アナログレコード

 音楽の世界にバンドの解散やメンバーの脱退はツキモノ。終了直前のCDを聴くと「あぁ,やっぱりな」と,もろ音に出ていることも少なくない。しかし中には「何でこれが解散なの? 今までで最高の出来なのに」と思えるものもある。
 ウェザー・リポートの最終作である『THIS IS THIS』(以下『ジス・イズ・ジズ』)は(彼らの最高傑作かどうかはおいといて)正に後者である。
 家庭の事情に首をはさむわけにはいかないが,いつ聴き返しても,もうウェザー・リポートの新作を聴けないことが残念でならない。それ程,充実した内容,今後に期待を抱かせる出来なのである。
 
 ウェザー・リポートの一押しとして『ジス・イズ・ジズ』を挙げる人を管理人は未だ知らない。しかしこのCDは後期ウェザー・リポートを語る上で外せない。
 ジャコ・パストリアス脱退後のウェザー・リポートは確かに低迷していた。しかし多くの試行錯誤を重ねた結果,彼ら特有の“瑞々しいサウンド”が戻ってきた。後期ウェザー・リポートを否定する人もいるが,それはこのCDを鼻から聴いていないからではないのか? 完全に全盛期のパワーを取り戻している。

 さて『ジス・イズ・ジズ』の触れ込みの一つは“ジョー・ザビヌルの新グループ(ウェザー・アップデイト)のデビュー作”であり“シューター色の追放”であった。
 それまで管理人は「自分はウェイン・ショーターが好きだからウェザー・リポートも好きなんだ」と思っていた。仮にそうであれば,ウェイン・ショーターがサイドメン的に扱われるこのCDを評価しなかったことだろう。
 しかし『ジス・イズ・ジズ』が発する音は最盛期のウェザー・リポートの音に相違ない。そう。ウェザー・リポートはずっと“ザビヌル主導”のコンボだったのだ。
 
 誤解があっては困るが,これはウェイン・シューターがいけなかった,という意味では決してない。事実ウェイン・ショーターの抜けた,新・ウェザー・リポートは失敗した。
 ここで何が言いたいのか? それは双頭コンボとしてのウェザー・リポートは終わった,という意味だ。

 ジャコ・パストリアス在籍時のウェザー・リポートの成功は,バンドとしての絶妙のバランス感覚にあった。しかしジャコ脱退によりそのバランスが崩れた。そして『ジス・イズ・ジズ』で彼らは見事にバンドとして再生した。しかし再構築して出来上がった姿・形は,以前のような双頭コンボではなく,ジョー・ザビヌルのワンマン・バンドとなったのだ。
 ショーター自身も吹っ切れたものがあったのだろう。ザビヌルより与えられた短いパートで最高のソロを聴かせている。何ともハッピーで,皮肉な結末である。

(1986年録音/32DP470)

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