アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

難波 弘之 / ゴールデン☆ベスト 難波 弘之 WORKS4

HIROYUKI NAMBA WORKS GOLDEN☆BEST-1 『ゴールデン☆ベスト』シリーズで所有しているのは『HIROYUKI NAMBA WORKS GOLDEN☆BEST』(以下『ゴールデン☆ベスト 難波弘之 WORKS』)と『JUN FUKAMACHI GOLDEN☆BEST』の2枚だけである。

 本当は『ゴールデン☆ベスト 難波弘之 WORKS』を欲しかったわけではなかったのだが,唯一「EXHIVISION」の未発表曲を聴きたかったので購入した。

 お目当ての【NEVERMORE】は期待通りの名演であった。雰囲気としては【DIMENSION TRAVELLER】に似ているかなぁ。
 “超絶技巧”の難波弘之和田アキラ永井敏己長谷川浩二がメロディアス。譜面通りなのに譜面以上の快演である。素晴らしい。

 でもでも,そんな「EXHIVISION」としての難波弘之は『ゴールデン☆ベスト 難波弘之 WORKS』の名曲群を前にしたら,多彩な活動のほんの一面に過ぎないことがよ〜く理解できた。

 個人的に難波弘之と来れば“プログレフュージョンの人”であって,これまで「SENSE OF WONDER」の難波弘之と「野獣王国」の難波弘之と「EXHIVISION」の難波弘之としか接してこなかった。
( あっ,難波弘之との一番の思い出は,NHK教育で見ていた「ベストサウンド」であって,ドラムそうる透の講義が好きだった! )

 ゆえに『ゴールデン☆ベスト 難波弘之 WORKS』で,初めて「MARI & BUX BUNNY」の難波弘之に「NUOVO IMMIGRATO」の難波弘之に「A.P.J.」の難波弘之に「VIBES」の難波弘之に接して,氏のロック志向を理解できた気分である。

HIROYUKI NAMBA WORKS GOLDEN☆BEST-2 そう。難波弘之がいつも凄い演奏に没頭できるのは「予防線としての歌える楽曲作り」に端を発している。
 どんなに演奏で熱くなったとしても“歌もの”の意識が離れないからアドリブが破たんすることはない。曲作りの段階から事前にそういうガードを張っていることが,年代順に編集された『ゴールデン☆ベスト 難波弘之 WORKS』から伝わってくる。

 ただし,難波弘之の“ロックの人”が理解できたからといって,深町純のように過去作を掘り続けようとは思いません。
 管理人の大好きな難波弘之とは“ロックの人”ではなく“プログレフュージョンの人”難波弘之なのです。

  01. 化石の街
  02. 空中の音楽
  03. 碧い星で
  04. DIMENSION TRAVELER
  05. Fly Away
  06. SKELETON CREW
  07. Labyrinthos
  08. いつか,青空のように…
  09. Voice
  10. Little mermaid 〜星に願いを〜
  11. Metal Snow
  12. Nevermore

(ユニバーサル・ミュージック/UNIVERSAL MUSIC 2008年発売/UPCY-6485)
(ライナーノーツ/難波弘之)

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e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ) / E.S.T. ライヴ5

E.S.T. LIVE-1 管理人は「e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)」が大好きである。現代最高のピアノ・トリオの1つで間違いない。

 こう書いてはいるが実は管理人「e.s.t.」に惹かれたのは,エスビョルン・スヴェンソンピアノというよりも,歪んだ電子音のキーボードがきっかけであった。
 正統派なアコースティック・ピアノの後ろで,随分と変態チックなキーボードが被さっている。そのキーボードが絶対にピアノの前に出ない所にエスビョルン・スヴェンソンのポリシーを感じて大好きになった。
 キーボードっていうところが,現代のジャズ・ピアノの「革新」のように思う部分があったからだ。

