アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

ジャヴァン / ノヴェーナ4

NOVENA-1 ジャヴァンがどうしてもアルバムにして表現したかった音楽。ジャヴァンがブラジル人にどうしても聴いてもらいたい音楽。それが『NOVENA』(以下『ノヴェーナ』)である。

 「世界で売れてもブラジルで売れなければ意味がない」とでも考えるようになったのだろうか? 『ノヴェーナ』の聴き所は,完全なる土着の小気味良いリズム=フレヴォ,ショッチ,バイオンであり,カラフルなメロディー・ラインのブラジリアン・ポップ。

 『ノヴェーナ』での試みは面白いとは思うが日本人にはちょっとマニアックすぎるかな? そう感じてしまうくらいにメロディーが自然発生的で即興的なフィーリングを醸し出している。
 ブラジルのミュージシャンは本当に演奏が上手であって,ナチュラルな色付はそう簡単には真似できないレベル。その分,くっきりとブラジル色が鮮明で,ブラジル人の基本陽気で,時々繊細で,哀愁のサウダージが浮き出ている。
 『ノヴェーナ』を聴くといつでも「音楽王国=ブラジル」を感じてしまうのだ。

 『ノヴェーナ』でのジャヴァンヴォーカルがしなやかで柔らかに響く。ブラジルっぽくもあるにはあるが,バックで流れるブラジル色に染まるのではなく,どちらかと言えばジャズっぽい雰囲気。
 つまりは楽曲の中でのヴォーカルの自由度がいつもより高く,スキャットっぽい歌い方に耳がゆく。何と表現しようか迷ったが,ここでは「リッチな歌声」だと記しておこう。

 『ノヴェーナ』を聴いていると(一度も訪れたことのないはずなのに)明確にブラジルの田舎の風景が見えてくる。そこでは子供たちと年配者たちが暮らしている。どうやら大人たちは街にはいないようだ。

 古くからのブラジル音楽をおじいさんが近所の子供たちに教えている。子供って気に入ると飽きるまで繰り返すし,音楽よりサッカーに夢中の子供が半分混じっている。音楽でもサッカーでもブラジルはリズム。そんなリズムに乗りこなせる子供たちがジャヴァンのようなワールド・クラスのミュージシャンへと成長する。

 そうなんだ。これまでジャヴァンがアメリカンMPBを演奏してきたのは,いつか『ノヴェーナ』のようなブラジル向けのアルバムを作るため。
 まずは売れる。それが自分の理想の音楽でなかったとしても売れてしまえばファンもレコード会社もジャヴァンが本当にやりたい音楽を認めてくれるのだ。

NOVENA-2 そういう意味で『ノヴェーナ』もいい音楽に違はないが,ジャヴァン・ファンが聴きたいMPBからするとマニアックに行き過ぎたところがあるのかもしれない。
 よく日本人とブラジル人は感性が似ていると言われるけれど,今回の『ノヴェーナ』に関しては,ブラジルの未開の奥地に連れていかれた感覚があって,ついていけなかった。

 ただし,この『ノヴェーナ』こそが,長年ジャヴァンが温めてきた音楽なのである。真にジャヴァンがやりたかった音楽なのである。もはやジャヴァンは昔のフィールドには戻ってこないように思う。

  01. LIMAO
  02. NAO RUAS
  03. ALIAS
  04. SEM SABER
  05. MAR A VISTA
  06. QUERO-QUERO
  07. RENUNCIACAO
  08. LOBISOMEM
  09. SETE COQUEIROS
  10. AGUA DE LUA
  11. AVO

(エピック・ソニー/EPIC/SONY 1994年発売/ESCA-6206)
(ライナーノーツ/緒形典子)

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櫻井 哲夫 / トーキング・ベース5

TALKING BASS-1 ベーシストが自分のベース・サウンドを前面に押し出したアルバムとして,ジャコ・パストリアスには『ジャコ・パストリアスの肖像』が,マーカス・ミラーには『ザ・キング・イズ・ゴーン』があるように,櫻井哲夫には『TALKING BASS』(以下『トーキング・ベース』)がある。

