アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

国府 弘子 / ピアノ・レター5

PIANO LETTER-1 国府弘子の“最高傑作”が『PIANO LETTER』(以下『ピアノ・レター』)である。

 『ピアノ・レター』には管理人のド・ストライク=【さくら便り】と【忘れないよ】が収録されている。ただそれだけで“最高傑作”に決まったわけなのだが,こんな名曲&名演が2曲も入っているアルバムなんて,そう多くはありません。
 4曲目で大泣きして9曲目でむせび泣く。CD1枚で映画1本分の涙が出てスッキリ。しかも感動が1週間も長続きするのです。

 『ピアノ・レター』の「愛と希望,そして勇気」な音造りは,基本『DIARY』の延長線上に生まれた“国府ワールド”の最終完成作である。
 『ピアノ・レター』での国府弘子は,ジャズピアニストであり,ピアノ・フュージョンなプレイヤーなのだが,全体の印象としては「バンド・リーダー」のように感じてしまう。

 日本人なら心の琴線に触れまくってしまうであろう,満開の【さくら便り】の三好功郎の“別れのギター”のフィルイン一発の破壊力から一転した八尋洋一の“グイグイ”ベース
 そうして,懐かしい故郷,子供の頃に感じた夏の終わりとか,幸福な瞬間のアルバムをめくっているような気分に襲われる【忘れないよ】での篠崎正嗣ストリングスは,共に美しいピアノメロディーではなく,ギターベースストリングスで「思いの丈」を表現したからこその感動ものだと思っている。

 そう。国府弘子は,もはや自らピアノを弾かなくとも,自分の音を狙い通りに奏でることができるコンポーザーにしてアレンジャー「ザ・国府弘子」なのである。
 これまでは都会的でハートフルな表現を得意としてきた国府弘子が,ポップスに寄ってエンターテイメントなピアノを弾いていく。しかし,どうしようもなくJAZZYである。書き譜のPOPなメロディー・ラインがアドリブで跳ねているように聴こえてしまう。

 国府弘子の人一倍感傷的なのに,明るく前向きな音楽が前面に出てきている。しかし,そこにはどうしても隠せない国府弘子の個性=女性らしさ,優しさ,弱さ,もろさが同居して響いている。
 ピアノを弾いて,一生懸命に励ましてくれてありがとう。優しさに包まれ癒されました。今度は僕が君を励ましてあげる番だから…。

PIANO LETTER-2 『ピアノ・レター』で,国府弘子デビュー当時の「不思議ちゃん」から「大人のジャズピアニスト」へと見事に変貌を遂げている。ジャズピアニストとして,表現の幅が広がったのだと思う。

 アコースティックピアノ・トリオを基本としつつ,例えばピアノソロ曲【スノー・ホワイト】などは,従来の国府弘子が積み重ねてきた“国府ワールド”がより鮮明に浮かび上がっており,国府弘子が伝えたかった音楽の本質が露わになったように思う。

 管理人の結論。『ピアノ・レター批評

 『ピアノ・レター』は「大人のジャズピアニスト国府弘子直筆の「ピアノで書き記された手紙」である。
 心のひだを震わせる,幾重にも重ね塗りされたPOPにして奥深い音選びによる「唯一無二の表現力」は,日本の文学史上?かなりの名文だと思われます。

  01. RIVER DANCE
  02. GO GO GODZILLA
  03. FOR YOUR BIRTHDAY
  04. SAKURA-DAYORI
  05. SNOW WHITE
  06. AZZURRO FANTASIA
  07. THE STRANGER
  08. ACROSS THE MILES
  09. WASURENAI-YO
  10. SEKAI WA MELODY

(ビクター/JVC 1999年発売/VICJ-60420)

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デューク・ピアソン / エンジェル・アイズ5

ANGEL EYES-1 デューク・ピアソンの“幻の名盤”というか“幻のレーベル”「JAZZ LINE」の1枚が『ANGEL EYES』(以下『エンジェル・アイズ』)。