 だから『FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW』→『GOOD MORNING SUSIE SOHO』→『STRANGE PLACE FOR SNOW』の次に買った『E.S.T. LIVE』(以下『E.S.T. ライブ』)に「怒涛の三部作」以上の衝撃を受けた。
 「エスビョルン・スヴェンソンという人は,ピアノを弾くサウンド・クリエイターなどではなく,超一流のジャズ・ピアニストだったんだ…」。

 そう。だからこそエスビョルン・スヴェンソンというジャズ・ピアニストに,ピアノだけでなくソプラノサックスパーカッションを演奏していた,アメリカン・カルテット活動時のキース・ジャレットを重ね見るようになった。
 キース・ジャレットの後継者としてよく名前が挙がるのはブラッド・メルドーであるが,個人的にはキース・ジャレットの真の後継者はエスビョルン・スヴェンソンの方だと思っている。

 …ということはエスビョルン・スヴェンソンが没した今,もはやキース・ジャレットの後継者は現れることはない。こうなりゃ,一心不乱に「e.s.t.」を聴き込むのみ!

 エスビョルン・スヴェンソンキース・ジャレットと同様,唸るんだよなぁ。エスビョルン・スヴェンソンの唸りは『GOOD MORNING SUSIE SOHO』で確認済であったが,ライブ盤である『E.S.T. ライブ』を聴いて確信へと変わった。

E.S.T. LIVE-2 管理人の結論。『E.S.T. ライブ批評

 【SAY HELLO TO MR.D(TO MR.S)】【THE RUBE THING】【MR.&MRS.HANDKERCHIEF】【DODGE THE DODO】の4トラックが最高にCOOL!
 ロック的なリフやゴスペル的響き,エスビョルン・スヴェンソンのメロディックなアドリブは「e.s.t.」だけのものであろう。

 『E.S.T. ライブ』は『FROM GAGARIN’S POINT OF VIEW』以前の,未だジャズの範疇にいた「e.s.t.」の貴重な記録である。
 オーソドックスなジャズからスタートして,未知の音楽を切り開いた「e.s.t.」の偉大さを,今,俯瞰的に知ることができる。

 ピアノだけに専念するエスビョルン・スヴェンソン。いいですよっ。

  01. Say Hello To Mr.D (to Mr.S)
  02. The Rube Thing
  03. Happy Heads And Crazy Feds
  04. The Day After (leaving)
  05. Like Wash It Or Something
  06. Breadbasket
  07. What Did You Buy Today
  08. Hymn Of The River Brown
  09. Same As Before
  10. Mr.&Mrs. Handkerchief
  11. Dodge The Dodo

(アクト/ACT 2002年発売/DICT-24018)
(ライナーノーツ/多田雅範)

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上原 ひろみ×エドマール・カスタネーダ / ライヴ・イン・モントリオール5

LIVE IN MONTREAL-1 ちょっとした予備知識はあったのだが『LIVE IN MONTREAL』(以下『ライヴ・イン・モントリオール』)を初めて聴いて「あれっ,これってデュエットではなくバンドだったんだ」と思ってしまった。

 実は管理人と同じような経験をした上原ひろみ・ファンは多いのではないだろうか? 素直に『ライヴ・イン・モントリオール』を「音から入る」と,エドマール・カスタネーダハーブの他に,ギタリストとのベーシストが参加しているように聴こえてしまう。

 こんな体験が出来るのが『ライヴ・イン・モントリオール』の醍醐味である。南米のハーブ奏者=エドマール・カスタネーダ名演に何度驚かされてしまったことだろう。
 そうして,そんなエドマール・カスタネーダと新しい音楽を創造する喜びを感じている上原ひろみがこれまた凄い! 『ライヴ・イン・モントリオール』の大胆にして細やかな丁々発止は,まさしく新鮮にして超ジャンルな広がりと甚大な訴求力を持っている!

