アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

国府 弘子 / ピアノ・アニヴァーサリー4

PIANO ANNIVERSARY-1 管理人が国府弘子を初めて“ジャズ・ピアニスト”と意識して聴いた『PIANO ANNIVERSARY』(以下『ピアノ・アニヴァーサリー』)が逆戻り。う〜む。何とも勿体ない。

 タイミングも悪かったのだと思う。『ピアノ・アニヴァーサリー』は国府弘子デビュー15周年記念の第2弾(第1弾はベスト盤の『ウェルカム・ホーム 〜国府弘子 ベスト&モア〜』)。
 『ウェルカム・ホーム 〜国府弘子 ベスト&モア〜』が国府弘子のヒット曲の「総決算」であるならば『ピアノ・アニヴァーサリー』は国府弘子のプロ生活の「総決算」。
 そう。『ピアノ・アニヴァーサリー』の主旨とは国府弘子デビューからの軌跡をたどりながら「UPDATE」するというもの。

PIANO ANNIVERSARY-2 だからオスカー・カストロネヴィスエイブ・ラボリエルアレックス・アクーニャの参加するフュージョン路線の復活は外せない。いい曲なんだけど,どうも管理人の期待値を下回ってしまって…。

 1曲1曲の出来はいい。ピアノ・ソロもいいものだしピアニカだって負けてはいない。なのにアルバム単位で流して聴くと,余りにも曲と曲のイメージが離れすぎていて散漫な印象。

 裏を返せば,それだけ国府弘子の幅広い音楽性を証ししているとも言えるのだろうが,やっぱり15周年を12曲にまとめるのは国府弘子でなくても難しい。
 フュージョン,ポップス,クラシック,ラテンにヴォーカルやらストリングスやら盛りだくさんで,一番期待していた“ジャズ・ピアニスト国府弘子の存在感は薄い。

PIANO ANNIVERSARY-3 『ピアノ・アニヴァーサリー』みたいな「バラエティもの」を作っていたらジャズ・ピアノ好きは,山中千尋アキコ・グレースに流れてしまいます。
 う〜む。『ピアノ・アニヴァーサリー』での逆戻りが何とも勿体ない。

PS 「PIANO ANNIVERSARY-3」は「付録:「Piano Anniversary PIANO SCORE」です。

  01. Always
  02. Tomorrow Never Knows
  03. Fiesta
  04. Sing For Love
  05. Little Anniversary
  06. Lifeline
  07. Starland
  08. Easter Egg
  09. Chiffon Cake Bossa
  10. You're My Moose
  11. I Wish
  12. Nostalgia

(ビクター/JVC 2002年発売/VICJ-60970)
(デジパック仕様)
(付録:「Piano Anniversary PIANO SCORE」)

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デューク・ピアソン / ザ・ライト・タッチ5

THE RIGHT TOUCH-1 トランペットフレディ・ハバードトロンボーンガーネット・ブラウンアルトサックスジェームス・スポールディングフルートアルトサックスジェリー・ドジオンテナーサックススタンリー・タレンタインという,超個性派5管フロントの『THE RIGHT TOUCH』(以下『ザ・ライト・タッチ』)。

 これだけのツワモノが揃った5管編成の『ザ・ライト・タッチ』がシンプルに響く。『ザ・ライト・タッチ』の主役はデューク・ピアソンピアノである。
 それというのも『ザ・ライト・タッチ』で腕を振るったデューク・ピアソンの絶品アレンジは,いつものアンサンブルではなくソロイストのピックアップにある。

 5管フロントがユニゾンするのではなく,5人中1人だけがメロディーを吹き,デューク・ピアソンピアノデュエットしている瞬間がある。
 そう。『ザ・ライト・タッチ』で『プロフィール』と『テンダー・フィーリンズ』で鳴らしたのピアノ・トリオデューク・ピアソンが帰ってきている。かつてなくデューク・ピアソンピアノが前に出ている。