 「JAZZ LINE」から正式にカタログとしてリリースされた『ハッシュ!』はまだしも『エンジェル・アイズ』の方は未発表音源のお蔵入り。
 リリースして回収するまでの資金がショートしただけの,内容は完璧&発売目前でのお蔵入り。
 そう。『エンジェル・アイズ』こそが真に“幻の名盤”である。

 『エンジェル・アイズ』は,ピアノデューク・ピアソンベーストーマス・ハワードドラムレックス・ハンフリーズによるピアノ・トリオ作。
 デューク・ピアソンピアノ・トリオと来れば,やはりブルーノートの2枚『PROFILE』と『TENDER FEELIN’S』がいい。いいのだが,ちょっと新感覚すぎるかもしれない。

 その点で『エンジェル・アイズ』でのデューク・ピアソンは,古風で正統派で“センス一本勝負の”ピアノ・スタイル。
 ブルーノート盤のリリカルで色鮮やかなピアノから離れて,何の気負いもなくピアノを楽しみながら弾いているだけなのだが,この心底上品な演奏に心揺さぶられてしまう。
 良く知られたジャズスタンダードを「慈しみながら」デューク・ピアソン流に弾いているのだが,鼻歌まじりのアドリブの美メロが素敵すぎる。メロディーが心に沁み渡ってくる。

 そう。『エンジェル・アイズ』でのデューク・ピアソンのオーソドックスなジャズ・ピアノには雰囲気がある。そして色気がある。

ANGEL EYES-2 管理人の結論。『エンジェル・アイズ批評

 デューク・ピアソンのさりげなく小技を効かせた,あっさり味の「後を引かない」ジャズ・ピアノが聴き流せない。逆に聴けば聴くほどクセになる。

 クライマックスを作らない,自由自在のアドリブメロディーの良さを伝えてくる。これって簡単そうで並みのピアニストには出来ない芸当だと思う。
 デューク・ピアソンの“さらりとした”ジャズ・ピアノが,どうにも心に引っ掛かる。いい演奏である。
 
  01. Bags' Groove
  02. Le Carrousel
  03. Angel Eyes
  04. I'm An Old Cow Hand
  05. Jeannine
  06. Say You're Mine
  07. Exodus
  08. Le Carrousel (alternate take)
  09. I'm An Old Cow Hand (alternate take)
  10. Say You're Mine (alternate take)

(ジャズライン/JAZZLINE 1962年発売/MZCB-1184)
(☆HQCD仕様)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/後藤誠,小川充)

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国府 弘子 / ダイアリー5

DIARY-1 『DIARY』(以下『ダイアリー』)は国府弘子の7ヶ月間のロサンゼルス生活からの帰還報告。
 『ダイアリー』の音楽日記から聴こえてくるのは国府弘子の充実ぶり! 国府弘子が心温まるメロディー・ラインでガンガン押してくる!

 最初に耳が行くのは有名曲4曲のカヴァーであろう。
 国府弘子パトリース・ラッシェン杏里の純POP。ビートルズの手を離れた国府弘子の考える「ザ・ビートルズ」のホーン隊を引き連れたドライブとピアノ・トリオEL&Pの大噴火カヴァー上原ひろみプログレ・パンク・フュージョンに負けない“跳ね具合”にニッコリである。

 その後,このニッコリは国府弘子オリジナル5曲に完全移行する。オリジナルメロディー・ラインがとにかく最高。
 【ゴーイング・ゴーイング・オン】での“COOL”な「国府弘子は決める時は決める」カッコ良さ。心がかき乱された後に落ち着く,一晩中聴いていたい【サンセット・ビーチ】の哀愁バラード。ドラマティックなフルートを“プッシュ”するラテン・ピアノの【アイ・ドゥ・ホワット・アイ・ウォント】。キース・ジャレットケルン・コンサート』ばりの【アプレ・ラムール(ミッシング・ユー)】の甘くロマンティックソロ・ピアノ。【シティ・オブ・エンジェルス】での“せつない系”スムーズ・ジャズ

