アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞 1998年度(第32回)

 「スイングジャーナル」誌が,レコード会社各社の自薦ノミネート作品を基にして,国内で該当年度中に発売されたCDLPビデオを対象に同誌委託の「ジャズ・ディスク大賞選考委員」によって選出される,日本ジャズ界に最も貢献した作品に贈られる「ジャズ・ディスク大賞」。

 今回は1998年度(第32回)の発表です。

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ガーシュウィン・ワールド★【金賞】.ガーシュウィン・ワールド
ハービー・ハンコック


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トゥー・ブロックス・フロム・ジ・エッジ★【銀賞】.トゥー・ブロックス・フロム・ジ・エッジ
マイケル・ブレッカー


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ミーツ・ザ・ビートルズ★【ボーカル賞(海外)】.ミーツ・ザ・ビートルズ
ジョン・ピザレリ


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イフ・イッツ・ラヴ★【ボーカル賞(国内)】.イフ・イッツ・ラブ
ケイコ・リー


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ディア・オスカー (オスカー・ピーターソンに捧ぐ)★【日本ジャズ賞】.ディア・オスカー(オスカー・ピーターソンに捧ぐ)小曽根真


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フュエゴ(紙ジャケット仕様)★【編集企画賞】.ブルーノート・24ビット・バイ・RVGシリーズ


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ウォーキン・ダウン・レキシントン★【製作企画賞】.ウォーキン・ダウン・レキシントン
大阪昌彦


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パナソニック サウンドエッセイ 名曲物語 [DVD]★【最優秀ジャズ・ビデオ賞】.“パナソニック サウンドエッセイ 名曲物語”シリーズ(Vol.5〜10)


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ペイトンズ・プレイス★【最優秀録音賞(ニューレコーディング)】.ペイトンズ・プレイス / ニコラス・ペイトン


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アロング・ケイム・ジョン (紙ジャケット仕様)★【最優秀録音賞(リマスタリング)】.ブルーノート・24ビット・バイ・RVGシリーズ


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ソングス〜アート・オブ・ザ・トリオ Vol.3★【ニュー・スター賞】.ソングス〜アート・オブ・ザ・トリオ Vol.3ブラッド・メルドー


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 ハービー・ハンコックの『ガーシュウィン・ワールド』が【金賞】受賞。

 思えばハービー・ハンコックカヴァー路線に進んだのは『ガーシュウィン・ワールド』の成功体験が要因としてあると思っている。
 『ザ・ニュー・スタンダード』は本当に素晴らしかった。手放しで喜んだ。でっ『ザ・ニュー・スタンダード』の「二匹目のドジョウ」として登場した『ガーシュウィン・ワールド』がまたしても成功している。

 『ガーシュウィン・ワールド』の真実とはガーシュウィンの原曲をモチーフとした,完全なるハービー・ハンコックオリジナル
 オルフェウス室内管弦楽団というクラシック畑のストリングス効果絶大でロマンティック。雰囲気は確かにガーシュウィンの“残り香”がプンプン。

 個人的にはハービー・ハンコック流,60年代のマイルス・デイビスクインテットの再現のようで,美しもスリリングなインプロヴィゼーションにやられてしまう。

 一般的に続編は失敗するものなのだろうが,リメイクをやらせたら“天下無双”なハービー・ハンコックの手に掛かれば『ザ・ニュー・スタンダード』→『ガーシュウィン・ワールド』への転換も問題なし。

 その後も「三匹目のドジョウ」を獲りにいき,カヴァー路線で名盤を量産しつつ,例のグラミー最優秀アルバム受賞作『リヴァー〜ジョニ・ミッチェルへのオマージュ』で高みへと達するハービー・ハンコックにとってのターニング・ポイントが『ガーシュウィン・ワールド』なのだと思う。