 ズバリ『ザ・ライト・タッチ』でデューク・ピアソンが追求したのは,アンサンブルとソロの対比の中で響くジャズ・ピアノであろう。
 ピアノを効果的に響かせるための,サビでの分厚い5管フロントであり,ピックアップされた5人のソロイストとのハーモニーである。“豪華なのに静かに動く”超個性派5管フロントの「あっさり・タッチ」。
 これぞ『THE LIGHT TOUCH』→『THE RIGHT TOUCH』の真骨頂なのであろう。

 久しぶりに前に出ることにしたデューク・ピアソンピアノが実にスムーズに動く。
 コードはファンキーだがサバサバした運指に聴こえる。部分部分ではリズミックに感じるのだが知的で軽やかにまとめ上げる。出来上がりが上品である。キレイなジャズ・ピアノなのである。

 大編成の中で弾くピアニストは難しい役回りだと思う。肝心要のピアニストが乱れるとセッションっぽく聴こえてしまうし,カチッと譜面通りに弾くわけにもいかない。
 重くもならず軽くもならない。黒いのだが黒すぎない。そんな“ジャズ・ピアニストデューク・ピアソンのハイセンスが実に素晴らしい。

THE RIGHT TOUCH-2 キラー・チューンの【CHILI PEPPERS】収録。【MAKE IT GOOD】〜【MY LOVE WAITS(O MEU AMOR ESPERA)】〜【LOS MALOS HOMBRES】まで一気に引き込まれる。

 惜しむべきは【SCRAP IRON】での落とし方である。それまで『THE RIGHT TOUCH』で推してきた流れが【SCRAP IRON】1曲でアルバム全体が見事に不安定化して聴こえてしまう。

 でも【SCRAP IRON】のハズシを含めての『THE LIGHT TOUCH』→『THE RIGHT TOUCH』。
 この不思議な魅力が耳から離れない愛聴盤なのです。

  01. CHILI PEPPERS
  02. MAKE IT GOOD
  03. MY LOVE WAITS (O MEU AMOR ESPERA)
  04. LOS MALOS HOMBRES
  05. SCRAP IRON
  06. ROTARY

(ブルーノート/BLUE NOTE 1967年発売/TOCJ-9251)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/岡崎正通)

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国府 弘子 / ウェルカム・ホーム 〜国府弘子 ベスト&モア〜5

WELCOME HOME-1 国府弘子の2枚目となるベスト盤の『WELCOME HOME』(以下『ウェルカム・ホーム 〜国府弘子 ベスト&モア〜』)。

 『ウェルカム・ホーム 〜国府弘子 ベスト&モア〜』も発売当初からスルーを決め込んでいたのだが,結局は買ってしまった。お目当ては『PIANO TAPESTRY』の未収録トラック【INTERLUDE】である。どうしても聴きたい。この1曲のために所有済音源ばかりのベスト盤を買ってしまうのだからレコード会社のカモである。『PIANO TAPESTRY』はツルである。

 そんな【INTERLUDE】だったが【INTERLUDE】は【INTERLUDE】止まりであった。
 ただし【INTERLUDE】にガッカリしても『ウェルカム・ホーム 〜国府弘子 ベスト&モア〜』にガッカリはしない。最初から最後まで何度繰り返し聴いたことか…。管理人好みの曲ばかりが集められている。選曲者は管理人の感性と近いと思った。

 そう。『ウェルカム・ホーム 〜国府弘子 ベスト&モア〜』での“ジャズ・ピアニスト国府弘子が最高であるが,それ以上に“名コンポーザー”国府弘子が最高なのである。
 NO。『ウェルカム・ホーム 〜国府弘子 ベスト&モア〜』での“名コンポーザー”国府弘子が最高であるが“ジャズ・ピアニスト国府弘子がそれ以上に最高なのである。

 サンバ調でノリノリのビル・エヴァンスの【MY ROMANCE】がいい。天野清継との絶品のコンビネーション【FOR MY FRIEND】がいい。とにかくピアノがいいのだ。
 「目から鱗」の国府弘子ジャズ・ピアノ。『ウェルカム・ホーム 〜国府弘子 ベスト&モア〜』以降,国府弘子の聴き方が変わった。