 “スーパー・ベーシスト櫻井哲夫がここまでベース・サウンドを前面に押し出したソロ・アルバムはかつてなかった。
 しかも主役はフレットレスベースと来た。新曲なしのオール・カヴァー集と来た。差別化はされるが容易に比較もされうる大勝負に,得意の“超絶”チョッパーベースを封印してきた。

 ここに管理には櫻井哲夫の“スーパー・ベーシスト”としてのこだわりを感じた。フレッテットでも十二分に勝負できる。“超絶”チョッパーを弾かせたら,ジャコ・パストリアスにもマーカス・ミラーにもガチンコで勝てる自信がある。
 でもそうじゃない。ジャコ・パストリアスマーカス・ミラーが凄いのはテクニックではない。唯一無二の音楽性なのだ。

 そのことを櫻井哲夫が一番知っているから,ベースソロ・アルバムを作るなら,フレットレスベースの“歌もの”で,ジャコ・パストリアスマーカス・ミラーも追い求めた「夢の続き」にチャレンジしたのだ。

 ジャコ・パストリアスマーカス・ミラーも,本当は櫻井哲夫の『トーキング・ベース』みたいなアルバムを作ってみたかったのだと思う。
 そう。『トーキング・ベース』の真髄とは,ベースを自分のヴォイス代わりに歌わせた「ベースでの弾き語り」であり「ベースでのホーモニー」なのであろう。

 なんてったって櫻井哲夫が凄いのは,フレットレスベースメロディーの中心に据えて,物足りない重低音はシンセベースで補うことさえしている。普通のベーシストなら考えつかない荒業である。
 櫻井哲夫は『トーキング・ベース』でバック・サウンドを緻密にアレンジしている。その上でフレットレスベース即興的に被せている。

 フレットレスベースによるジャコ・パストリアスソロ・パフォーマンスは“伝説”と化している。マーカス・ミラーの完璧なバック・サウンドの上を即興で吹き上げるマイルス・デイビスの『TUTU』も“伝説”と化している。
 そんな「ベース界のレジェンド」2人が手がけてきた「夢の続き」を櫻井哲夫が引き受けている。受け継いだのは手法ではなく“スピリッツ”。誰も作り上げたことのないベース・サウンドなのである。

 世界TOPのプロデューサーでもあるマーカス・ミラーベースソロの難しさをトクトクと語っていた記憶がある。マーカス・ミラーの趣旨は「ベースフィーチャーさせると,音楽の完成度を損なう危険をはらむ」ということだったと記憶する。
 この言葉を借りるなら,ついに櫻井哲夫もトータル・ミュージシャンとしてチャレンジできるところまで来たということだろう。そして『トーキング・ベース』の見事な完成度が“アーティスト”櫻井哲夫の成長を証ししている。

TALKING BASS-2 その意味で『トーキング・ベース』の聴き所は,これ以上フレットレスベースを歌わせるとバランスが崩れる,その一歩手前でベースらしさを聴かせる瞬間である。

 フレットレスベースはやっぱりベースであり,低音担当のアンサンブル楽器でありタイム・キーパーなのである。そんな「屋台骨」のベースが,リズムをリードしつつ大いに歌っているのだ。最高に素晴らしい。

 しかもこの音色に,この歌声に癒される。管理には櫻井哲夫フレットレスベースの音色が世界一美しいと信じている。あの柔らかい音色&温かな音色が“艶のある声で”鳴っている。優しく語りかけるようなフレットレスベースが余裕を残して鳴っている。

 ベース一本に人生をかけてきた“スーパー・ベーシスト櫻井哲夫の“最高傑作”として管理人は『トーキング・ベース』を指名する。

  01. The Long And Winding Road
  02. Donna Lee
  03. Butterfly
  04. Sunflower
  05. I Wish
  06. I Can't Help It
  07. Sailing Alone
  08. Alisa
  09. Stardust
  10. 見上げてごらん夜の星を

(キングレコード/KING RECORD 2012年発売/KICJ-641)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