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T−スクェア / CITY COASTER5

CITY COASTER-1 理由があって(福岡市内での引っ越しと霧島の別荘の引っ越しがダブルで重なり不動産4件の契約と解約もろもろで)発売日から3日後に『CITY COASTER』を聴くことになった。
 毎年の新譜をほぼフラゲして聴き続けてきたスクェア・ファンとしては,遅れを取り戻すべく?喰い気味で拝聴した久々のアルバムとなった。ここ数日は自分のことをする暇などなくジャズフュージョンも(そしてラジオも)聴く時間がなかったことも重なって,一心に拝聴したアルバムとなった。

 何を書きたいのかと言うと『CITY COASTER』でスクェア熱が爆発したということ。このウォーッと来る感覚は「河野坂東時代」に入ってからは『33(THIRTY−THREE)』でWピースした時か『NINE STORIES』でメロメロになった時以来の感覚がある。2週目にして『CITY COASTER』全曲を何度も聴きたいと思うようになった。

 だから名盤CITY COASTER批評はクラクラさせてください。フラフラさせてください。書きたいことが次々に浮かんでは消えていくので,大絶賛の備忘録的な感じで…。

 そもそも『REBIRTH』の劇的な評価UPについて書かないと始まらない。『REBIRTH批評を書いた時点では『REBIRTH』の出来は「まぁまぁ」であった。『REBIRTH』の長所よりも欠点にどうしても目が行ってしまう。そんなアルバムだった。
 だけど1年間,事あるごとに『REBIRTH』を聴きたくなってしまう症状に襲われ,坂東慧の“天才”に改めて気付いてしまったんだよなぁ。これが!

 だから『CITY COASTER』を聴いた1巡目も,1巡目なのに安藤正容ギターでもなく,伊東たけしサックスでもなく,河野啓三キーボードでもなく,坂東慧ドラミングに聴き惚れてしまった。
 いいや,POPな楽曲作りの才に惚れ込んだ。今回も「凄いぞ・名演&凄いぞ・名曲」坂東慧〜!

 上記の『REBIRTH』の流れで書き足します。『CITY COASTER』には伊東たけしEWIがない。これには驚いた。
 『CITY COASTER』にはスペシャル・ゲストとして,トロンボーン湯浅佳代子トランペット山崎千裕が参加した「目指せ! クルセイダーズ」なのが影響しているのだろうが,キッパリEWIを封印したのには驚いた。
( もう一方,ゲスト参加の大御所=パーカッションレニー・カストロ名演もお聴き逃しなく! )

 続けて『REBIRTH』の「バラードなし」の反動なのか『CITY COASTER』にはスロー・ナンバーが3曲目,5曲目,8曲目に配置されている。個人的にはこの3曲が彩る抑制美が『CITY COASTER』の休火山のように思える。← 今週,霧島市へ行った時に霧島連山の硫黄山がまた噴火したらしくて。そんなニュースからの休火山〜。

 そう。休火山があれば活火山がある。『CITY COASTER』の代表曲は3〜5曲目の前後である【CITY COASTER】と【幻想の世界】の2トップ。
 ただし個人的には“神曲”【CITY COASTER】を受けて,地味にジワジワな【FROM NOW ON】が大変気に入りました。スピード感ある懐メロのはずなのに最新のリズムで頭パニック&ウキウキ!

 安藤正容が目指すところの「クルセイダーズ的」なナンバーはラストの【TRAP IT】の1曲のみ。残る楽曲は「目玉の」トロンボーンサックスのアンサンブルためにアレンジされた“スクェア印”のGOGO。
 つまり『CITY COASTER』の真実とは40周年記念盤ではなく,T−スクェア単体としての“極上の”ニュー・アルバムなのである。

CITY COASTER-2 最初に『CITY COASTER』の情報が出てきた時は,30周年の『WONDERFUL DAYS』〜35周年の『SMILE』のような,40周年記念の「T−スクェアスーパーバンド」を期待していたものだから,仙波清彦田中豊雪則竹裕之須藤満宮崎隆睦和泉宏隆の代役に「トロンボーン奏者・オーディション」かよ〜。安藤さんも相当苦しそうだな〜って勝手にイメージしてしまっていた。