WELCOME HOME-2 これまで国府弘子に対してはフュージョン系のイメージが強く“ジャズ・ピアニスト国府弘子としては余り注目してこなかった。

 あんなにもピアノをガンガン弾きまくる【MY ROMANCE】は聴いたことがないのではないか? あんなにもギターに寄り添う【FOR MY FRIEND】でのピアノは聴いたことがないのではないか?
 プレイヤーとしての国府弘子フュージョンではなくジャズそのものを弾いている。素晴らしい。

 『ウェルカム・ホーム 〜国府弘子 ベスト&モア〜』以降,管理人の中で国府弘子フュージョンピアニストから“ジャズ・ピアニスト”になった! 大西順子木住野佳子に次ぐ“ジャズ・ピアニスト”になった!

  01. Vitamina
  02. Going, Going On
  03. Listen To My Heatbeat
  04. Passarada
  05. Lady Moonlight
  06. Baked Potato Man
  07. Keep Hope Alive
  08. Go Go Godzilla
  09. Interlude
  10. Sky Dancing
  11. Luck In The Rain
  12. For My Friend
  13. My Romance
  14. I Do What I Want
  15. Slingshot
  16. 忘れないよ

(ビクター/JVC 2002年発売/VICJ-60946)
(ライナーノーツ/国府弘子)

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デューク・ピアソン / スイート・ハニー・ビー5

SWEET HONEY BEE-1 『HONEYBUNS』の次は,同じ『HONEY』でも『SWEET HONEY BEE』(以下『スイート・ハニー・ビー』)。

 『スイート・ハニー・ビー』とは確かに「甘いミツバチ」である。明るくサンサンと,しかし少し色褪せたオレンジとイエローの「ミツバチ」カラーのジャケット写真同様,レトロでお洒落なミツバチのダンス・ミュージックの完成である。
 これぞデューク・ピアソンによる“ピアソン・ハーモニー”そのものである。一度聴いたら忘れられない,歌って踊れるアンサンブル。スマートな演奏がお洒落だと思う。ハッピーだと思う。

 だから『スイート・ハニー・ビー』でのデューク・ピアソンが心底ジャズしていると思うのである。管理人はデューク・ピアソンを聴くと,大抵,一人悦に入っている。だって最高なんだもん。
 
 【SWEET HONEY BEE】における心躍るジャズ・ロック・タッチ系の軽快なビート。フルートが奏でる,浮き立つようなメロディー。これに応える楽しいホーンのアンサンブル。
 これがブルーノートの曲なのか? デューク・ピアソンCTIを先取りしているのだ。

 そう。『スイート・ハニー・ビー』こそが,デューク・ピアソンの“最高傑作”である。
 フレディ・ハバードトランペットジェームス・スポールディングアルトサックスジョー・ヘンダーソンテナーサックスという個性派のアドリブ以上に,デューク・ピアソンメロディー・ラインが打ち勝っている。美メロがアドリブに打ち勝っている。
 どこからどう聴こうとも『スイート・ハニー・ビー』からは“ピアソン・ハーモニー”ばかりが聴こえてくるのだ。

SWEET HONEY BEE-2 『スイート・ハニー・ビー』はとにかく軽くて聴きやすい。その理由は,演者を譜面に落とし込める“ピアソン・ハーモニー”の「支配力」にある。

 デューク・ピアソンは大物に成り損なったかもしれないが,個人的にはベニー・ゴルソンの“ゴルソン・ハーモニー”に対抗できるのは,デューク・ピアソンの“ピアソン・ハーモニー”だけだと思う。
 アルフレッド・ライオンが自分の後釜として,こんなにもデューク・ピアソンを重用した気持ちが良く分かる。

