『TIMELESS』の12曲目は【PAVANE】(以下【亡き王女のためのパヴァーヌ】)。


 【亡き王女のためのパヴァーヌ】を取り上げるジャズメンは皆一様に“繊細な美の追究”に向かう。百戦錬磨のジャズメンでさえ,ついつい創作意欲を駆り立てられるだから,ラヴェルの作曲能力はさすがである。
 
 Sayaも,しっとりと静かなトーンで,耳元でささやくかのように,ピアノで語りかけている。実にソフト・タッチ。正に女性ピアニスト特有のエッセンス! これが魅力的だ!
 管理人も一聴した後,てっきりSayaも“繊細な美の追究”にのめり込んでしまった,と思い込んでしまったものである。

 しかし【亡き王女のためのパヴァーヌ】のハイライトは,お馴染みのテーマを奏でた直後,2分30秒から突然始まるSayaアドリブ! ここでのアドリブがそれまでの曲の表情・雰囲気を一変させている!
 一瞬の“硬質な”ピアノ・タッチを持って,それまでの張りつめた空気感が引き裂かれる。一気に“ジャズ・ピアニストSayaとしての感情が吐露されている。同じフレーズの“あの手この手の表現”が,聴き手の感情さえも揺さぶってくる。
 そう。Sayaの真の狙いは「こっち」! “クール・ビューティ”とはカムフラージュの“ベリー・ホット”。ほらっ,優雅に泳ぐ白鳥も水面下ではバタ足している。一生懸命もがいている。荒川静香の“クール”な演技も屋台骨は“ベリー・ホット”なのである。

 アドリブを終え“正気に戻った”4分0秒からは,何事もなかったかのごとく“涼しい”顔して“繊細な美の追求”に突き進む。そこが見事なコントラスト! 完全なSayaワールド!

SAYA : Piano
JASON LEWIS : Drums
JOHN SHIFFLETT : Bass