 安藤さん。またしてもすみませんでした。「飛車角金銀落ち」だと思った『CITY COASTER』は『WONDERFUL DAYS』と『SMILE』を越えてきました。坂東慧の“天才”が進化しておかげですねっ。

 今日書いておきたいのはこれぐらいだったかなぁ。OH!最後に1点あった。以下,公式フェイスブックからの引用文です。
 「今回のアルバムデザインは遊び心をたくさん詰めた作品となっており,スリーブデザインの中に,今作「CITY COASTER」の世界観を表現すべく,過去作のとあるタイトルとT-SQUAREのロゴが隠れています!!是非探してみてください。隠れタイトルは初回プレス限定の仕様となっておりますので,是非,お早めにご購入ください」。

 でっ,管理人が購入したCDのスリーブケースの上辺に,隠れタイトル『REBIRTH』の文字を発見。これって『CITY COASTER』は『REBIRTH』の続編って意味? 『REBIRTH』以外の「過去作のとあるタイトル」もランダムで書かれているのかな? ファンとしては妙に気になった次第です…。

  DISC 1
  01. City Coaster
  02. From Now On
  03. In My Dreams
  04. Better Than Yesterday
  05. Sleepless Night
  06. 幻想の世界
  07. Trade Wind
  08. Everlasting Dream Part II
  09. Trap It

  DISC 2 DVD
  01. Truth <2016/7/18 Zepp Nagoya>

(オレンジレディ/ORANGE LADY 2018年発売/OLCH 10010〜11)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
★【初回生産限定盤】ボーナスDVD付 2枚組
★【初回生産限定盤】三方背BOX仕様
★音匠仕様レーベルコート

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桑原 あい トリオ・プロジェクト / ラブ・テーマ3

LOVE THEME-1 「桑原あいトリオ・プロジェクト」の真実とは,桑原あいオリジナル曲を演奏するピアノ・トリオにして,森田悠介が「裏」で桑原あいを回すためのプロジェクトであったはず。

 なのに「桑原あいトリオ・プロジェクト」名義の4枚目にして,このコンセプトが変化した。
 そう。『LOVE THEME』(以下『ラブ・テーマ』)で演奏するのは,桑原あいオリジナル曲なしの全曲有名曲のカヴァー集である。
 加えて,ベースエレベ森田悠介が半分で,もう半分がコントラバス須川崇志という新編成である。

 森田悠介を相当買っていると公言していたくせに,須川崇志も大好きなベーシストなので,どちらかというと「桑原あいトリオ・プロジェクト」の“ワンランク上の変化”を期待して購入したのだが…。

 『ラブ・テーマ』は全然ダメだ。こんなにもありきたりな演奏だとは思わなかった。曲をなぞっただけの感じに落ち着くとは思わなかった。
 森田悠介よ,一体どうしたのだ…。「桑原あいトリオ・プロジェクト」においては「裏方」の森田悠介の才能の方が「メイン」を張る桑原あいの才能以上だと高く評価していたのに…。

 『ラブ・テーマ』の選曲もミスったと思う。スローからミディアム・テンポ中心なのでヒーリング系とかクラシック調とかのBGMを狙っているのか?
 「上原ひろみプログレ桑原あい」のイメージだったから尚更ガッカリである。どうせカヴァーをやるのなら,例えば,西山瞳が主宰する「NHORHMNEW HERITAGE OF REAL HEAVY METAL)」のようにHRHMの方が潔いし上手く行く。

 桑原あいにはスロー・バラードではなくハードでガンガンでギンギンの方が様になる。森田悠介もその辺は熟知したうえでのイメージ・チェンジ?
 アレンジにしても,それこそ山中千尋のように原曲の面影が残らないくらい激変しているわけではない。とにかく『ラブ・テーマ』について言いたいのは“大人しすぎる”。