 ハービー・ハンコックの『スピーク・ライク・ア・チャイルド』をプロデュースしたデューク・ピアソンのハイセンスなんかは,今で言うフィリップ・セスのようである。

  01. SWEET HONEY BEE
  02. SUDEL
  03. AFTER THE RAIN
  04. GASLIGHT
  05. BIG BERTHA
  06. EMPATHY
  07. READY RUDY?

(ブルーノート/BLUE NOTE 1967年発売/TOCJ-6591)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,杉田宏樹)

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国府 弘子 / ピアノ・タペストリー5

PIANO TAPESTRY-1 タペストリー,それは織物。タペストリー,それは綴織。『PIANO TAPESTRY』(以下『ピアノ・タペストリー』),それは国府弘子による公式「鶴の恩返し」。

 そう。『ピアノ・タペストリー』とは「一枚の布を織り上げるように音の響きを紡いで生まれた珠玉のソロ・ピアノ即興による有名曲のカヴァー集」。
 レコーディングまでの準備期間はゼロ。国府弘子ピアノに向かうまで譜面や構成を一切準備しなかったという。
 あの日あの時,国府弘子が自然に弾きたいと思った馴染みの美メロが「表われては消えてゆく」…。記憶と音と創造の糸を縦横に織り込んで出来上がった『ピアノ・タペストリー』…。

 国府弘子の心象風景の移ろいを感じられるような音の連なりが絶妙であって,1つ1つの曲の構成よりも18曲全てを聴き通して1つの大きな曲が完成している。事実『ピアノ・タペストリー』は,曲間わずかに1秒な感じで,18曲がコンパクトに連続で一気に流れていく。
 ピアノが優しくしっとりと詩情豊かに絡み合ってくる感じで,曲が変わっても静かに数曲前のメロディー語りかけてくる。最高の完成度である。
 あれっ,これってDJが2台のターンテーブルで曲をつなぎ合わせる手法と似ているのか? “DJ国府”の絶妙なつなぎに「萌え」〜。

 NO! 本来『ピアノ・タペストリー』は繰り返し聴き込む種類のアルバムではないが,気持ち良くて何度も聴いているうちに気付いたことがある。
 『ピアノ・タペストリー』の真髄とは,タペストリーとは真逆の「解体新書」なのだと思う。
 音を紡いでいるはずなのに,実際には音のひだをほどいていく感覚…。国府弘子が自分の心を覆う内面のベールを,1枚1枚剥ぎ取っては聴かせてくれるような感覚…。

 国府弘子の体内の膨大な美メロのデータベースの中からセレクトされた名曲中の名曲が18曲。その中でも“最も美味しい”メロディー・ラインが切り抜かれて提示されている。
 そう。『ピアノ・タペストリー』がカヴァー集なのに名盤と称される理由とは,アルバムを織り成す1本1本の糸が強く美しいからである。

PIANO TAPESTRY-2 国府弘子自身は『ピアノ・タペストリー』を「鶴の恩返し」を例に解説している。鶴の化身が部屋に隠れて機を織る様子をソロ・ピア
のスタジオ作業に重ねている。
 スタジオの中にはピアニストが一人ぼっち。そのピアニストは,誰かの喜びのために,一人せっせと作業をしている。名曲を1度完全に解体して,その中で使用されていた糸を取り出して再構築してみせたのが『ピアノ・タペストリー』なのである。

 とは言え『ピアノ・タペストリー』はスタジオ・ライブ・レコーディング。“DJ国府”の解体力と構築力が図抜けている。いい演奏である。

  01. OVERTURE
  02. MAIDEN VOYAGE
  03. CHANGE THE WORLD
  04. REQUIEM
  05. INVENTION
  06. IN MY LIFE
  07. FIELDS OF GOLD
  08. SCARBOROUGH FAIR / CANTICLE
  09. PASTORALE〜BURGMULLER FROM “25 EASY STUDIES OP.100”
  10. OVER THE RAINBOW〜IT MIGHT AS WELL BE SPRING〜MY
     GRAND FATHER'S CLOCK