 そう。上原ひろみとしては,音の響きが珍しい。ピアノハーブとのデュエットにチャレンジしたというよりは,エドマール・カスタネーダというジャズマンとのデュエットにチャレンジしたのだと思う。

 エドマール・カスタネーダの“超絶技巧”の音楽性,リズムの取り方も個性的だし,アドリブやハーモニーの付け方が真に素晴らしい。上原ひろみエドマール・カスタネーダにメロメロになったのはこの部分なんだろうなぁ。管理人も上原ひろみ同様にメロメロになってしまいましたとさっ。

LIVE IN MONTREAL-2 過去にチック・コリア矢野顕子との(近年はタップダンスの熊谷和徳とも)名盤を残したデュエットの名手=上原ひろみ

 しかし,エドマール・カスタネーダとのデュエットは,過去の3枚のデュエット作とはテイストが異なる。
 ズバリ『ライヴ・イン・モントリオール』における,上原ひろみエドマール・カスタネーダデュエットの真髄は「同時代バイブレーション」にある。

 これまでは,どうしても敬愛の気持ちが溢れたデュエットであって「追いつけ追い越せ」の上原ひろみと「私だって,ほら,ここまでできるんですよ」的な上原ひろみの“ミテミテ病”が入っていたように思う。

 その意味では「胸を借りる」ではなく「胸を貸す」立場になって初めてのデュエットである『ライヴ・イン・モントリオール』における上原ひろみの変化は,相手の一挙手一投足をこれまで以上に観察していること。つまりはリターンを得意とする上原ひろみの新カットマン・スタイル。

LIVE IN MONTREAL-3 自分自身が前に出るだけではなく,エドマール・カスタネーダを前に押し出す意識が,これまでのデュエット・アルバムの何倍も強い。

 そう。『ライヴ・イン・モントリオール』はデュエット・アルバムのお手本のようなアルバムである。
 あっ,上原ひろみのお師匠さん=チック・コリアにもゲイリー・バートンとのデュエット・アルバムのお手本のようなアルバムがありましたねっ。

PS 「LIVE IN MONTREAL-3」は販促用のボールペンです。

  CD
  01. HARP IN NEW YORK
  02. FOR JACO
  03. MOONLIGHT SUNSHINE
  04. CANTINA BAND
    THE ELEMENTS
  05. AIR
  06. EARTH
  07. WATER
  08. FIRE
  09. LIBERTANGO

  DVD
  01. THE ELEMENTS "FIRE" - LIVE CLIP
  02. HAZE - LIVE CLIP
  03. CANADIAN TOUR DOCUMENTARY AND INTERVIEWS

(テラーク/TELARC 2017年発売/UCCO-8018)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD
★スリーヴ・ケース仕様
★8Pブックレット

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チャーリー・ヘイデン & ハンク・ジョーンズ / スピリチュアル5

STEAL AWAY-1 テンポの遅いデュエットを演らせたら,やはりチャーリー・ヘイデンが一番手であろう。とにかく軒並み出来が良い。
 キース・ジャレットパット・メセニーから始まって,ケニー・バロンしかり,ジム・ホールしかり,エグベルト・ジスモンチしかり…。

 そんな中,管理人がチャーリー・ヘイデンデュエット“最高傑作”として推すのが,ピアノの“御大”ハンク・ジョーンズとのデュエットSTEAL AWAY』(以下『スピリチュアル』)である。

 ハンク・ジョーンズの,リリカルで,それでいて万人受けするストレートなフレージングの説得力が,チャーリー・ヘイデンの朴訥で,斜に構えがちな重いフレージングとの絶大なる「相性の良さ」を感じさせる。
( チャーリー・ヘイデンハンク・ジョーンズによる続編『カム・サンデイ』はハンク・ジョーンズの遺作である。ハンク・ジョーンズにとっても特別だった? )

 同じピアニストであってもくすみがちの美しさのキース・ジャレットとストレートに煌びやかなハンク・ジョーンズでは全然違う。
 しかし,キース・ジャレットにしてもハンク・ジョーンズにしても,チャーリー・ヘイデンデュエットしている間は,類まれなる個性を捨てて,どちらも一介のジャズ・ピアニストに戻っている。

