T.K.-1 “Tetsuya Komuro”ではない,もう一人のT.K.“たけ”こと,伊東たけし
 伊東たけしの3枚目のソロ・アルバムは,タイトルもズバリ『T.K.』。

 伊東たけしに限らずJ−フュージョンの人気グループのメンバーは必ずと言って良い程,ソロ・アルバムを制作する。音楽界には一般人の知らない“法則”とか“公式”とか呼ばれるものが存在する。
 別にグッド・ミュージックが多数制作されるのは大歓迎なのだから,ここで深く突っ込んで“その公式を解明する”とか意気込むつもりはさらさらない。しかし気になるのが“人気グループのメンバー”というキーワードである。
 
 人気グループであれば,それなりにCDであれライブであれ,発表の場は多いはずである。なのになぜソロ・アルバムなのだろう?
 答えは各個人によって異なり,それこそ多種多様にあるのだろう。でも,そのグループのファンなら純粋に“グループの成長”に力を傾けてほしい,と願うのが人情と言うものではなかろうか?

 さて,伊東たけしである。彼こそスターだ! J−フュージョンのある意味“顔”である。
 伊東たけし“主演”「SUNTORY WHITE」の例のCMで,ザ・スクェアを,そしてJ−フュージョンを一気にメジャーへと押し上げた!
 乱暴な言い方だが「もう伊東さんのご自由に。どうぞ好きなことを好きなだけ」の域にいるスーパー・スター! ← あっ,そうか。だからソロ・アルバムなのね。自己完結のノリツッコミ。チャンチャン!

 さてさて,ここからは真面目に?『T.K.』について語ってみよう。『T.K.』のサウンド・メイクは当時のザ・スクェアとは全くの異質である。
 本当に伊東たけしがソロとして“やりたい放題”やったのであろう。ザ・スクェアの延長線上を期待していた管理人も,他の多くのファンと同様,すっかり“肩すかし”を食わされた口である。

 しかし伊東たけし本人も,気付かずして“肩すかし”を食らっているように思えてしまう。
 超辛口で申し訳ないが『T.K.』は,伊東たけしを“踏み台”にした,プロデューサー=ドッペルギャンガー2人のための「実験作」に仕上がっているのではなかろうか?

T.K.-2 ズバリ『T.K.』は,伊東たけしのレッテルが貼られた,実質「ドッペルギャンガーを聴くための」アルバムに聴こえてならない。
 せっかくスクェアから離れたというのにドッペルギャンガーに入団したってどういうこと? ニューヨークの最先端サウンドの隅っこで“TK節”が意図的にラジオで流されている構図? アルト・サックスの音量が小さく,意識的に奥に引っ込んでしまった感じ?
 前作『エル・セヴン』もドッペルギャンガーのプロデュースだったが『エル・セヴン』の何倍にもドッペルギャンガーのパワーだけが「増幅」されている。

 『T.K.』での伊東たけしが全く目立っていない。アピールできていない。伊東たけし自慢のアルト・サックスがバック・サウンドに負けている。完全にドッペルギャンガーの音の中に“埋もれて”いる。聴き応えを感じない駄盤である。
← 伊東たけしを熱烈に愛するがゆえの“愛のムチ”です。伊東さん,伊東たけしファンの皆さん,気に障ったかもしれませんが,どうかお許しを〜。

 
01. COWBELL
02. FAMOUS
03. THIS IS THE NIGHT
04. UPTOWN SATURDAY NIGHT
05. PLACEBO
06. ALWAYS TOGETHER
07. BOUNCE BACK
08. COLOUR OF LIFE

 
TAKESHI ITOH : Alto Saxophone
DAVID FRANK : Keyboards, Synthesizers, Drum Machine, Programming
JEFF LORBER : Piano, Synthesizer Solo
PHILIPPE SAISSE : Keyboards, Synthesizers, Programming
IRA SIEGEL : Guitar
NICKY MOROCH : Guitar Samples
CARL JAMES : Bass
DON ALIAS : Percussion
LANI GROVES : Radio Broadcast, Lead Vocals, Background Vocals, Additional Vocals
RANDY FREDRIX : Lead Vocals, Additional Vocals
MARC COHN : Lead Vocals
JIMMIE TUNNEL : Lead Vocals, Background Vocals
CRAB ROBINSON : Lead Vocals
DEBBIE COOPER : Lead Vocals, Background Vocals
RICK BRENNAN : Lead Vocals, Background Vocals
CURTIS KING : Lead Vocals, Background Vocals, Additional Vocals
LISA FISCHER : Background Vocals
YOLANDA LEE : Background Vocals
MIC MURPHY : Background Vocals

(CBSソニー/CBS/SONY 1988年発売/32DH 5129)

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