DIARY-2 『ダイアリー』を実際に手に取るまでは,どうやらロサンゼルス,なにやらアメリカの香りいっぱいなアルバムだろうと予想した。
 しかし,本当の『ダイアリー』は「日本大好き」国府弘子の『ダイアリー』であった。

 国府弘子がロサンゼルスに行って外から自分を見つめ直した?美メロに毎回心を射抜かれてしまう。何度聴いても感動する。ますます感動が深まっていく。
 特に八尋洋一ベース村石雅行ドラムとのコンビネーションが完璧すぎてゾクゾクする。

 あ・れ・れ・っ。セラビーってこんなにも国府弘子が好きだったっけ? もはや国府弘子なしでは生きていけない感じ?
 セラビーは『ダイアリー』以降の国府弘子を一人のクラスメートではなく一人の女性としてハッキリ意識するようになりました。← なんでやねん。

  01. GOING, GOING ON
  02. REMIND ME
  03. DRIVE MY CAR
  04. LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS
  05. TARKUS:ERUPTION〜STONES OF YEARS
  06. SUNSET BEACH
  07. I DO WHAT I WANT
  08. APRES L'AMOUR
  09. CITY OF ANGELS

(ビクター/JVC 1998年発売/VICJ-60210)
(ライナーノーツ/国府弘子)

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デューク・ピアソン・クインテット / ハッシュ!5

HUSH!-1 デューク・ピアソンの“幻の名盤”というか“幻のレーベル”「JAZZ LINE」の1枚が『HUSH!』(以下『ハッシュ!』)。

 デューク・ピアソンの才能に目を留めたのはブルーノートの「総裁」アルフレッド・ライオンだけではなかった。パシフィック・ジャズ出身のフレッド・ノースワーシーなる人物である。
 そんなフレッド・ノースワーシーが設立したのが「JAZZ TIME」レーベルであり,後の「JAZZ LINE」レーベルであるが,すぐに倒産してしまった。倒産の理由はフレッド・ノースワーシーの好みのジャズメンがマニアックすぎたから,と言われている。

 そんな玄人好みの「JAZZ TIME」が3枚+「JAZZ LINE」が2枚の合計5枚の貴重なレコーディング・メンバーにデューク・ピアソンが含まれている。
 少量生産の完全なるコレクター・アイテムである。レア品なのである。内容が良くても会社がなくなったのだから陽の目を見ない。だから“幻の名盤”なのである。

 さて,こんな書き出しで紹介した『ハッシュ!』=“幻の名盤”説であるが,管理人は『ハッシュ!』=“幻の名盤”説にはもう1つの意味があると思っている。
 それはデューク・ピアソン名盤群の中で『ハッシュ!』だけが,ツイン・トランペットによる「異色の編成」で制作されている事実。

 そう。デューク・ピアソンのファンが『ハッシュ!』について“幻の名盤”と語る時,それは「JAZZ LINE」だからではなく“管を鳴らす”デューク・ピアソンが手掛けた,唯一のツイン・トランペット編成のことを指すのである。

HUSH!-2 『ハッシュ!』のメンバーは,ピアノデューク・ピアソンベースボブ・クランショウドラムウォルター・パーキンスによるピアノ・トリオに,トランペットドナルド・バードジョニー・コールズ

 ドナルド・バードジョニー・コールズのスタイルが近いせいなのか,ツイン・トランペットならではのホーン・アンサンブルが美味い。同じ音域のトランペットの2台のズレが旨い。
 この辺のアレンジメントがデューク・ピアソンの“らしさ”である。『ハッシュ!』の中に充満している,後年のプロデューサー的な秀逸なバランス感覚にアルフレッド・ライオンフレッド・ノースワーシーも惹かれてしまったのだろう。

 渋い演奏である。それだけではなく温かい演奏である。素朴な旋律のジャズ・ピアノに乗ったツイン・トランペットのライン取りが『ハッシュ!』を,デューク・ピアソン・ファンが選んだ“幻の名盤”へと押し上げた要因である。