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ジャヴァン / コイザ・ヂ・アセンデール4

COISA DE ACENDER-1 管理人がジャヴァンを聴くようになったのは,それこそカシオペアの『PLATINUM』収録【ME ESPERE】だったから1987年頃のことである。
 当時は全くジャヴァンのことなど知らなかったが,カシオペアとの共演を通じてジャヴァンというMPBにハマッテいた時代が懐かしい。『SAMURAI】は永遠の名曲だと思っている。

 しかし,次第に耳が遠のいてジャヴァンに対する“マイ・ブーム”が落ち着いた頃に出会った『COISA DE ACENDER』(以下『コイザ・ヂ・アセンデール』)で,管理人の中の“ジャヴァン・ブーム”が再燃した。

 管理人がジャヴァンに追い求めて,結局は見つからず仕舞いであった【ME ESPERE】のジャヴァンが『コイザ・ヂ・アセンデール』の中にいたのである。

 『コイザ・ヂ・アセンデール』は,MPBでもアメリカン・ポップスでもない,アコースティックエレクトリック・サウンドがジャヴァンヴォーカルギターを基軸として,シンプルな音数が,本当に必要な場所だけで鳴っている。
 世界的な大ヒットを放っていた時のゴージャス感が希薄になり,洗練され,落ち着いたサウンドに変化していて,これぞ管理人が追い求めるジャヴァンの“理想郷”とついに巡り会ったような感じがしていた。

 浮遊感のあるメロディー・ラインを,どことなく憂いや翳りのある“飾り気のない歌声”が音楽している。【ME ESPERE】で強く感じた“生命力”が漲っている。
 ジャヴァン本人がライナーノーツで語っているが,もう“売れ線”はやらないのだ。アメリカンナイズドされたMPBはやめたのだ。ワールド・ミュージックではなく“ブラジリアン”としてのジャヴァンのアイデンティティが聞こえてくる。

COISA DE ACENDER-2 今回,本当に久しぶりに『コイザ・ヂ・アセンデール批評のために聴き直してみた。懐かしさと共に,今まで意識することのなかったナベサダとかリチャード・ボナの音世界を想起した。
 そう。ジャヴァンの方がナベサダリチャード・ボナよりも早かったのだ。この事実に驚くと共にジャヴァンの再評価を強く希望する。

 個人的にジャヴァンには,ミルトン・ナシメント級,イヴァン・リンス級の活躍を期待していたのだが,ナベサダ繋がりで行くとジャヴァンにはトッキーニョの後継者へと登り詰めてほしいと思う。

PS そう言えばカシオペア渡辺貞夫も『PHOTOGRAPHS』で繋がっていましたねっ。

  01. A Rota do Individuo (FERRUGEM)
  02. BOA NOITE
  03. SE…
  04. LINHA DO EQUADOR
  05. VIOLEIROS
  06. ANDALUZ
  07. OUTONO
  08. ALIVIO
  09. BAILE

(エピック・ソニー/EPIC/SONY 1992年発売/ESCA-5646)
(ライナーノーツ/中原仁)

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第59回(2016年度)グラミー賞 ジャズ部門-NO.2

 “年に一度の音楽の祭典”第59回(2016年度)のグラミー賞が昨日発表された。

 世間的にはグラミー賞史上初となる,アデルの2012年に続く2度目の主要3部門受賞であろう。あるいは内田光子の日本人初となる2度目の受賞であろう。
 個人的にはストリーミング・サービスでの無料配信のみという形で音楽を発表していたチャンス・ザ・ラッパーがグラミー賞の規定を改訂させた上での,最優秀新人賞を含めた3冠受賞が世界を変えた!