LOVE THEME-2 ファンならずとも,桑原あい本人もちょっと違うと思ったのではなかろうか? 結果『ラブ・テーマ』が「桑原あいトリオ・プロジェクト」名義の最終作。

 非オリジナルにしてスロー系の『ラブ・テーマ』が失恋もどきで暗いジャズ・ピアノ集。聴いていて楽しいアルバムではない。
 将来“蜜月関係”が復活することがあるにしても,駄盤『ラブ・テーマ』で,これまでの順調で良好な関係が一時終了したのだ。

 その桑原あい森田悠介の間に割って入ったのがドラム石若駿桑原あいも今時の独身女性の一人である。
 森田悠介から石若駿へ目移りしたとしても,それが音楽的な意味合いであれば悪いことではないと思います。ですが真相は…。

  01. Amapola〜Deborah's Theme (from“Once Upon A Time In
     America”)

  02. Here There And Everywhere
  03. Finale (Tango Apasionado)
  04. In Your Own Sweet Way
  05. Nomad
  06. Barry Lyndon (Love Theme) (from“Barry Lyndon”)
  07. 21st Century Schizoid Man
  08. Peace
  09. Grandfather's Waltz
  10. A Journey To Reedham

(イーストワークス・エンタティンメント/EWE 2015年発売/EWER-1004)
(紙ジャケット仕様)

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エリック・アレキサンダー / サミット・ミーティング4

SUMMIT MEETING-1 破竹の快進撃を続けるエリック・アレキサンダーの2管編成クインテットSUMMIT MEETING』(以下『サミット・ミーティング』)のキーワードは“安定と洗練”である。

 トランペットニコラス・ペイトンを迎えて繰り広げられたユニゾンとバトルが,胸のすく王道ハード・バップに仕上げられている。
 エリック・アレキサンダーの自信に満ちたテナーサックスが,アンサンブルをどっしりと下支えしている。変な小細工など一切なし。安心して,現代に復興された上質なハード・バップを楽しむことができる。

 しかし,ここまで滑らかな演奏集を聴いていると,諸手を上げて喜ぶことが出来ない。人間って本当に「無いものねだり」ばかり。何もここまで無駄を削ぎ落とさなくても…。
 元来,エリック・アレキサンダーは名うてのテクニシャンであった。ミストーンなどデビュー・アルバム『STRAIGHT UP』の時点で一音もないくらい。

 そんなエリック・アレキサンダーが『サミット・ミーティング』で妙に丸くなった気がした。シカゴ・テナー伝統の「力任せに吹き上げる」男気溢れるエリック・アレキサンダーをもっともっと聴きたいのだ。

 自分の中のエリック・アレキサンダーへ寄せる思いがどこにあるのかを『サミット・ミーティング』を聴いて自覚してしまった。“安定と洗練”は決して悪いことではない。
 ただし,エリック・アレキサンダーのシカゴ・テナーに魅了されてきたファンとしては『THE SECOND MILESTONE』で突き抜けた,あの路線をそのままブレずに突き進んでくれるものと思っていた。だから何だかなぁ。

 『サミット・ミーティング』での“非の打ち所のない”テナーサックスに逆にモヤモヤしてしまう。ヴィンテージの良さって,年々,魅力が増していくじゃないですかぁ。
 『サミット・ミーティング』での“安定と洗練”を聴いていると,ヴィンテージの良さが色褪せて,大量生産消耗品の1つとして出回っていく感じ?