  01. Hush!
  02. Child's Play
  03. Angel Eyes
  04. Smoothie
  05. Sudel
  06. Friday's Child
  07. Out Of This World
  08. Hush! (alternate take)
  09. Child's Play (alternate take)
  10. Sudel (alternate take)
  11. Groovin' For Nat' (Unissued take)

(ジャズライン/JAZZLINE 1962年発売/MZCB-1183)
(☆HQCD仕様)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/後藤誠,馬場雅之,原田和典)

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矢野 顕子×上原 ひろみ / ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO-5

ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO--1 『GET TOGETHER −LIVE IN TOKYO−』は「矢野顕子 & 上原ひろみ」による対等なピアノデュオで間違いないが『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』は「矢野顕子 WITH 上原ひろみ」なピアノデュオである。

 『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』は,力関係として矢野顕子が思いっきり前に出ている。上原ひろみ矢野顕子ピアノを弾かない時の「伴奏者」まで勤め上げている。
 そう。『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』の真実とは,上原ひろみから矢野顕子へ捧げたリスペクトなのである。

 これを上原ひろみの視点から語れば,矢野顕子とのピアノデュオ作『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』はチック・コリアとのピアノデュオ作『DUET』の再来である。

ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO--2 『DUET』での上原ひろみは「チック・コリア大好き」が出まくっていた。上原ひろみチック・コリアに“しがみついて”2人で3台分の“饒舌な”同じ個性のピアノを聴かせてくれた。
 今回の『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』での上原ひろみも「矢野顕子大好き」が出まくっている。今回のは矢野顕子を自分の“懐に抱え込んで”矢野顕子上原ひろみっぽいピアノを弾かせている。

 結果『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』では,2人で4台分のピアノの音が記録されている。その上に矢野顕子の“あの”ヴォーカルが乗っかっている。
 「矢野顕子 WITH 上原ひろみ」の真実とは,上原ひろみが引っ込んだわけでも,矢野顕子が前に出たわけでもない。
 上原ひろみ自身が前に出るために,意図的に矢野顕子を「前に出した」結果なのである。

ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO--3 事実『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』は全曲,上原ひろみ・アレンジング。本気モードの上原ひろみのアレンジが素晴らしい。
 特に前作『GET TOGETHER −LIVE IN TOKYO−』にも収録されていた【ラーメンたべたい】のニュー・バージョンは,面白いでも興味深いでもなく,ただただカッコ良い! 塩・醤油・トンコツ・魚介の全てを食べ尽くした上での創作ラーメンの名店の味がする!?

 ふらっと街を歩いていて,気になったお店に入ったらドンピシャ・ストライクのラーメン食べ歩きの妙! 最初はぶっ飛んだ味がガツンと来て,今まで食べたことのない味だと思っていたのに,食が進むにつれ,なんだか懐かしい味に思えてくる! 最後は「王道」の味へと戻って来る! 「二段仕掛け」のジャズ・ピアノ

 「二段仕掛け」の先発はいつだって矢野顕子である。矢野顕子が未知の音を探しにロケットで発車するが「二段エンジン」役の上原ひろみがバックで巧みに呼び寄せる。どこまで飛んでもちゃんと綺麗に着地する。矢野顕子流ではなく上原ひろみ印で着地を決めていく。

ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO--4 “天才”上原ひろみの「無茶振り」に最高の答えを返す“元祖・天才”の矢野顕子
 矢野顕子上原ひろみの『ラーメンな女たち』の絆は深い。同じラーメン店に入って,別々のラーメンを注文しようとも絆は深い。
 『ラーメンな女たち −LIVE IN TOKYO−』は,そんな画面が見える感じのライブ盤であった。

 管理人も鈴木商店と一風堂のスープを割ったものに一蘭のバリカタ麺をぶっかけてニンニク多めで食べますかっ。智子レストランで!