 ん? ジャズフュージョン以外はどうでもよかったですね。
 早速「アドリブログ」の本丸『JAZZ』の受賞作の発表で〜す。

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Category 31. Best Improvised Jazz Solo


COUNTRY FOR OLD MEN★ I'm So Lonesome I Could Cry
John Scofield, soloist
Track from: Country For Old Men

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Category 32. Best Jazz Vocal Album


希望へのアレイ★ Take Me To The Alley
Gregory Porter


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Category 33. Best Jazz Instrumental Album


COUNTRY FOR OLD MEN★ Country For Old Men
John Scofield


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Category 34. Best Large Jazz Ensemble Album


Presidential Suite★ Presidential Suite: Eight Variations On Freedom
Ted Nash Big Band


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Category 35. Best Latin Jazz Album


Tribute to Irakere - Live in Marciac★ Tribute To Irakere: Live In Marciac
Chucho Valdes


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 ジョン・スコフィールドが2年連続のグラミー受賞! しかも今年は「BEST IMPROVISED JAZZ SOLO」と「BEST JAZZ INSTRUMENTAL JAZZ」のW受賞ときた!
 ジャズ界は現在,ジョン・スコフィールドを中心に回っている!

 特に『COUNTRY FOR OLD MEN』は,純ジャズではなくカントリー作品。にもかかわらずジャズ部門で受賞するのだから,どんだけジョン・スコフィールドに注目が集まっているかが分かるというもの。

 まっ,グラミー賞ジョン・スコフィールドに注目するのが遅すぎただけで,マイルス・デイビスの眼は確か! 元々,ジョン・スコフィールドというジャズ・ギタリストはブルースやカントリーを丸呑みしてきたギタリストJAM界の中心人物の1人でもある。

 今回の2年連続受賞&W受賞で風向きが変わるのか? ありがとうインパレス! 頑張れインパレス! 『A GO GO』は1998年−2016年のジョン・スコフィールドジャズ・ライフ

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チック・コリア,小曽根 真,大西 順子,山中 千尋,ハクエイ・キム / PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス5

PIANIST 〜WALTZ FOR BILL EVANS-1 『PIANIST〜WALTZ FOR BILL EVANS』(以下『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』)は,ジャズ・ピアノの金字塔であるビル・エヴァンスの『WALTZ FOR DEBBY』50周年を記念したオムニバス・アルバム。
 『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』を,そんじょそこらのオムニバスと思うなかれ! 参加メンバーがとにかく凄い!  

 世界的に活躍するユニバーサル・ジャズ所属の5名のピアニストチック・コリア小曽根真大西順子山中千尋ハクエイ・キムのビッグネームが,1人2曲ずつ新録音なり未発表音源なりを持ち寄ってきた(既発トラックはチック・コリア上原ひろみと共演した1曲のみ! ユニバーサル・ジャズはどうしてもこのラインナップに上原ひろみを入れたかった!?)。

 超豪華メンバーの一員なのに,ドリーム・チームの5人が5人とも,他の共演者の出方など気にも留めない“ビル・エヴァンスの世界観”が最高すぎる。
 やっつけではない「1曲入魂」の大熱演。みんながみんな,自分にとってのビル・エヴァンスの愛想曲を愛情を込めて,慈しみを持って奏でている。

 全10曲の1曲1曲全てがハイライト! “最大の目玉”であろう,チック・コリア/エディ・ゴメス/ポール・モチアンによる【WALTZ FOR DEBBY】は『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』未収録音源。なんのことはない。没テイクなどではない。『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』のための取り分けていたとしか思えない『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』の中で最高の演奏である。

 小曽根真のこんなにも繊細なソロ・ピアノは久々である。一方,同じソロ・ピアノでも山中千尋の奏でるビル・エヴァンスはスインギー。両者の「静と動」の対比が非常に興味深い。
 今回の5人のメンバーの中では大西順子の強烈なタッチが一番ビル・エヴァンスらしく聴こえたのが意外や意外…。

 そしてハクエイ・キムである。実は管理人。ハクエイ・キムというピアニストを『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』で初めて聴いた。
 一人「格落ち」のような気がして心配していたハクエイ・キムだったが「心配無用」のハイ・クオリティ。ピアノ・トリオの白熱のインタープレイと疾走感は間違いなく“エヴァンス派”でした。

PIANIST 〜WALTZ FOR BILL EVANS-2 管理人の結論。『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス批評

 『PIANIST〜ワルツ・フォー・ビル・エヴァンス』とはチック・コリアのアルバムである。あるいは小曽根真のアルバムである。この2人の“天才”がやはり頭一つ飛び抜けていると思う。ジャズ・マニア必聴の4トラックが輝いている。

 しかし「勝負に勝って試合に負けた」のが大西順子である。ビル・エヴァンストリビュートの真の勝者は大西順子だと思う。

 それにしてもユニバーサル・ジャズさん(現在は契約切れのようですが)なんで木住野佳子さんを呼ばなかったのですか?

