説書”である。やはり世間では“佳作”扱いのことが多いのですが…。

GROOVY-2 『グルーヴィー』は確かに初心者にも分かりやすい。“パウエル派”と呼ばれているにもかかわらず,レッド・ガーランドの演奏には,派手さはないし,今となってはオーソドックスな演奏である。
 これには「シングルトーン+ブロックコード」と言う,レッド・ガーランド独特の演奏手法が影響している。

 加えて,レッド・ガーランドジャズを“噛み砕いて”語ってくれる。つまり十分に“要約”された“手数の少ない”アドリブなので,耳慣れない初心者でも“楽に”アドリブを追いかけることが出来る。レッド・ガーランドの明快でシンプルなフレーズの連発も“ピンボケ・トウシロウ”増大の一因なのであろう。

 しかし,この絶妙のノリ,スイング感,グルーヴ感はどうだろう。ピアノ・トリオでこんなにもJAZZYなアルバムって,実はそんなにお目にかかることなどできやしない。
 全て承知でやっぱりダメ出しするのなら,それはそれで結構! 結果,ジャズ雑誌と“純粋に”同じ感想を持つ場合も多いことだろう。

 『グルーヴィー』は誰が聴いても,どこからどう聴いても100%のジャズ・アルバム。大勢のジャズ・ファンへ門戸を開いた超名盤。世評の低さは気にとめず,ジャケットでの宣言通り「GO RED GO」である。

 管理人はあくまでも,レッド・ガーランドを「超一流ジャズメン」として支持してまいります。マニアな読者の皆さんは分かって頂けますよね?

 
01. C-JAM BLUES
02. GONE AGAIN
03. WILL YOU STILL BE MINE?
04. WILLOW WEEP FOR ME
05. WHAT CAN I SAY DEAR?
06. HEY NOW

 
RED GARLAND : Piano
PAUL CHAMBERS : Bass
ARTHUR TAYLOR : Drums

(プレスティッジ/PRESTIGE 1957年発売/VICJ-5072)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,内田修)

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