  CD
  01. 東京は夜の7時
  02. おちゃらかプリンツ (おちゃらかほい〜フットプリンツ)
  03. 真赤なサンシャイン (Ain't No Sunshine〜真赤な太陽)
  04. 飛ばしていくよ
  05. Dreamer
  06. こいのうた
  07. ホームタウン・ブギウギ (東京ブギウギ〜New York, New York)
  08. ラーメンたべたい

  DVD
  01. 飛ばしていくよ (ライヴ・クリップ)
  02. こいのうた (ライヴ・クリップ)

(テラーク/TELARC 2017年発売/UCCO-8011)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD
★スリーヴ・ケース仕様

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デューク・ピアソン / テンダー・フィーリンズ5

TENDER FEELIN'S-1 『PROFILE』でのデューク・ピアソンが,クラシカルなジャズ・ピアニストであれば『TENDER FEELIN’S』(以下『テンダー・フィーリンズ』)でのデューク・ピアソンは,モダンジャズ・ピアニストである。

 『テンダー・フィーリンズ』を聴いているとデューク・ピアソンが「ピアノ・トリオの枠」を飛び越えてしまったように感じてしまう。ピアノ1台なのに“最先端のモダン・ジャズ”を見事に表現できている。
 それくらいに色彩豊かで,ピアノ以外の楽器がプレイしているような錯覚を感じる“豊かな音場”のピアノ・トリオが素晴らしい。

 デューク・ピアソン名盤群における『テンダー・フィーリンズ』の価値とは,純粋に「ピアノ・トリオ向きのピアニスト」としてのデューク・ピアソンを確認することにある。本当にそう思う。

 しかし『テンダー・フィーリンズ』を聴けば聴くほど,デューク・ピアソンのイメージが“ジャズ・ピアニスト”から離れていく。
 そんな非ピアノ・トリオの個性が,リリカルで小品な『PROFILE』と性格を異にする,と語られる所以であろう。

  きっとデューク・ピアソンには,頭の中にビッグ・バンドの音が聴こえているのだろう。『テンダー・フィーリンズ』の中のデューク・ピアソンは,手元にはピアノ1台しかないはずのに,あたかもビッグ・バンドピアニストの席に座ったかのように,忠実にピアノを演奏している。

 そして,ここが“ジャズ・ピアニストデューク・ピアソンの凄さなのだが,デューク・ピアソンビッグ・バンドの構成楽器のような1台のピアノを聴いていると(現実にはピアノ以外の音は無音なのだが)デューク・ピアソンだけに聴こえているはずのビッグ・バンド・サウンドが,聴き手にもイメージとして伝わってくるのだった。

 そう。デューク・ピアソンの頭の中だけで流れている音楽が,デューク・ピアソンピアノのプレイからこぼれ出している。超ハイセンスなデューク・ピアソンなのだから,こぼれ出す音を拾っていくだけで管理人は大満足。
 デューク・ピアソンにとってピアノという楽器は,お菓子作りをする時の「粉ふるい」のようなものだと管理人は思う。

TENDER FEELIN'S-2 モード・ジャズフリー・ジャズのエッセンスがありつつの,適度にブルージーなフィーリングにクラクラきてしまう。
 デューク・ピアソンは1959年の時点ですでにここまで考えていたんだ。時代にマッチングしつつも一歩先んじたお洒落なジャズ・ピアノ…。

 その類まれなる「総合力」で,徐々にピアニストというよりも,作曲家,編曲家,そしてプロデューサーとして大活躍することになるのだが,デューク・ピアソンの真の凄さは“豊かな音場”のピアノ・トリオにこそ表われると思っている。

 バラエティに富んだ全7曲の『テンダー・フィーリンズ』の極めて高い完成度。オーソドックスなのに最高にサイケなタイム感。
 『テンダー・フィーリンズ』を聴いた夜は,もう何もする気がなくなりその場から動けなくなってしまう。「骨抜きにされる」とはこのような状態を指すのであろう。

  01. BLUEBIRD OF HAPPINESS
  02. I'M A FOOL TO WANT YOU
  03. I LOVE YOU
  04. WHEN SUNNY GETS BLUE
  05. THE GOLDEN STRIKER
  06. ON GREEN DOLPHIN STREET
  07. 3 A.M.

(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-7027)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,原田和典)

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