 ここにチャーリー・ヘイデンの個性が聴こえる。チャーリー・ヘイデンはまず共演者の音楽をじっくりと聴いている。そしてそのジャズメンの本音が聴こえ出すまで待つことができる人である。
 そうしてついに本音が聴こえ出した瞬間に共演者の意図を汲み取り,その場にふさわしい最高の音を選択する名手。表に出ようと裏に回ろうとも,いつでも音楽全体を優しく包み込み,自慢のベースをいつでも意識的に消すことができる。

 そう。チャーリー・ヘイデンは音楽の土台を支えるベーシストにして,共演者がどんなアドリブで弾けようとも,最後にはちゃんと帰って来る受け皿を準備している。
 デュエット中の共演者は,チャーリー・ヘイデンと2人でシーソーにでも乗ったかのような楽しい気分になるのだと思う。要するにチャーリー・ヘイデンとはバランサーなのだ。

 チャーリー・ヘイデンハンク・ジョーンズが『スピリチュアル』で選んだテーマは,古くから歌われてきた黒人霊歌や教会の賛美歌である。
 黒人音楽への敬意,普通の暮らしへの敬意,普通に生きている人々の日々の営みへの敬意,そういう暮らしを繰り返してきた先人たちへの敬意がアルバム全体に貫かれている。ここにアドリブは要らない。新しいアレンジも要らない。

STEAL AWAY-2 ズバリ『スピリチュアル』の聴き所は,円熟とも枯れとも何とも形容し難い,音数の少ないベースピアノの“エイジングされた”静かな語らいにある。

 チャーリー・ヘイデンベースが丸みを帯びている。ただ丸いだけではない。長い年月を経て熟成されて角がとれてきたような丸み,と書けばよいのだろうか,芯の部分では強い意思を保っていて,それが深いコクとまろやかさのある極上の味わいになっている。
 ハンク・ジョーンズピアノには,既に心に刻まれている,お馴染のメロディーをただなぞっただけの雰囲気がある。シンプルに,そしてたんたんと,リラックスした演奏が進行していく…。

 本を片手にぼんやりと『スピリチュアル』に向き合う幸福感がたまらない。ながら聴きの最中に,ふと音楽に耳を傾けたその瞬間,まるでシャッターで切り取られたかのような,極上のメロディーが耳に飛び込んでくる…。
 教会の机の木の香り,ひんやりとした空気,ステンドグラスの不思議な色合い,その向こうに見えた大きな木に揺れる緑の葉っぱ,薄い水色の高い空。そんなことを思い出す。ぼんやりとした記憶…。けれどもはっきりとした記憶…。

  01. IT'S ME, O LORD (STANDIN' IN THE NEED OF PRAYER)
  02. NOBODY KNOWS THE TROUBLE I'VE SEEN
  03. SPIRITUAL
  04. WADE IN THE WATER
  05. SWING LOW, SWEET CHARIOT
  06. SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD
  07. L'AMOUR DE MOY
  08. DANNY BOY
  09. I'VE GOT A ROBE, YOU GOT A ROBE (GOIN' TO SHOUT ALL
     OVER GOD'S HEAV'N)

  10. STEAL AWAY
  11. WE SHALL OVERCOME
  12. GO DOWN, MOSES
  13. MY LORD, WHAT A MORNIN'
  14. HYMN MEDLEY;
    ABIDE WITH ME
    JUST AS I AM WITHOUT ONE PLEA
    WHAT A FRIEND WE HAVE IN JESUS
    AMAZING GRACE

(ヴァーヴ/VERVE 1995年発売/POCJ-1273)
(ライナーノーツ/モーリス・ジャクソン,チャーリー・ヘイデン,アビー・リンカーン)