SUMMIT MEETING-2 どうやら管理人の求めている方向性とドンピシャで交わったのは『THE SECOND MILESTONE』1枚だけだったみたいです…。
 『サミット・ミーティング』以降のエリック・アレキサンダーは「円ではなくて楕円」だったみたいです…。

 楕円には周期がある。またいつか管理人の大好きなエリック・アレキサンダーと巡り会える。そう信じたい。
 …ということで『サミット・ミーティング』以降のエリック・アレキサンダーは不定期購入。気に入ったアルバムだけを紹介いたします。

  01. SUMMIT MEETING
  02. THE SWEETEST SOUNDS
  03. THERE BUT FOR THE GRACE OF...
  04. I HAVEN'T GOT ANYTHING BETTER TO DO
  05. A HOUSE IS NOT A HOME
  06. THIS GIRL'S IN LOVE WITH YOU
  07. SOMETHING'S GOTTA GIVE
  08. ANDRE'S TURN
  09. AFTER THE RAIN

(マイルストーン/MILESTONE 2002年発売/VICJ-60963)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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桑原 あい トリオ・プロジェクト / フロム・ヒア・トゥ・ゼア5

FROM HERE TO THERE-1 「桑原あいトリオ・プロジェクト」である。「トリオ・プロジェクト」と聴いたら,まずは上原ひろみを連想するものであろう。
 これって上原ひろみと比較させるための桑原あいの戦略なのだろうか? 管理人は桑原あいによる「上原ひろみのフォロワー宣言」だと受け取った。
 そう。桑原あいが溺愛する上原ひろみのスタイルとは,実はピアニストの部分ではなくて,あのアグレッシブでプログレッシブな作編曲能力にある。

 その点で“天才”上原ひろみはギリギリまでいっても破綻しないのだが,桑原あいは途中で飛び立ってから元へ帰って来れない部分がある。いいや,一度破綻してからが“勢い勝負”。若干21歳の女子である。力業でアクロバティックに着地してみせる。若さだよねぇ。聴けば聴くほど面白くなる!

 プロとしての経験を積めば積む程『FROM HERE TO THERE』(以下『フロム・ヒア・トゥ・ゼア』)のような“破天荒な”アルバムは作りにくくなると思う。桑原あい自身も,もう2度と同じものを作ることなどできやしない「幻のお化けアルバム」の誕生であった。
 そう。桑原あいの「アイディアがグッチャグチャ状態の頭の中」がそのまんま音として記録されたのが『フロム・ヒア・トゥ・ゼア』である。

 いや〜,インディーズっていいですね。何の制約もなく本当にやりたい音楽を形にして発売することができる。『フロム・ヒア・トゥ・ゼア』こそが「桑原あい100%」(アキラ100%風)の魅力であろう。
 ただし『フロム・ヒア・トゥ・ゼア』が「桑原あい100%」に聴こえるのは,バンド・リーダーであるベース森田悠介の才能が大きい。

 桑原あいの「アイディアがグッチャグチャ状態の頭の中」を理路整然と形にしている。それも今となっては“確信犯”であろうが,森田悠介の好みのアイディアだけを桑原あいの頭の中ら抜き出している。

 ズバリ「桑原あいトリオ・プロジェクト」の真実とは,桑原あいオリジナル曲を演奏するピアノ・トリオにして,森田悠介が「裏」で桑原あいを回すためのプロジェクトなのである。

FROM HERE TO THERE-2 その意味で管理人は「桑原あいトリオ・プロジェクト」を「ジャズフュージョン界のドリカム」に例えよう。
 桑原あいを語るのなら,比較対象は上原ひろみではなくて吉田美和の方である。裏でガッツリとプロデュースする森田悠介によって,桑原あいが最高の演者として,前面で輝くためのピアノ・トリオなのだと思う。

 森田悠介押しの管理人としては『フロム・ヒア・トゥ・ゼア』の聴き所は,森田悠介の超カッコイイ“変拍子GROOVE”に小躍りする桑原あいのエレガントなピアノであると信じている。

 時にジャズ,時にフュージョン,時にプログレ,そして時にドリカム…。
 桑原あいよ,森田悠介に逆らうな。森田悠介に身を委ね続けよ…。

  01. BET UP
  02. 3=log2(8)
  03. from here to there
  04. Edit typos.
  05. Chronometer
  06. mind blindness
  07. Circuit River
  08. Portrait of an old man
  09. Riverdance
  10. HiCCups!