  11. LADY MOONLIGHT
  12. KAERENAI-FUTARI
  13. WHAT A WONDERFUL WORLD〜MIAGETEGORAN-
     YORUNOHOSHIWO

  14. PASSARADA〜LUCK IN THE RAIN
  15. SUNSHINE DAY
  16. 'ROUND MIDNIGHT
  17. SUNSET BEACH
  18. CLIMB EV'RY MOUNTAIN

(ビクター/JVC 2001年発売/VICJ-60746)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/国府弘子)

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デューク・ピアソン / プレイリー・ドッグ4

PRAIRIE DOG-1 デューク・ピアソン大好き人間として断言しよう。『PRAIRIE DOG』(以下『プレイリー・ドッグ』)でデューク・ピアソンは「一度壊れてしまった」のだと思う。
 『プレイリー・ドッグ』で,初期のデューク・ピアソンが逝っている。『プレイリー・ドッグ』こそが,デューク・ピアソン「バージョン2」の始まりなのである。

 “天才”ゆえの悩みなのか,初めてブチ当たった壁なのか,デューク・ピアソンが“リリカル&ファンキー”路線の「自分の殻を打ち破ろうと」必死にもがいている。

 5拍子と6拍子が交錯する【THE FAKIR】は,なぜに今更な【TAKE FIVE】と【MY FAVORITE THINGS】的なフルートソプラノサックスの,いいとこどりな合作である。

 【PRAIRIE DOG】も,ゴスペルチックなデューク・ピアソンのリバイバル・ソングであって,ギターホーンのアンサンブルが延々続くカントリー・ソング。【PRAIRIE DOG】こそがアメリカン・フォークの「王道」である。

 ブルース調の【SOULIN’】とモーダルな【LITTLE WALTZ】では「新主流派」的な“リリカル&ファンキー”であって,この2トラックがデューク・ピアソンの“らしさ”&“さすが”が“COOL”に伝わってくる。
 他のアルバムに入っていたなら名演として押されたのかもしれないが,個性派揃いの『プレイリー・ドッグ』の中に入っていては,平凡すぎて埋没しているのかなぁ。

 【HUSH−A−BYE】と【ANGEL EYES】は,共にジャズライン時代に取り上げたデューク・ピアソンの愛想曲の再演。
 アレンジを前回から思いっきり変えて,チェレスタデューク・ピアソンベーシストボブ・クランショウとの白眉のデュエット
 美しいオルゴールの世界の後ろでボブ・クランショウの「ブンブン」弾きまくる低音をフィーチャリングしたアイディアが素晴らしいと思う。

PRAIRIE DOG-2 そう。『プレイリー・ドッグ』は,デューク・ピアソンによる「本当にやりたかったいジャズの総決算」的なアルバムである。
 果たして,その出来映えであるが,デューク・ピアソンが自分自身で過去のデューク・ピアソンを否定したかのようなアルバムに聴こえる。

 やりたいことが多すぎて,どうまとめたらよいのか先が見えずに,自分をコントロールできなくなったデューク・ピアソンの“知性派”が初めて乱れている。トータル・イメージが散漫なデューク・ピアソンの“闘争本能”が露わにされている。

 でもそこがたまらなくいいのだ。まとまりなど二の次なのだ。出来は一段落ちる。
 でも「完全に壊れてしまった」デューク・ピアソンが聴ける。これこそが『プレイリー・ドッグ』最大の聴き所なのだ。

 出来の悪い子供こそ「情が移る」というものだ。時間をおいて練り上げられた名盤SWEET HONEY BEE』への初期の制作過程を聴いている気分になれるのも良い。
 だ・か・ら『プレイリー・ドッグ』は聴き飽きない。

  01. THE FAKIR
  02. PRAIRIE DOG
  03. HUSH-A-BYE
  04. SOULIN'
  05. LITTLE WALTZ
  06. ANGEL EYES

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1966年発売/WPCR-27166)
(ライナーノーツ/ジャック・ショー,岡崎正通)

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