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MALTA / MALTA4

MALTA-1 管理人がMALTAを初めて聴いたのは,NHK−FM「SESSION’84」だったと記憶する。
 その日は特別MALTAを聴こう!と思ったわけではなく,ただ毎週の習慣でNHK−FM「SESSION〇〇」を聴いていた。だからMALTAについての予備知識など一切なしに,あの音色に直面した時の何とも言えない喜びの感情を覚えている。

 デビュー当時のMALTAのサウンドは,日本っぽくもあり日本っぽくない,そしてジャズっぽくもありジャズっぽくない,フュージョンっぽくもありフュージョンっぽくない「お洒落なシティ・ジャズ」だと思った。

 今思えば,あの時感じた「お洒落なシティ・ジャズ」とは,MALTAのオリジナリティであって褒め言葉になるのだろうが,正直,中学生には退屈なジャズであった。
 だから逆説的に,管理人にとってのMALTAとは,美しいサックス吹き,ただそれだけである。

 それゆえMALTAデビュー・アルバム『MALTA』を買って,ライナーノーツのクレジットを見て驚いてしまった。
 『MALTA』のサイドメンとして参加したのは,ピアノキーボード深町純野力奏一佐藤允彦ギターエリック・ゲイル松原正樹今剛ベース岡沢章ドラム渡嘉敷裕一山木秀夫。えっ,えっ,え〜!

 この豪華すぎるサイドメンのラインナップは渡辺貞夫と同格である。無名の新人と思って聴いていたMALTAは,ただの美しいサックス吹きではなかったのだ。

 しかし,管理人にとってMALTAの『MALTA』の印象は,何度聴いてもやっぱり「お洒落なシティ・ジャズ」止まり。
 こんなに豪華なサイドメンが揃っているのに,肝心のメロディーが頭の中に全く入って来ないし,お気に入りのアドリブもついに見つけることはできなかった。
 バブル期のJVCはジャパン・マネーの垂れ流し〜 ← 管理人はMALTA国府弘子も後追いの再評価組なのです。

( ジャズフュージョンを定期的に行き来するのがMALTAの音楽性の特長であるのは百も承知であるが「フュージョン8割:ジャズ2割」のMALTAが,そして「サックスジャズ,バック・サウンドはフュージョン」のMALTAこそが最高の仕上りだと思っている )

MALTA-2 管理人の結論。『MALTA批評

 MALTAの『MALTA』は「お洒落なシティ・ジャズ」アルバム。
 今でも聴いているのは,キュートなフュージョン系の【SHINY LADY】と絶品バラードの【EVENING CALM】の2トラックだけである。

 いいや,本気で聴いているのはアルトサックスの甘美な音色である。← MALTAアルトの音色はこの後メタリックへと徐々に変化していきます。真にアルトサックスの甘美な音色が聴けるのは『MALTA』と『SWEET MAGIC』の最初期の2枚だけ!

  01. SHINY LADY
  02. AMONG THE CLOUDS
  03. DANCE AFTER DANCE
  04. IN YOUR DREAM
  05. BRIGHT SILVER MOON
  06. NIGHT MAGIC
  07. EVENING CALM
  08. WHAT'S UP
  09. CRYSTAL RAINDROPS
  10. BE MINE

(ビクター/JVC 1984年発売/VDP-7)
(ライナーノーツ/波野未来)

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エルダー・ジャンギロフ / エルダー4

ELDAR-1 管理人にとって「新世代の天才」の称号にふさわしいのは“ジャズ・ピアニストエルダー・ジャンギロフが最後のように思う。
 実に10年以上,10代の「天才」ジャズメンが出現していない,という事実。ちょうどあの頃,エルダー・ジャンギロフ松永貴志上原ひろみ(ついでに矢野沙織ちゃん)がバンバン台頭していた時代の勢いが懐かしいもあり淋しくもあり…。