  01. HOW MY HEART SINGS
  02. WALTZ FOR DEBBY
  03. ISRAEL
  04. HERE'S THAT RAINY DAY
  05. NEVER LET ME GO
  06. NARDIS
  07. VERY EARLY
  08. YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
  09. WHAT IS THIS THING CALLED LOVE?
  10. I SHOULD CARE

(ユニバーサル・ジャズ/UNIVERSAL JAZZ 2011年発売/UCCJ-2087)
(ライナーノーツ/原田和典)

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櫻井 哲夫 featuring グレッグ・ハウ&デニス・チェンバース / ヴァイタル・ワールド5

VITAL WORLD-1 『21世紀の扉』〜『ジェントル・ハーツ』〜『GENTLE HEARTS TOUR 2004』〜「TETSUJINO」名義の『ダブル・トラブル』で積み上げてきた櫻井哲夫デニス・チェンバースとのコラボレーション『VITAL WORLD』(以下『ヴァイタル・ワールド』)で極まりけり〜!

 『ヴァイタル・ワールド』で,これまで“紳士”を貫いていた櫻井哲夫が野生の本能を解放し“猛獣使い”へと変身した。『ヴァイタル・ワールド』のサバイバル・チックなジャケット写真そのまんまのテクニカルでハードで「楽器弾きまくり」のセッション大会。

 全曲,櫻井哲夫が作曲した“モチーフ”をデニス・チェンバースドラムで,グレッグ・ハウギターで,縦横無尽の発想で色付けしていく。
 櫻井哲夫デニス・チェンバースグレッグ・ハウ組も,スタジオ盤の『ジェントル・ハーツ』とライブ盤の『GENTLE HEARTS TOUR 2004』で長いセッションを重ねた賜物であろう。『ヴァイタル・ワールド』では過去2作では感じなかった,奥深い音楽表現が鑑みれる域にまで到達している。これは凄いアルバムである。

 櫻井哲夫ベースが抜群であって,明確なベース・ラインで“野獣のドラム”をコントロールしてみせる。爆裂なのである。
 『ジェントル・ハーツ』『GENTLE HEARTS TOUR 2004』では,グレッグ・ハウに主役を譲っていた櫻井哲夫が,グレッグ・ハウを押しのけてメロディーラインを演奏している。

 こんな櫻井哲夫に,デニス・チェンバースグレッグ・ハウが本気を出さないはずがない! 速度計のMAXを振り切れている! 超高速なのに安定する,何てないベース・ラインに,櫻井哲夫の本物が鳴っている!

 最高にキレイ目で洗練された「制御された」ベース・ラインなのに「制御不能な」演奏エネルギーで満ちている。自分の中のボルテージを上げている。
 そう。櫻井哲夫ベースに,デニス・チェンバースドラムに,グレッグ・ハウギターに“思いの丈”をぶつけている!

VITAL WORLD-2 『ヴァイタル・ワールド』を聴いていると,その昔,ジミ・ヘンドリックスギターに火をつけて燃やしている映像が自然と脳裏に浮かんできた。
 そう。『ヴァイタル・ワールド』における櫻井哲夫のテーマは「完全燃焼」。自らの体内にたまっている爆発寸前のマグマを,ジミ・ヘンドリックスのように一気呵成に放出している。

 櫻井哲夫のパワーと感受性の強さを体感するなら『ヴァイタル・ワールド』が一番である。とにかく凄い演奏力である。

  01. Critical Planet
  02. Alien's Feast
  03. A Tear Of The Clown
  04. Are You Ready
  05. Another Kingdom
  06. Triangle Square
  07. Monster Parade
  08. Father

(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2010年発売/KICJ-598)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

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