(イーストワークス・エンタティンメント/EWE 2012年発売/EWCD-0191)

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エリック・アレキサンダー / ザ・セカンド・マイルストーン5

THE SECOND MILESTONE-1 エリック・アレキサンダーの快進撃は『THE SECOND MILESTONE』(以下『ザ・セカンド・マイルストーン』)から始まった。管理人はそう断言しよう。

 デビュー以降のエリック・アレキサンダーの特長とは,難フレーズでもとにかく豪快に吹き切る,無敵のブロウ職人のようなイメージであったが,前作『THE FIRST MILESTONE』から“大人の魅力”開眼のようで,豊かな情感表現が目立つように変化していたと思う。

 しかし『THE FIRST MILESTONE』での大人の音世界は,残念ながらエリック・アレキサンダー主導というよりはパット・マルティーノの個性に引っ張られて出来上がった優良盤であり,エリック・アレキサンダーにとって『THE FIRST MILESTONE』は「過渡期」のアルバムの代表格のように思える。

 それがどうだろう。『ザ・セカンド・マイルストーン』での深い音色と硬派な鳴り。ついに「コルトレーン派・第三グループ」の筆頭格としてエリック・アレキサンダーが自ら追求する音楽性を確立したように思う。

 【MATCHMAKER,MATCHMAKER】の冒頭から流れ出たテナーサックスの衝撃が忘れられない。まるで現代にコルトレーンが舞い戻ってきたかのようなテナーサックスの深い響きに,稲妻に打たれたかのような電気ショックが背中を走った。

 真にゾクゾクした。久しぶりに「ウォーッ」と大声で叫びたくなった。音色にしてもフレージングにしても,一聴してすぐにエリック・アレキサンダーと識別できるコルトレーンのスタイルを完全消化し,オリジナルの音色を確立したエリック・アレキサンダー“その人”がここにいる。

 要は,白人コルトレーン派・伝統の「COOLなハード・バップ」である。しかもDRYなのにノリがめちゃめちゃ重い。ストレイト・アヘッドなスタイルが破壊力満点な「テナー・タイタン」の速射砲に身がよじれてしまう。真に手放しで素晴らしい。

 そう。「コルトレーン派・第三グループ」の筆頭格であるエリック・アレキサンダーの特長とは,インスピレーション豊かに,抑制のきいたトーンで創造的なインプロヴィゼーションを展開する「テナー・タイタン」である。

 そんなエリック・アレキサンダーが,明快なメロディー・ラインを創り出し,卓越したハーモニーを織り込みながら,スイングを発散し続け,完璧な形に仕上げたのが『ザ・セカンド・マイルストーン』なのである。

THE SECOND MILESTONE-2 1年前のアルバムと聴き比べて成長が分かるのだから,当のエリック・アレキサンダーの手応えはいかばかりであろう。腕を上げた。相当大きな自信を掴んだ。そんな勢いのまま臨んだレコーディングだったのだろう。

 ズバリ『ザ・セカンド・マイルストーン』で,エリック・アレキサンダーが一皮剥けた! エリック・アレキサンダーが「期待のニュー・スター」から「テナー・シーンのトップ・アーティスト」へと一気に駆け上った!
 エリック・アレキサンダーの「生きる伝説」は『ザ・セカンド・マイルストーン』から始まったのだ!

  01. matchmaker, matchmaker
  02. the second milestone
  03. moment to moment
  04. the man from hyde park
  05. estate
  06. luna naranja
  07. john neely beautiful people
  08. the cliffs of asturias

(マイルストーン/MILESTONE 2001年発売/VICJ-60745)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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