 でも多分そうではない。ここ10年,現代のジャズ・シーンにはきっと何人もの「新世代のスター」たちがデビュー飾っているはずである。
 そうであっても,管理人にはエルダー・ジャンギロフが最後の「新世代の天才」なのである。実に10年以上,時間がエルダー・ジャンギロフで止まっている。
 その理由は明白である。未だエルダー・ジャンギロフの『ELDAR』(以下『エルダー』)を超える“衝撃作”と出会えていない。ただそれだけのことであろう。 

 思うにこれが真実の理由であるのなら,もうしばらくエルダー・ジャンギロフに続く「新世代の天才」は現われないように思う。
 矢野沙織の場合がそうであったが,お〜っと,ジャズ・ピアニストを例に出した方が早いのかっ。ゴンサロ・ルバルカバの場合がそうであったが「新人」とか「10代」というキーワード抜きに音だけを聴いたら,もはや熟練のジャズ・ピアニストとウソの紹介をされても信じ込んでしまう。“天才”は若い頃から老いてもなお“天才”なのだから…。

 エルダー・ジャンギロフの“天才”の所以が『エルダー』の中にたっぷり濃縮。それは“超絶技巧”と“名作曲家”の2面にある。
 “ジャズ・ピアニスト”としてのエルダー・ジャンギロフのスゴ技は,正確無比な早弾きであろう。1曲目の【SWEET GEORGIA BROWN】で脳天かち割られてしまった後,マイケル・ブレッカーとの【SWEET GEORGIA BROWN】でのがっぷりヨツからの高速【MAIDEN VOYAGE】とダンシング【WATERMELON ISLAND】でのハービー・ハンコック祭りが素晴らしい。
 こう書くと“COOL”な演奏を思い浮かべるかもしれないが,実際は“HOT”で情感が乗っている。「オスカー・ピーターソンがインテリしている感じ」で良いと思う。

 もう1つの“名作曲家”としてのエルダー・ジャンギロフの“才”にも惚れ惚れする。この辺りのエルダー・ジャンギロフの“文才”が松永貴志上原ひろみと同列で比較される要因だと思うが,ジャズスタンダードのアレンジを聴く限り,既存曲を完全消化できたエルダー・ジャンギロフだから,スタンダードとは全く異なる“新しいもの”が出て来た感じでワクワクする。
 うん。『エルダー』は名盤である。「平成の怪物」盤の1枚に数えて良いと思う。

ELDAR-2 ただし,管理人は『エルダー』をもう10年は聴いていない。
 『エルダー批評の執筆のため,久しぶりに聴いてみたが,恐らく最後に『エルダー』を聴いた時10年前の感想と印象に変化はない。きっとこれからも『エルダー』を聴く機会は少ないことだろう。

 なぜなら『エルダー』を初めて聴いた瞬間の,あの“衝撃”が薄れる感じがする。聴き込めば聴き込むほどに,あの日の感動の“衝撃”が弱くなっていく…。
 あの日には感じなかったエルダー・ジャンギロフの「独りよがり」に気付いてしまった。例えば“超絶技巧”ベーシストジョン・パティトゥッチを置いてけぼりにする「我関せず」風の高速ドライブに,名手同士だけに許された絡みの楽しさを奪われたように感じてしまったから…。

 だ・か・ら・エルダー・ジャンギロフは『エルダー』以降は購入していない。きっとエルダー・ジャンギロフ自身が『エルダー』の“衝撃”を超えきれていないから…。
 だ・か・ら・エルダー・ジャンギロフに続く「新世代の天才」が現われない。敵はエルダー・ジャンギロフというジャズメンではなく『エルダー』という「平成の怪物」盤なのだから…。

  01. SWEET GEORGIA BROWN
  02. NATURE BOY
  03. MOANIN'
  04. POINT OF VIEW
  05. RAINDROPS
  06. LADY WICKS
  07. MAIDEN VOYAGE
  08. 'ROUND MIDNIGHT
  09. ASK ME NOW
  10. WATERMELON ISLAND
  11. FLY ME TO THE MOON

(ソニー/SONY 2005年発売/SICP 802)
(ライナーノーツ/ビリー・テイラー,小川隆夫)

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